第108回
108PM010|第108回 保健師国家試験 過去問
各発達段階と歯科口腔保健の特徴との組合せで正しいのはどれか。
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正解3
正答
3.学童期 ― 不正咬合の発生
この問題のポイント
ライフステージごとに歯と口腔に起こる代表的な変化と、それに対応する歯科保健の課題を問う問題です。判断の鍵は、時期の対応を正しく押さえることです。歯の形成は胎児期、乳歯の萌出は乳児期、永久歯への交換は学童期(混合歯列期)、第3大臼歯の萌出は思春期以降です。学童期は永久歯への交換に伴って歯の大きさと顎の発育の不調和が表に出やすく、不正咬合が問題になる時期です。
解説
歯の発生と萌出の時間軸
まず、歯がいつ作られ、いつ生えるかを時系列で整理します。
- 胎児期:乳歯の歯胚は妊娠7週ころから作られ始め、妊娠4か月ころから石灰化が始まります。第1大臼歯など一部の永久歯の歯胚も、胎児期に形成が始まります。妊娠期の保健指導で、胎児の歯の形成と関連づけて妊婦の栄養が取り上げられるのはこのためです。
- 乳児期:生後6~8か月ころに、下顎の乳中切歯から萌出が始まります。
- 幼児期:2歳半~3歳ころに第2乳臼歯が生え、上下合わせて20本の乳歯列が完成します。間食や哺乳習慣の影響で、乳歯の齲蝕が増えやすい時期です。
- 学童期:6歳ころに第1大臼歯(6歳臼歯)が萌出し、下顎中切歯から乳歯の脱落と永久歯への交換が始まります。およそ6~12歳は、乳歯と永久歯が混在する混合歯列期です。12歳ころに第2大臼歯(12歳臼歯)が萌出し、第3大臼歯を除く28本の永久歯列がほぼ完成します。
- 思春期~青年期:第3大臼歯(親知らず)は、おおむね10歳代後半~20歳代前半に萌出します。ただし個人差が大きく、萌出しない人や先天的に欠如している人もいます。
- 成人期:歯周病が増えていき、歯の喪失を防ぐことが中心的な課題になります。歯を失う主な原因は齲蝕と歯周病です。
- 高齢期:課題は、歯の喪失、口腔機能の低下(咀嚼・嚥下など。初期の段階であるオーラルフレイル=口の機能のささいな衰えを含む)、誤嚥性肺炎の予防です。
学童期に不正咬合が問題になる理由
混合歯列期には、乳歯が抜けて永久歯に置き換わっていきます。この時期に不正咬合が生じる主な原因は次の3つです。
- 前歯は乳歯より大きい永久歯に置き換わるため、顎の発育が追いつかないと歯が並びきらず、叢生(歯並びの凸凹)が生じます。
- 齲蝕で乳歯を早く失うと、隣の歯が移動して永久歯の生えるスペースが不足し、歯列が乱れます。
- 指しゃぶり、舌を前に突き出す癖、口呼吸などの口腔習癖が学童期まで続くと、開咬や上顎前突の原因になります。
こうした理由で、学童期は不正咬合が発生し、目に見えて現れてくる時期として位置づけられます。
学校保健安全法に基づく定期健康診断の歯科健診では、歯の状態(歯式)の記録に加えて、次の4項目を0・1・2の3段階で判定します。基準は「児童生徒等の健康診断マニュアル」に示されており、3段階の意味は項目によって異なります。
- 「顎関節」「歯列・咬合」「歯肉の状態」は、0(異常なし)、1(定期的観察が必要)、2(専門医(歯科医師)による診断が必要)で判定します。
- 「歯垢の状態」は付着の程度で判定し、0(ほとんど付着なし)、1(若干の付着あり)、2(相当の付着あり)とします。
学童期には、ほかにも次のような課題があります。
- 生えたばかりの永久歯(幼若永久歯)は歯質が未成熟で、臼歯は咬合面の溝も深いため、齲蝕になりやすい状態です。
- 6歳臼歯は乳歯と交換せずに乳歯列の奥に生えてくるので、生えたことに気づかれにくい歯です。生える途中は歯ブラシも届きにくく、齲蝕予防の重点になります。予防には、フッ化物の応用やシーラント(溝をふさぐ処置)が用いられます。
