第108回
108PM049|第108回 保健師国家試験 過去問
次の文を読み48、49の問いに答えよ。Aさん(30歳、女性)はBちゃん(1歳7か月、男児)を連れ、市が実施する1歳6か月児健康診査に来所した。問診でAさんは、「1年前に隣の県から引っ越してきた。人づきあいが苦手で家でBちゃんと2人きりでいることが多い」と話した。Bちゃんの1歳6か月児健康診査の記録から、一部抜粋したものを以下に示す。1歳6か月児健康診査の終了後、カンファレンスでBちゃんの状況を検討した。今後、Aさんに提案するBちゃんの子育て支援の場として最も適切なのはどれか。

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正解3
正答
3.発達のフォローアップ教室
この問題のポイント
1歳6か月児健康診査の記録を、運動・手指の操作・言語・社会性の領域ごとに読み取り、健診後に提案する支援の場を選ぶ問題です。Bちゃんは運動と社会性が年齢相応です。一方で有意語が0で、簡単な指示にも従えず、言語面に限った遅れがみられます。障害を前提とした支援に進む段階ではありませんが、様子をみるだけでは足りません。専門職が続けて発達を確かめながら、関わり方を支援できる場を選ぶことが鍵です。人づきあいが苦手で孤立しがちなAさんが参加しやすいかどうかも、判断の手がかりになります。
解説
記録から発達の状況を読み取る
記録の「発達状況」は横線で4つの枠に分かれています。項目の内容から、上から粗大運動、手指の操作(微細運動)、言語、社会性の順に並んでいると読み取れます。
- 粗大運動:独歩開始は1歳3か月で、「手を引くと階段を上る」は「あり」です。1歳6か月までに多くの子どもが独歩を獲得するので、年齢相応です。
- 手指の操作:積み木は3個積め、「親指を使ってつまむ」も「あり」です。1歳6か月頃の積み木は2〜3個が目安なので、これも年齢相応です。
- 言語:有意語は0個で、例の欄も空白です。「言語理解」「身体部分の指差し」「要求の指差し」は「あり」ですが、「簡単な指示に従える」は「なし」に丸が付いています。
- 社会性:「周囲の人の身振りをまねる」「周囲の人やほかの子どもに関心を示す」「ままごとなど見立て遊びができる」「共同注意」のすべてが「あり」です。
所見の解釈と支援の方向性
1歳6か月頃には、「ママ」「ブーブー」など意味のある言葉をいくつか話し、「ポイしてきて」のような簡単な指示がわかるようになるのが目安です。Bちゃんは言語理解が「あり」で、身体部分の指差しもできます。言葉の理解はある程度育っていますが、話し言葉は出ていません。言葉による指示に応じて行動することも、まだ確認できていません。したがって、話す力(表出)を中心とした言語面の遅れと判断します。
なお、指差しには主に次の種類があります。欲しいものを示す要求の指差し、見つけたものを相手に知らせる叙述の指差し、問いかけに答える応答の指差しです。1歳6か月児健診では、絵カードなどを使って応答の指差しを確かめることがよく行われます。
一方、社会性の項目がそろって「あり」であることは重要です。共同注意は、子どもと大人が同じものに一緒に注意を向けることです。「自分・相手・もの」の三項関係が成り立っていることを示し、ものの名前を覚えるなど言葉を身につける土台になります。見立て遊びは、あるものを別のものに見立てる象徴機能の表れで、言葉という記号を使う力につながります。模倣や他児への関心も含め、人と関わりやりとりする力の土台は育っています。現時点で自閉スペクトラム症を強く疑わせる所見は乏しいといえますが、1回の健診だけで見極められるものではありません。
言葉の遅れは、その後に追いつくこともあります。一方で、聴覚の問題、知的発達の遅れ、発達障害などが経過の中で明らかになることもあり、1歳7か月の時点では判断がつきません。そのため、「心配ない」と終わらせるのも、障害を前提とした療育にすぐつなぐのも適切ではありません。経過を継続的に確かめながら言葉の育ちを促す支援が必要な段階です。
Aさんの状況と支援の場に求められること
Aさんは1年前に隣の県から転入し、人づきあいが苦手で、家でBちゃんと2人きりで過ごすことが多いと話しています。地域に頼れる人が少なく、育児の悩みを抱え込みやすい状況と考えられます。Bちゃんにとっても、ほかの子どもや大人と関わる機会は限られています。設問が問うのは「Bちゃんの子育て支援の場」です。まずBちゃんの発達の課題に応えられることが前提で、そのうえでAさんの状況にも合う場を選びます。求められるのは次の点です。
- 専門職が継続してBちゃんの発達をみて、変化を評価できること
- 言葉かけや遊び方など、家庭での関わり方を具体的に助言できること
- 専門職が進行役を担い、人づきあいが苦手なAさんでも参加しやすいこと
- 同じ年頃の親子と出会い、孤立を和らげるきっかけになること
発達のフォローアップ教室は、乳幼児健診で発達の経過観察が必要とされた子どもと保護者のための親子教室です。市町村が健診の事後支援として行い、名称は「親子教室」「あそびの教室」など自治体によって異なります。保健師、心理職、保育士、言語聴覚士などが関わり、集団遊びや個別相談を通して発達の経過を確かめ、家庭での関わり方を保護者と一緒に考えます。発達が追いつけば支援を終えます。遅れが続いたり新たな課題が見えたりすれば、医療機関での精密検査や療育機関へつなぎます。上の4点をすべて満たすのがこの場です。
