第106回

106AM002|第106回 助産師国家試験 過去問

Aさん(30歳、初産婦)は妊婦健康診査の終了後、「コーヒーを1日5杯以上飲んでいると先生に話したら、カフェインの摂取を控えるように言われました。カフェインを含まない飲み物を教えてもらえますか」と助産師に尋ねた。このとき助産師がAさんに勧めるのはどれか。

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正解3

正答

3.麦茶

この問題のポイント

妊婦に、カフェインを含まない飲み物を具体的に示せるかを問う問題です。判断の手がかりは、問題文の「カフェインを含まない飲み物」という条件です。本問の4つの選択肢は、原料がチャノキ(茶の木)の葉かどうかで見分けられます。紅茶・抹茶・ほうじ茶はいずれもチャノキの葉から作られるためカフェインを含み、焙煎した大麦から作る麦茶だけがカフェインを含みません。

解説

妊娠中にカフェインを控える理由

  • カフェインは胎盤を容易に通過します。胎盤や胎児には、カフェインを分解する酵素(主にCYP1A2)がほとんどありません。そのため、胎児はカフェインをほとんど代謝できません。
  • 母体でも、妊娠が進むにつれてカフェインの代謝が遅くなり(血中半減期が延びる)、体内に長くとどまります。
  • 多量の摂取は、胎児発育不全や低出生体重児、流産のリスク上昇との関連が報告されています。
  • 日本には、妊婦のカフェイン摂取量について国の数値基準がなく、海外機関の目安が参考にされています。WHOは、1日300 mgを超えて摂取している妊婦には減らすよう勧めています。英国食品基準庁(FSA)は、妊婦に1日200 mgまでに抑えるよう勧めています。欧州食品安全機関(EFSA)も、1日200 mgまでなら胎児への安全上の懸念はないとしています。

日本食品標準成分表では、コーヒー(浸出液)のカフェインは100 mL当たり約60 mgです。カップ1杯を約150 mLとすると、1杯で約90 mgになります。1日5杯では約450 mgとなり、どちらの目安も大きく超えます。医師が控えるよう指示したのはこのためです。1日200 mgは、同じカップでおよそ2杯分に当たります。

判断の手がかりは「原料」

緑茶(煎茶・玉露・抹茶・番茶・ほうじ茶・玄米茶)、烏龍茶、紅茶は、どれも同じチャノキの葉から作られます。主な違いは製法で、緑茶は発酵させない不発酵茶、烏龍茶は半発酵茶、紅茶は発酵茶に分類されます。原料が同じなので、いずれもカフェインを含みます。日本食品標準成分表で浸出液100 mL当たりの量を比べると、煎茶とほうじ茶が約20 mg、紅茶が約30 mg、玉露が約160 mgです。玉露はコーヒーより多く含みます。

これに対して、次の飲み物はカフェインを含みません。

  • 穀物や豆を焙煎したお茶:麦茶(大麦)、黒豆茶、そば茶、コーン茶など
  • ルイボスティー

ただし、「チャノキを使っていなければカフェインを含まない」とは言えません。コーヒー(コーヒー豆)、ココア(カカオ豆)、マテ茶(マテの葉)、ガラナを使った飲料、コーラなどは、チャノキを使わなくてもカフェインを含みます。本問のコーヒーがまさにその例です。カフェインを含まない飲み物は、原料から推し量るのではなく、具体的な品目として覚えておくことが大切です。

取り違えやすい点が3つあります。

  • 焙煎したほうじ茶は苦みが少ないため、カフェインがないと誤解されがちです。
  • 玄米茶は茶葉に炒った玄米を混ぜたものなので、カフェインを含みます。
  • デカフェ(カフェインレス)のコーヒーは、カフェインをゼロにしたものではなく、大幅に減らしたものです。

保健指導での活かし方

Aさんは自分から代わりの飲み物を尋ねており、行動を変える意欲があります。助産師は、禁止を強調して罪悪感を与えるのではなく、具体的な代わりを提案します。毎日多く飲んでいた人が急にやめると、頭痛やだるさが出ることがあります。そのため、コーヒーの一部を麦茶やデカフェに置き換え、目安の範囲まで少しずつ減らしていく方法が現実的です。