- この時期から歯肉炎もみられるようになります。
保健師活動との関連
歯科口腔保健の推進に関する法律(2011年)に基づく「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」では、ライフステージごとに目標が立てられています。主な事業は次のとおりです。
- 乳幼児期:母子保健法による1歳6か月児健康診査と3歳児健康診査で歯科健診を行います。あわせて、仕上げ磨き、間食、哺乳習慣について保健指導を行います。
- 学齢期:学校歯科健診が行われ、地域によっては学校でのフッ化物洗口も実施されています。
- 成人期:健康増進法に基づく歯周疾患検診があります。出題当時の対象は40・50・60・70歳の節目年齢で、2024年度から20歳・30歳が加わりました。
- 高齢期:介護予防の取り組みとして、口腔機能の向上が図られます。生涯を通じた目標として、8020運動(80歳で20本以上の歯を保つ)が推進されています。
選択肢の確認
1.乳児期 ― 歯牙の形成:歯の形成(歯胚の形成と石灰化)は胎児期に始まるため、乳児期を特徴づける変化とはいえません。乳歯の歯胚は妊娠7週ころから作られ、妊娠4か月ころには石灰化も始まっています。永久歯の歯冠の石灰化は出生後も続きます。それでも歯の形成が始まるのは胎児期であり、乳児期の特徴は生後6~8か月ころに始まる乳歯の萌出です。「歯が作られる時期」と「歯が生える時期」を区別することが大切です。
2.幼児期 ― 乳歯から永久歯への生え代わり:幼児期は乳歯が生えそろう時期で、2歳半~3歳ころに20本の乳歯列が完成します。永久歯への生え代わりは6歳ころの下顎中切歯の交換から始まり、主に学童期に進みます(同じころ、乳歯列の奥に第1大臼歯も生えます)。「生えそろい」と「生え代わり」を取り違えやすいので注意します。幼児期の課題は乳歯の齲蝕予防です。
3.学童期 ― 不正咬合の発生:正答。学童期は乳歯と永久歯が混在する混合歯列期です。歯の大きさと顎の発育の不調和、乳歯の早期喪失、口腔習癖などによって、叢生・開咬などの不正咬合が生じ、目立つようになります。学校歯科健診でも「歯列・咬合」を判定項目として確認しています。
4.成人期 ― 第3大臼歯萌出:第3大臼歯の萌出はおおむね10歳代後半~20歳代前半にみられ、一般に思春期から青年期の変化として整理されます。個人差が大きく、萌出しない人や先天的に欠如している人もいるため、成人期を代表する特徴とはいえません。成人期の歯科口腔保健の特徴は歯周病の増加で、歯周病と齲蝕による歯の喪失を防ぐことが課題です。
覚えるポイント
- 歯の形成は胎児期に始まります(乳歯の歯胚は妊娠7週ころから、石灰化は妊娠4か月ころから)。乳児期の特徴は、形成ではなく萌出です。
- 乳歯は生後6~8か月ころに下顎乳中切歯から生え始め、2歳半~3歳ころに20本の乳歯列が完成します。
- 6歳ころに6歳臼歯(第1大臼歯)が乳歯と交換せずに生え、前歯の交換も始まって混合歯列期(およそ6~12歳)に入ります。12歳臼歯で28本がそろい、第3大臼歯は10歳代後半以降に萌出します(すべて生えれば32本)。
- ライフステージ別の課題は次のとおりです。乳幼児期は乳歯齲蝕、学童期は歯の交換・不正咬合・幼若永久歯の齲蝕・歯肉炎、成人期は歯周病、高齢期は歯の喪失と口腔機能低下です。
- 歯科健診の根拠法は、乳幼児が母子保健法(1歳6か月児・3歳児健診)、児童生徒が学校保健安全法(学校歯科健診)、成人が健康増進法(歯周疾患検診)です。
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