第108回
108PM009|第108回 保健師国家試験 過去問
Aさん(83歳、女性)は1人暮らし。要介護1の認定を受け、訪問介護を利用している。Aさんは2か月前から持続する咳に加えて、倦怠感が出現したため内科を受診し肺結核と診断され入院した。2か月後、外来治療が可能となり自宅に戻ることになった。退院に向けて服薬支援を検討するための会議の参加を依頼する者として最も適切なのはどれか。
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正解4
正答
4.訪問介護事業所の訪問介護員
この問題のポイント
肺結核の外来治療では、処方どおりに最後まで薬を飲みきることが最も重要です。この問題は、1人暮らしの高齢者の服薬をどう支えるかを問うています。判断の手がかりは「83歳・1人暮らし」「要介護1」「訪問介護を利用している」「服薬支援を検討する会議」の4点です。すでに定期的に自宅へ入っている支援者を服薬確認の担い手として会議に招くという、地域DOTSの考え方を理解しているかが問われています。
解説
問題文から読み取ること
- 83歳・1人暮らし:家族による服薬確認が期待できないため、飲み忘れや自己中断のリスクが高い状況です。
- 要介護1で訪問介護を利用:介護保険サービスにより、専門職がすでに定期的に自宅を訪れています。
- 2か月の入院後に外来治療へ移行:感染性が低いと判断されて退院しますが、治療はまだ続きます。
- 会議の目的は「服薬支援の検討」:地域の見守り全般ではなく、誰がどのように服薬を確認するかを決める場です。
結核治療と服薬支援
肺結核の標準治療は、6か月の多剤併用療法が基本です。
- 初期2か月:4剤(イソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、エタンブトールまたはストレプトマイシン)
- 維持期4か月:2剤(イソニアジド、リファンピシン)
- ピラジナミドが使えない場合などは、全体で9か月に延びます。
症状が軽くなると、自己判断で服薬をやめてしまう人がいます。中断すると再発や薬剤耐性を招きます。とくにイソニアジドとリファンピシンの両方が効かない多剤耐性結核になると、本人の治療が難しくなるうえ、地域への感染源にもなります。
そこで行われるのが、支援者が患者の服薬を目の前で確認する直接服薬確認療法(DOTS)です。日本では、入院中の院内DOTSに続き、退院後も保健所が中心となって地域DOTSを行い、患者ごとに服薬支援計画を立てます。
- 方法:外来受診時に確認する外来DOTS、自宅で確認する訪問DOTS、薬局で確認する薬局DOTS、電話などで確認する連絡確認DOTSがあります。
- 頻度:治療中断リスクに応じて、A型(原則毎日)、B型(週1〜2回以上)、C型(月1〜2回以上)に分けられます。介護を要する在宅の高齢者は、B型の例に挙げられています。
- 担い手:保健師だけでなく、訪問看護師、薬剤師、介護サービス事業者など、患者に日常的に関わる人が協力して確認します。
感染症法には、保健所長が結核登録票に登録された者について、保健師などに家庭訪問をさせ、処方された薬剤を確実に服用する指導などを行わせる規定があります。また、結核の退院基準には次の3点が含まれます。
- 咳・発熱・痰などの臨床症状が消失していること
- 喀痰検査が異なる日に連続して陰性であること
- 退院後の治療の継続と他者への感染防止が可能であると確認されていること
退院前に服薬支援体制を整える会議は、この3点目の条件を具体化する場でもあります。
誰を会議に呼ぶか
服薬支援計画を実際に機能させる鍵は、服薬を確認できる頻度で自宅に入っている人を支援者として位置づけることです。Aさんの場合、それは訪問介護事業所の訪問介護員です。
一包化された内服薬の内服介助については、厚生労働省の通知(2005年)があります。容態が安定しているなどの条件を満たせば医行為に当たらないとされており、訪問介護員が服薬の声かけ・介助・確認を行えます。さらに訪問時には、次のような変化に気づき、保健師や医療機関へ伝える役割も期待できます。
- 飲み残しの有無
- 食欲不振、皮膚や白目の黄染(肝障害のサイン)
- 見えにくさ(エタンブトールによる視力障害)
実際の会議には、病院の医師・看護師、保健所保健師、介護支援専門員、薬剤師、訪問看護師なども参加します。服薬時刻に合わせて訪問介護の回数や時間帯を調整するなど、ケアプランとの整合も図ります。
一方で、結核という病名は偏見や差別につながりうる情報です。会議の参加者は、本人の同意を得たうえで、服薬支援に必要な人に絞るのが原則です。
選択肢の確認
1.自治会長:自治会は地域住民が任意に組織する地縁団体で、その代表者の役割は地域行事の運営や防災・防犯活動のとりまとめです。Aさんの自宅に定期的に入る立場ではないため、服薬を確認する手段がありません。また、会議に招けば病名を地域の代表者と共有することになり、プライバシー保護の面からも必要性は乏しいといえます。地域の見守りネットワークや、災害時の要配慮者支援を話し合う場であれば、参加を依頼する意味があります。
2.民生委員:厚生労働大臣から委嘱される非常勤の地方公務員で、児童委員を兼ねます。担当地区の住民の相談に応じて必要な支援につなぐ役割があり、守秘義務も課されています。1人暮らし高齢者の見守りでは重要な存在ですが、訪問は相談や安否確認が中心で、服薬を確認できる頻度で自宅に入ることは想定されていません。服薬支援の中心には、すでに定期的に訪問している介護サービスの支援者を優先します。生活上の困りごとの相談や、介護サービスのない日の安否確認を補う役割であれば、関わりを検討する余地があります。
3.老人クラブの会長:老人クラブは地域の高齢者が自主的に組織する団体で、老人福祉法に基づき地方公共団体の援助を受け、健康づくりや趣味、社会奉仕などの活動を行います。その代表者は個々の高齢者の生活に日常的に入る立場ではなく、服薬確認の担い手にはなりません。Aさんの社会参加や閉じこもり予防を考える場面では関わりうる存在ですが、病名を伝えてまで服薬支援の会議に招く必然性はありません。
4.訪問介護事業所の訪問介護員:正答。介護保険の訪問介護でAさんの自宅を定期的に訪れているため、訪問のたびに服薬の声かけ、一包化された内服薬の介助、服薬の確認を行えます。飲み忘れや残薬、副作用が疑われる体調の変化に最も早く気づける立場でもあります。会議で保健師や医療機関への報告経路を決めておけば、地域DOTSの実務を担えます。
覚えるポイント
- 結核の標準治療は「4剤2か月+2剤4か月」の計6か月が基本です。自己中断は再発と多剤耐性結核の原因になります。
- 地域DOTSは保健所が中心となって服薬支援計画を立てます。方法は外来・訪問・薬局・連絡確認など、頻度は中断リスクに応じてA型(原則毎日)・B型(週1〜2回以上)・C型(月1〜2回以上)です。
- 服薬支援の担い手は「その人の生活に定期的に入り、実際に服薬を確認できる人」です。要介護者では、訪問介護員や訪問看護師など既存のサービスを活用します。
- 結核の退院基準には、症状の消失と喀痰検査の連続陰性に加え、退院後の治療継続と感染防止が可能であることの確認が含まれます。
- 抗結核薬の主な副作用:イソニアジド(肝障害・末梢神経障害)、リファンピシン(肝障害・尿などの橙赤色化・薬物相互作用)、エタンブトール(視力障害)、ピラジナミド(肝障害・高尿酸血症)、ストレプトマイシン(聴力障害)。
- 病名などの個人情報は、本人の同意を得たうえで、支援に必要な人とだけ共有します。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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