コーヒー以外の見落としやすい摂取源もあります。エナジードリンク、チョコレートや抹茶を使った菓子、一部の市販の風邪薬・鎮痛薬です。これらもあわせて伝えると、実生活で役立つ指導になります。

補足として次の点も押さえておきます。

  • 茶やコーヒーに含まれるタンニンなどのポリフェノールは、食事中の非ヘム鉄の吸収を妨げます。妊娠期は鉄欠乏性貧血になりやすいため、この点もあわせて伝えられます。
  • カフェインは母乳にも移行します。新生児はカフェインの代謝が遅いため、授乳期も摂りすぎないよう伝えます。

麦茶はカフェインを含まず、温かくしても冷やしても飲めます。妊娠中から授乳期まで、無理なく続けやすい代わりの飲み物です。

選択肢の確認

1.紅茶:チャノキの葉を発酵(酸化)させて作る発酵茶で、カフェインを含みます。日本食品標準成分表では浸出液100 mL当たり約30 mgで、煎茶(約20 mg)より多い値です。色や香りが緑茶と大きく違うため、別の植物から作ると思われがちです。しかし原料は緑茶と同じチャノキで、主な違いは製法です。「カフェインを含まない」という条件を満たさないため、勧める飲み物にはなりません。

2.抹茶:日光を遮って育てた茶葉を蒸して乾燥させ、石臼などでひいて粉末にしたもので、湯に溶いて茶葉ごと飲みます。煎茶のように茶葉から成分を浸出させる飲み方と違い、茶葉のカフェインを丸ごと摂ります。そのため、1杯当たりの摂取量が多くなりやすいのが特徴です。ラテや和菓子、アイスなどの材料にも使われるため、妊婦への指導ではむしろ見落としやすいカフェイン源として注意を促す対象になります。

3.麦茶:正答。焙煎した大麦を煮出したり水出ししたりして作る穀物茶です。チャノキの葉を使わず、原料の大麦にもカフェインが含まれないため、カフェインを含みません。コーヒーの一部をこれに置き換えれば、飲む量や習慣を大きく変えずにカフェインを減らせます。妊娠中だけでなく、授乳期の水分補給にも取り入れやすい飲み物です。

4.ほうじ茶:煎茶や番茶、茎茶などを強火で焙煎して作る緑茶の一種で、原料がチャノキの葉なのでカフェインを含みます。苦みが少なく香ばしいため「子どもや妊婦にも安心」と思われがちで、カフェインが少ないお茶として紹介されることもあります。しかし含有量はゼロではなく、日本食品標準成分表でも浸出液100 mL当たり約20 mgと、煎茶と同じ値です。「少ない」と「含まない」の違いを見分けさせる選択肢です。

覚えるポイント

  • チャノキの葉が原料ならカフェインあり:緑茶(煎茶・玉露・抹茶・番茶・ほうじ茶・玄米茶)、烏龍茶、紅茶が該当します。主な違いは発酵の程度(不発酵・半発酵・発酵)です。焙煎したほうじ茶もカフェインを含みます。
  • 逆は成り立たない:コーヒー、ココア、マテ茶、ガラナ、コーラは、チャノキを使わなくてもカフェインを含みます。
  • カフェインを含まない飲み物:麦茶、黒豆茶、そば茶、コーン茶、ルイボスティーです。デカフェはゼロではなく「大幅に減らしたもの」です。
  • 妊娠中に控える理由:カフェインは胎盤を通過し、胎児には代謝酵素がほとんどありません。母体の代謝も妊娠中は遅くなります。胎児発育不全・低出生体重児、流産との関連が指摘されています。
  • 摂取量の目安:WHOは1日300 mgを超える妊婦に減量を勧めています。英国FSAとEFSAは1日200 mgまでとしています。日本食品標準成分表では、100 mL当たりコーヒーが約60 mg、玉露が約160 mgです。
  • 見落としやすい摂取源:エナジードリンク、チョコレート、抹茶を使った菓子、一部の市販薬です。カフェインは母乳へ移行するため、授乳期も摂りすぎに注意します。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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