第108回
108PM008|第108回 保健師国家試験 過去問
難病対策で正しいのはどれか。
解答・解説を見る
正解4
正答
4.指定医療機関による訪問看護の費用は医療費助成の対象となる。
この問題のポイント
難病法(難病の患者に対する医療等に関する法律)について、医療費助成の範囲、指定難病の要件、難病対策地域協議会の設置主体、難病患者が使える福祉サービスの根拠法を区別できるかを問う問題です。正答の鍵は、医療費助成を受けられる「指定医療機関」に、病院・診療所だけでなく薬局と訪問看護事業所も含まれるという点です。「市町村」「未確立」「手帳が必要」という語句が制度の規定と合っているかを一つずつ確かめると、正答に至ります。
解説
難病と指定難病の違い
難病法は2014年に成立し、2015年1月に施行されました。それまで予算事業(特定疾患治療研究事業)として行われていた医療費助成を法律に位置づけ、公平で安定した制度にしたものです。
法律上の「難病」は、次の4つを満たす疾病です。
- 発病の機構が明らかでない
- 治療方法が確立していない
- 希少な疾病である
- 長期の療養を必要とする
このうち医療費助成の対象となる指定難病は、さらに次の2つを満たすものとして、厚生労働大臣が厚生科学審議会の意見を聴いて指定します。
- 患者数が本邦で一定の人数(人口のおおむね0.1%程度)に達しない
- 客観的な診断基準(またはそれに準ずるもの)が確立している
診断基準が求められるのは、公費で助成する以上、対象者を客観的かつ公平に判定できる必要があるからです。
特定医療費(医療費助成)のしくみ
指定難病の患者は、難病指定医が作成した診断書(臨床調査個人票)を添えて、都道府県(指定都市の住民は指定都市)に申請します。病状が重症度分類で一定以上の場合、または軽症でも医療費の高い状態が続く場合(軽症高額該当)に支給認定され、医療受給者証が交付されます。
助成の対象は、指定医療機関で受けた指定難病(およびそれに付随する傷病)に係る医療です。指定医療機関には、病院・診療所、薬局、訪問看護事業所が含まれます。したがって、指定を受けた訪問看護ステーションが行う訪問看護の費用も助成の対象です。介護保険の訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導などの医療系サービスも対象に含まれます。患者負担は原則2割で、所得に応じて月額の自己負担上限額が設けられています。上限額は、複数の指定医療機関で支払った額を合算して管理します。入院時の食費は原則として自己負担です。
在宅療養の場面では、ALSや一定の重症度以上のパーキンソン病など、厚生労働大臣が定める疾病等の患者は、要介護認定を受けていても訪問看護を医療保険から受けます。その自己負担分に特定医療費が適用されるため、頻回の訪問看護が必要な患者でも経済的な負担が抑えられます。訪問看護師や保健師は、受給者証の有無と、利用する事業所が指定医療機関かどうかを確認し、制度を確実に使えるよう支援します。
難病患者を支える体制
- 難病相談支援センター:都道府県・指定都市が設置し、療養生活や就労などの相談に応じます。
- 難病対策地域協議会:都道府県、保健所を設置する市、特別区が、単独または共同で置くよう努めるものとされています。関係機関、患者・家族、医療・福祉・教育・雇用の関係者などで構成し、地域の課題を共有して支援体制を整えます。保健所が中心となる仕組みです。
- 障害者総合支援法:2013年4月から、対象となる障害者の範囲に難病等が加わりました。対象疾病に該当すれば、身体障害者手帳がなくても障害福祉サービス、補装具、日常生活用具などを利用できます。この対象疾病は指定難病より広く定められています。
なお、出題後に法改正があり、現在は次の2点が変わっています。2023年10月からは、医療費助成の開始日を「重症化したと診断された日」まで原則1か月を限度にさかのぼれるようになりました。2024年4月からは、指定難病の患者であることを示す「登録者証」の発行が始まりました。ただし、本問の4つの論点についての判断は現在も同じです。
選択肢の確認
1.市町村は難病対策地域協議会の設置に努める。:難病法で難病対策地域協議会を置くよう努めるとされているのは、都道府県、保健所を設置する市(指定都市・中核市など)、特別区であり、市町村一般ではありません。協議会は、保健所を中心に医療・福祉・教育・雇用の関係者と患者・家族が地域の支援体制を話し合う場です。障害者総合支援法に基づく協議会(いわゆる自立支援協議会)は市町村などの地方公共団体が置くよう努めるものなので、これと取り違えやすい点に注意します。保健所を設置する市であれば設置に努める主体になりますが、「市町村は」と一般化した記述は誤りです。
2.診断基準が未確立である疾病が医療費助成の対象となる。:医療費助成の対象となる指定難病には、難病の4要件に加えて、患者数が一定の人数に達しないことと、客観的な診断基準(またはそれに準ずるもの)が確立していることが求められます。診断基準がなければ対象者を公平に判定できず、公費による助成を行えないためです。診断基準が確立していない疾病も法律上の「難病」には含まれ得て、調査研究の対象にはなりますが、指定難病として医療費助成を受けることはできません。難病の要件にある「治療方法が確立していない」と混同して「未確立」を正しいと判断しないよう注意します。
3.日常生活用具の給付には身体障害者手帳の取得が必要である。:難病患者への日常生活用具の給付は、障害者総合支援法に基づく市町村の地域生活支援事業(日常生活用具給付等事業)として行われます。2013年4月から難病等が同法の対象に加わったため、対象疾病の患者であれば、診断書や受給者証などで対象であることが確認できれば、身体障害者手帳がなくても利用できます。身体障害者の場合は手帳の所持が給付の前提になるため、その知識をそのまま難病患者に当てはめると誤ります。症状が変動して手帳の認定基準に該当しにくい難病患者を支えるための仕組みです。
4.指定医療機関による訪問看護の費用は医療費助成の対象となる。:正答。難病法の指定医療機関には、病院・診療所、薬局に加えて訪問看護事業所が含まれます。支給認定を受けた患者が、指定を受けた訪問看護事業所から受ける指定難病に係る訪問看護は、特定医療費の支給対象です。患者負担は原則2割で、所得に応じた月額上限額が適用され、病院や薬局での支払いと合算されます。介護保険の訪問看護も医療系サービスとして対象に含まれます。一方で、指定を受けていない事業所の訪問看護や、指定難病とそれに付随する傷病以外の医療は対象外である点も押さえておきます。
覚えるポイント
- 難病の4要件は、発病の機構が不明、治療法が未確立、希少、長期療養です。指定難病はこれに、患者数が人口の約0.1%程度に達しないことと、客観的な診断基準が確立していることを加えた6要件です。「確立していないのは治療法、確立しているのは診断基準」と覚えます。
- 特定医療費は、都道府県・指定都市に申請し、診断書は難病指定医が作成し、指定医療機関(病院・診療所、薬局、訪問看護事業所)で受けた医療が対象です。自己負担は原則2割で、所得別の月額上限(医療機関の合算)が設けられています。
- 設置主体を区別します。難病対策地域協議会は都道府県・保健所設置市・特別区(努力義務)、難病相談支援センターは都道府県・指定都市です。
- 障害者総合支援法では、2013年4月から難病等が対象になりました。手帳がなくても、障害福祉サービス、補装具、日常生活用具を利用できます。対象疾病は指定難病より広い範囲です。
- 小児期は児童福祉法の小児慢性特定疾病(18歳未満、継続の場合は20歳未満)が対象です。成人後に指定難病の制度へ移行する際の支援(移行期医療)も関連して問われます。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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