健診後のカンファレンスでは、医師・保健師・心理職などが所見を持ち寄ります。そして、子どもの発達と親子・家庭の状況の両面から支援方針を決めます。発達障害者支援法は、市町村に次のことを求めています。
- 乳幼児健診では、発達障害の早期発見に十分注意すること
- 発達障害の疑いがある子どもの保護者に、継続的な相談や助言を行うよう努めること
- その際には、子どもと保護者の意思を尊重すること
教室を提案するときは、Bちゃんの成長を一緒に見守り、関わり方のヒントを得る場として伝え、Aさんの受け止め方や不安に寄り添います。提案後も参加状況を確認し、参加が難しければ電話や家庭訪問で関わりを続けます。
選択肢の確認
1.療育相談:療育は、障害のある子どもや、発達の遅れ・偏りが明らかな子どもに行う専門的な発達支援で、医療・訓練・保育などを組み合わせて行います。この相談では、その必要性や利用先を扱います。遅れがあるという点だけで選びがちですが、Bちゃんの遅れは言語面に限られ、運動と社会性は年齢相応です。1歳7か月の時点で障害を前提とした支援に進むのは早すぎます。心の準備がないまま勧められると、Aさんの不安が強まったり、支援そのものを断られたりするおそれもあります。経過観察で遅れが続く場合、複数の領域に遅れがある場合、社会性に明らかな問題がある場合などに検討する場で、現段階の提案先としては適切ではありません。
2.子育ての自主グループ:保護者どうしが自主的に運営する集まりで、交流や情報交換を通して孤立を和らげる効果は期待できます。しかし、専門職がBちゃんの発達を継続的に評価したり、言葉の遅れに応じた関わり方を助言したりする仕組みはありません。また、人づきあいが苦手なAさんにとって、専門職が進行しない当事者どうしの集まりにいきなり参加するのは負担が大きいと考えられます。Aさんが地域とのつながりを広げていく段階で紹介する資源であり、今回の提案先として最も適切とはいえません。
3.発達のフォローアップ教室:正答。専門職が継続してBちゃんの発達の経過を確かめながら、言葉の育ちを促す遊びや関わり方をAさんに具体的に助言できる場です。障害と決めつけずに見守りつつ、遅れが続く場合には精密検査や療育へつなぐ入口にもなります。専門職が進行するのでAさんも参加しやすく、同じ年頃の親子と出会う機会にもなります。Bちゃんの発達支援と、Aさんの孤立の予防を同時に図れます。
4.子育て世代包括支援センター:妊娠期から子育て期までの相談にワンストップで応じ、支援プランの作成や関係機関との連絡調整を行う拠点です。「子育て支援の場」という言葉から選びたくなりますが、中心的な役割は相談と調整です。Bちゃんの発達を継続的に評価して働きかける場そのものではありません。Aさんの育児全般の相談先として紹介する意義はありますが、言語面の遅れを支援する場としては選択肢3が適しています。出題当時は、2016年の母子保健法改正で法律に位置づけられた拠点でした(法律上の名称は母子健康包括支援センター)。2017年4月から、市町村の努力義務として設置が進められていました。現在は、2022年の児童福祉法等の改正により、2024年4月から「こども家庭センター」の設置が市町村の努力義務になっています。こども家庭センターは、このセンターと子ども家庭総合支援拠点を一体化したものです。
覚えるポイント
- 1歳6か月児健康診査は、母子保健法第12条に基づき、市町村に実施が義務づけられた健診です。対象は満1歳6か月を超え満2歳に達しない幼児です(3歳児健診は満3歳を超え満4歳に達しない幼児)。発達の目安は、独歩、積み木2〜3個、意味のある言葉をいくつか話す、応答の指差し、簡単な指示の理解などです。
- 発達は領域ごとに評価します。言葉だけが遅く、運動や社会性が年齢相応なら、まず経過観察と働きかけ(フォローアップ教室、発達相談など)を行います。遅れが続く、複数の領域に及ぶ、社会性に明らかな問題がある場合に、精密検査や療育を検討します。
- 共同注意、指差し、模倣、見立て遊び、他児への関心は、人とのやりとりの発達をみる指標で、言葉の土台でもあります。自閉スペクトラム症の早い段階のサインを確かめる要点でもあり、M-CHATなどのスクリーニング質問紙の項目にも含まれます。
- 言葉の遅れをみたら、まず聞こえを確かめ、知的発達、社会性、養育環境もあわせて確認します。
- 支援の場の違いを押さえます。療育は障害や明らかな遅れへの専門的支援です。自主グループは当事者が運営する支え合いの場です。フォローアップ教室は専門職による経過観察と育児支援の場です。子育て世代包括支援センターは妊娠期からの切れ目ない相談と調整の拠点で、2024年4月からこども家庭センターに一体化されました。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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解いた記録を残して、苦手な問題をもう一度。
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