第108回

108PM039|第108回 保健師国家試験 過去問

次の文を読み39〜41の問いに答えよ。Aさん(高校2年生、女子)は両親と3人暮らし。母親が精神保健福祉相談のため保健所に来所した。「Aは太っているわけではないのに、半年程前から写真写りを気にして食事を減らし始めました。今は1日1食野菜スープしか食べません。食べたもののカロリーを気にして毎日運動しており、一見元気そうなのですが、随分痩せてきました。授業を受けても頭に入ってこないと言い、この頃は学校を休みがちです。このままで大丈夫でしょうか」と話した。Aさんの状態をアセスメントするために必要な情報として最も優先度が高いのはどれか。

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正解1

正答

1.BMI

この問題のポイント

太っているわけではなく、やせる必要のない体格なのに、写真写りを気にして食事を極端に減らし、カロリーを消費するために毎日運動し、目に見えて痩せてきた事例です。この経過から、神経性やせ症(神経性無食欲症)が強く疑われます。保健師が最初に見極めるべきなのは、低栄養がどこまで進み、医療機関へ急いでつなぐ必要があるかという身体的な緊急度です。その判断の土台になる客観的指標がBMIです。「一見元気そう」という印象に頼らず、数値でやせの程度をとらえられるかが問われています。

解説

事例から読み取れること

  • 高校2年生の女子で、半年ほど前から症状が始まっています。思春期の女性は、神経性やせ症が多い年齢・性別です。
  • 「太っているわけではないのに」写真写りを気にして食事を減らし始めたという経過は、体重・体型へのとらわれとボディイメージのゆがみを示します。
  • 「今は1日1食野菜スープしか食べません」という状態は、極端な摂取制限です。「カロリーを気にして毎日運動」は、体重増加を防ぐための過活動(代償行動)にあたります。
  • 「一見元気そう」なのに「随分痩せてきた」という点も重要です。神経性やせ症では、飢餓状態でも活動的に見えることが多く、本人も病気と感じにくい傾向があります。そのため、外見の元気さは重症度を反映しません。
  • 「授業を受けても頭に入ってこない」「学校を休みがち」は、低栄養による集中力・思考力の低下と、社会生活への影響がすでに現れていることを示します。

まず身体的な危険度を評価する理由

神経性やせ症は、精神疾患の中でも死亡率が高い疾患として知られています。死因には、低栄養に伴う身体合併症(不整脈、低血糖、感染症など)と自殺が含まれます。

飢餓が進むと、次のような変化が起こります。

  • 徐脈、低血圧、低体温、低血糖
  • 低カリウム血症などの電解質異常(嘔吐や下剤の乱用を伴うと起こりやすくなります)
  • 骨量の減少、無月経

さらに、急に栄養を入れると、低リン血症を中心とするリフィーディング症候群を起こす危険があります。このためアセスメントの第一段階では、心理的背景や生活状況よりも先に、身体がどれだけ危険な状態にあるかを把握します。

BMIは、体重(kg)を身長(m)の2乗で割って求める指標です。体格の違いを補正したうえで、やせの程度を客観的に示します。

  • 日本肥満学会の基準では、18.5未満が低体重です。
  • DSM-5では、成人の神経性やせ症の重症度をBMIで分類しています。17以上が軽度、15未満が最重度です。
  • 思春期は成長の途中にあるため、年齢・性別を考慮した評価も使われます。BMIパーセンタイルや、性別・年齢・身長別標準体重から求める肥満度がその例です。
  • どの方法でも、身長と体重という客観的なデータからやせの程度を判断する点は共通しています。

保健師の対応の流れ

相談に来ているのは母親です。保健師は母親から、身長、現在の体重、発症前の体重、減少の速さを聴き取り、BMIを算出します。あわせて、次の身体症状も確認します。

  • 月経の有無
  • ふらつき・失神
  • 冷え、脈の遅さ

なお、DSM-5では無月経は診断基準から外されましたが、身体評価では今も重要な情報です。

やせが著しい場合や急速に進んでいる場合は、小児科・心療内科・精神科などへの速やかな受診を勧めます。本人は受診を拒むことが多いため、家族を通じた働きかけが鍵になります。身体の安全を確保したあとで、生活リズム、活動、学校生活、対人関係の情報を集めます。そのうえで、家族支援や、学校(養護教諭、スクールカウンセラー)との連携を組み立てます。

選択肢の確認

1.BMI:正答。身長と体重から算出するやせの客観的指標で、体格差を補正したうえで低栄養の程度を示します。神経性やせ症では、重症度の判定や、入院を含む治療の緊急度の判断に直結します。「一見元気そう」という母親の印象と実際の身体状態のずれも、数値によって明らかにできます。本人が同席していなくても、母親から身長・体重を聴き取れば算出できます。そのため、相談の場で最初に確認すべき情報です。

2.睡眠:低栄養や抑うつに伴って、寝つきの悪さや早朝覚醒が起こることはあります。そのため、生活リズムや精神状態を知る手がかりにはなります。しかし眠りの状態からは、やせがどこまで進み、生命の危険がどの程度あるかは判断できません。身体の緊急度を確認したあと、支援計画を立てる段階で把握する情報です。

3.運動量:カロリー消費のための毎日の運動は、神経性やせ症に特徴的な過活動です。体重減少を加速させる要因であり、治療で活動制限を検討する際にも関わる大切な情報です。ただし、これは体重を減らしている行動についての情報にすぎません。身体がどれだけ消耗しているかを示すのは、やせの程度そのものです。毎日運動していることは事例文ですでに語られており、優先して確かめるべきは身長と体重に基づく評価です。

4.友人関係:写真写りを気にしたことが始まりであるように、周囲からどう見られるかへの意識や友だちとの関わりは、思春期の摂食障害の背景として重要です。回復支援や学校との連携にも欠かせない情報です。しかし身体の危険度を判断する材料にはならず、緊急度の評価を終えてから丁寧に聴き取るべき内容です。

5.学校の欠席日数:欠席が増えていることは、低栄養による集中力の低下が、学業や社会生活にどの程度影響しているかを示します。学校との連携や復学支援を考えるうえで役立つ情報です。ただしこれは生活機能の指標であり、欠席の状況が同じでも、身体の危険度は大きく異なり得ます。そのため、生命の安全に関わる判断の根拠にはなりません。

覚えるポイント

  • 神経性やせ症の特徴は、やせているのに体重増加を恐れること、ボディイメージのゆがみ、摂取制限、過活動などの代償行動、病識の乏しさです。思春期の女性に多くみられます。
  • 摂食障害のアセスメントでは、身体的な危険度の評価が最優先です。BMI(体重kg÷身長mの2乗)で、やせの程度を客観的に把握します。成人では18.5未満が低体重です。DSM-5の神経性やせ症の重症度は、17以上が軽度、15未満が最重度です。
  • 思春期は成長途中のため、BMIパーセンタイルや肥満度も参照します。学校保健統計調査では、肥満度−20%以下を痩身傾向児としています。
  • 飢餓で起こる身体所見は、徐脈、低血圧、低体温、低血糖、電解質異常、無月経、骨量減少です。急な栄養補給では、リフィーディング症候群(低リン血症)に注意します。
  • 「一見元気」でも重症のことがあります。本人は受診を拒みやすいため、家族相談を入り口に、受診や学校との連携へつなぐことが保健師の役割です。
  • 混同しやすい疾患にも注意します。回避・制限性食物摂取症は、体型へのこだわりがない点で神経性やせ症と異なります。神経性過食症は、体重が正常範囲のことが多い疾患です。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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