第108回

108AM049|第108回 保健師国家試験 過去問

次の文を読み47〜49の問いに答えよ。Aさん(45歳、男性)は社員数80名の会社で経理事務に従事している。発熱と咳が続いたため病院を受診したところ、画像診断で空洞を伴う肺病変があり、喀痰塗沫検査陽性、喀痰PCR検査陽性となったことから肺結核と診断され、結核病床のある病院に入院した。抗結核薬による治療開始後6週で喀痰中の結核菌は陰性化したため、Aさんは退院し、外来で治療を継続することとなった。薬剤感受性検査では1剤に耐性がみられたが、この薬剤はAさんの治療には使用されていない。接触者健康診断の結果、肺結核の発病者は発見されなかったが、15名の対象者中3名が潜在性結核感染症と診断され、治療を開始することになった。潜在性結核感染症の治療に関して正しいのはどれか。

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正解2

正答

2.抗結核薬内服中は地域DOTSの対象となる。

この問題のポイント

結核の接触者健康診断で見つかった潜在性結核感染症(LTBI)の治療について、標準的な治療期間、服薬支援の仕組み、感染症法上の扱いを問う問題です。LTBIは「感染しているが発病していない状態」です。発病を防ぐための治療であっても結核の医療として扱われ、届出・公費負担・地域DOTSの枠組みに入ることが判断の鍵になります。

解説

事例を整理します。Aさんは空洞を伴う肺病変があり、喀痰塗抹陽性でした。周囲への感染性が高い肺結核と判断できます。保健所は感染症法に基づき、職場の同僚など接触者の健康診断を行いました。発病者はいませんでしたが、3名が潜在性結核感染症と診断されています。Aさんの菌は1剤に耐性がありますが、その薬剤はAさんの治療に使われていません。つまり、治療に用いている主要な薬剤には感受性があると読み取れます。接触者は同じ菌に感染していると考えられるため、標準的な薬剤でLTBIの治療を行える状況です。

潜在性結核感染症は、結核菌に感染しているものの発病していない状態です。症状はなく、排菌もないため他者への感染性はありません。診断は次の2段階で行います。

  • インターフェロンγ遊離試験(IGRA:QFTやT-SPOT)などで感染を判断する。
  • 胸部画像などで活動性結核を否定する。

感染者の一部は後に発病し、特に感染後早い時期に発病しやすいとされます。そのため、感染が分かった時点で治療し、発病を防ぐ意義があります。かつて結核予防法のもとでは、若年者を中心とした「予防内服」と呼ばれていました。2007年に結核予防法が感染症法へ統合されてからは、年齢を問わず「潜在性結核感染症の治療」として位置づけられています。

治療は原則としてイソニアジド単剤を6か月(必要に応じて9か月)内服します。感染源の菌がイソニアジド耐性の場合や、副作用で使えない場合は、リファンピシンを4か月(または6か月)内服します。両剤を併用して期間を短くする方法も選択肢とされています。いずれの方法でも、12か月が標準ではありません。

感染症法上、結核は二類感染症です。LTBIは「無症状病原体保有者」にあたり、医師が結核医療を必要と認めた場合は直ちに届出を行います。届出により保健所が対象者を把握し、公費負担医療の手続きや服薬支援につなげます。

DOTSは直接服薬確認療法のことです。日本では「日本版21世紀型DOTS戦略」として、入院中の院内DOTSと、退院後や外来治療中の地域DOTSが体系化されています。地域DOTSの対象は、LTBIを含むすべての結核患者です。保健所は治療開始時に個別患者支援計画を作成し、服薬中断のリスクを評価します。そのうえで、外来DOTS、訪問DOTS、連絡確認DOTSから本人の生活に合った方法を選びます。医療機関、薬局、家族、職場と連携して支援し、治療終了後はコホート検討会で治療成績を評価します。

LTBIは自覚症状がなく、「病気ではないのに薬を飲み続ける」治療です。動機が保ちにくく、イソニアジドの肝障害などの副作用や仕事の忙しさで中断しやすいため、服薬支援が特に重要です。この事例の3名は同じ会社の社員と考えられます。本人の同意を得たうえで事業所の産業保健スタッフと連携し、勤務を続けながら飲みきれるよう支えることが、保健師の実践につながります。

選択肢の確認

1.抗結核薬を12か月間内服する。:LTBIの治療はイソニアジド6か月(必要に応じて9か月)、使えない場合はリファンピシン4か月(または6か月)が基本であり、12か月は標準的な期間ではありません。活動性結核の標準治療も、4剤併用2か月の後に2剤で4か月の計6か月が基本です。「結核は1年飲む」という漠然としたイメージで選ばないよう注意します。

2.抗結核薬内服中は地域DOTSの対象となる。:正答。地域DOTSは、LTBIを含むすべての結核患者が対象です。保健所が個別患者支援計画を立て、中断リスクに応じた方法で服薬を確認し、治療完了まで支援します。症状のないLTBIは中断しやすいため、服薬支援の必要性が高いといえます。

3.抗結核薬の継続内服が困難な場合にはBCG接種を勧める。:BCGは結核菌に未感染の者に免疫をつけ、乳幼児の粟粒結核や結核性髄膜炎などの重症化を防ぐワクチンです。定期接種の対象は1歳未満です。すでに体内にいる菌を排除する作用はないため、治療の代わりにはなりません。既感染者に接種すると、接種部位に早期に強い反応が出るコッホ現象が起こります。内服が難しい場合は、副作用への対応、薬剤の変更、DOTSの方法の見直しで継続を支えます。

4.治療開始にあたり感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律〈感染症法〉に基づく発生届の提出は要しない。:LTBIは結核の無症状病原体保有者にあたり、医療が必要と認められる場合は届出の対象です。医師は直ちに、最寄りの保健所長を経由して都道府県知事(保健所設置市・特別区では市長・区長)へ届け出ます。「発病していないから不要」「接触者健診で保健所がすでに把握しているから不要」と考えやすい点が誤りのもとです。届出は公費負担や地域DOTSにつなぐ起点になります。

覚えるポイント

  • 潜在性結核感染症は「感染あり・発病なし・排菌なし(感染性なし)」の状態です。IGRAで感染を判断し、胸部画像などで発病を否定します。
  • 治療は原則としてイソニアジド6か月(〜9か月)です。イソニアジドが使えない場合はリファンピシン4か月(〜6か月)で、感染源の薬剤感受性を踏まえて選びます。
  • 結核は二類感染症です。LTBIも医療が必要な場合は無症状病原体保有者として直ちに届け出ます。
  • 地域DOTSはLTBIを含む全結核患者が対象です。保健所が個別患者支援計画を作成し、リスクに応じて外来・訪問・連絡確認DOTSを選び、コホート検討会で評価します。
  • BCGは未感染の乳児の重症結核を防ぐ予防接種です。既感染者の治療の代替にはならず、既感染者への接種ではコッホ現象が起こります。

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