第106回

106PM001|第106回 助産師国家試験 過去問

セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツの考え方で適切なのはどれか。

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正解4

正答

4.人間としての権利である。

この問題のポイント

セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)とはどういう性格の概念かを問う問題です。判断の鍵は次の3点です。この概念は国や地域から与えられるものではなく、すべての個人がもつ人権として位置づけられています。対象は生涯にわたるすべての人です。扱う範囲は身体面だけでなく、精神的・社会的な側面まで含みます。

解説

概念の成り立ち

リプロダクティブ・ヘルス/ライツは、1994年にカイロで開かれた国際人口開発会議(ICPD)の行動計画で国際的に定義されました。翌1995年の第4回世界女性会議(北京)では、北京宣言と行動綱領によって再確認されています。

それ以前の人口政策には、国家が出生数の抑制などの数値目標を掲げ、個人をその対象として扱う側面がありました。カイロ会議はこの考え方を転換しました。人口と開発の問題を、個人の健康と権利、とくに女性の自己決定とエンパワーメントを中心に考える方向を打ち出したのです。この転換にこそ歴史的な意義があります。

ヘルスとライツの中身

  • リプロダクティブ・ヘルス:生殖に関わるすべての事柄について、疾病や障害がないだけでなく、身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態にあることをいいます。WHOの健康の定義と同じ構造です。
  • リプロダクティブ・ライツ:すべてのカップルと個人が、子どもを産むかどうか、何人産むか、いつ・どの間隔で産むかを自由に、かつ責任をもって決められる権利です。そのための情報と手段を得る権利や、最高水準の性と生殖に関する健康を享受する権利も含みます。さらに、差別・強制・暴力を受けずに生殖に関する決定を行う権利もここに含まれます。

ICPDの行動計画は、これらの権利が、国内法や国際的な人権文書ですでに認められている人権の一部であると明記しています。女子差別撤廃条約(日本は1985年に批准)にも、子の数と出産の間隔を自由に、かつ責任をもって決定する権利が規定されています。つまり、国家が新たに与える特権ではなく、基本的人権を性と生殖の領域に当てはめたものです。これが選択肢4が正答となる根拠です。

「セクシュアル」を冠した表現は、性に関する健康と権利を明示的に含めるために用いられます。具体的には、強制のない安全な性的関係、性的指向や性自認の尊重、性暴力からの保護などです。北京行動綱領も、女性が自らのセクシュアリティに関する事柄を強制・差別・暴力なく自由に決定することは人権に含まれると述べています。

範囲と対象

ICPDの行動計画が示すリプロダクティブ・ヘルス・ケアには、次のようなものが含まれます。

  • 家族計画の相談と情報提供
  • 妊娠・分娩・産後のケア
  • 不妊の予防と治療
  • 安全でない人工妊娠中絶の予防と合併症への対応
  • 性感染症やHIVの予防と治療
  • 性に関する教育
  • 女性性器切除などの有害な慣行の廃止

対象は女性だけでも、生殖可能な年齢だけでもありません。男性を含むすべての人が、乳幼児期から思春期、性成熟期、更年期、老年期まで、生涯を通じて対象になります(ライフサイクルの視点)。

助産師の実践とのつながり

助産師は、生涯を通じた性と生殖の健康に幅広く関わります。たとえば、避妊法の選択支援、妊娠継続や分娩方法をめぐる意思決定の支援、思春期の性教育、性暴力被害者への支援、更年期女性の健康相談などです。いずれの場面でも、専門職の価値観や家族・地域の慣習を押しつけず、正確な情報を提供したうえで本人の自己決定を尊重し、支えることが基本姿勢です。日本でも男女共同参画基本計画などで、生涯を通じた女性の健康支援を進める際の基本的な考え方として位置づけられています。

選択肢の確認

1.居住する地域の宗教的価値観によって決められる。:ICPDの行動計画は、各国の宗教的・倫理的価値観や文化的背景を十分に尊重しながら、国際的に認められた人権に沿って施策を実施するよう求めています。宗教や文化への配慮は、支援の方法を工夫するうえで大切です。しかし、権利があるかどうかや権利の中身が、地域の宗教的価値観によって決まるわけではありません。人権は住む場所や信仰にかかわらず、すべての人に等しく保障されるものです。「文化への配慮」と「権利の決定」を混同しないよう注意してください。

2.思春期から成熟期までが対象となる。:この概念は生涯を通じたすべての人を対象としており、特定の年齢層には限定されません。思春期から成熟期は妊娠・出産が集中する時期なので、ここに限られると誤解しやすい選択肢です。実際には、小児期の性的虐待の防止や性教育、更年期の心身の変化への支援、高齢期の性の健康なども含まれます。

3.身体的生殖機能に重点が置かれる。:リプロダクティブ・ヘルスの定義は、身体的・精神的・社会的に良好な状態を指しています。生殖機能の維持や疾患の有無だけを扱う概念ではありません。中核にあるのは、情報へのアクセス、自己決定、差別・強制・暴力からの自由といった社会的・権利的な側面です。生殖器疾患の診療のような医学的アプローチと取り違えやすいので注意が必要です。

4.人間としての権利である。:正答。リプロダクティブ・ライツは、国内法や国際的な人権文書ですでに認められた基本的人権の一部として位置づけられています。性別や年齢、居住地、信仰にかかわらず、すべての個人とカップルに保障されます。

覚えるポイント

  • リプロダクティブ・ヘルス/ライツは、1994年のカイロ国際人口開発会議で提唱され、1995年の北京第4回世界女性会議で確認されました。
  • ヘルスは「生殖に関わるすべての事柄で、身体的・精神的・社会的に良好な状態」であり、疾病がないことだけを意味しません。
  • ライツは「産むか産まないか、いつ・何人・どの間隔で産むかを自由に、かつ責任をもって決め、そのための情報と手段を得る権利」です。既存の人権の一部として位置づけられます。
  • 対象は男女を問わずすべての個人とカップルで、乳幼児期から老年期まで生涯にわたります。
  • カイロ会議の意義は、国家の人口数値目標中心の考え方から、個人の健康と自己決定を中心とする考え方への転換にあります。
  • 助産師の役割は、正確な情報を提供し、本人の自己決定を支援することです。宗教・慣習や専門職の価値観を押しつけないことが基本です。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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