第109回

109AM027|第109回 保健師国家試験 過去問

疾病と主な危険因子の組合せで正しいのはどれか。

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正解1

正答

1.胃癌 ― 塩蔵食品

この問題のポイント

代表的ながんと、その発生に関わる危険因子の対応を問う問題です。危険因子には生活習慣、感染、化学物質、ホルモン環境があります。胃癌ではヘリコバクター・ピロリ感染・喫煙・高塩分食(塩蔵食品)が主な危険因子であることが判断の鍵です。ほかの選択肢には、危険因子を別の部位と入れ替えたもの、リスクの向きを逆にしたもの、原因が感染症なのに生活習慣を組み合わせたものが混ざっています。

解説

がんの危険因子の整理

がんの危険因子は、次の4つに分けて覚えると整理しやすくなります。

  • 生活習慣:喫煙、飲酒、食事(塩分、赤肉・加工肉、野菜・果物の不足など)、身体活動の不足、肥満
  • 感染:ヘリコバクター・ピロリ(胃癌)、B型・C型肝炎ウイルス(肝細胞癌)、ヒトパピローマウイルス(子宮頸癌)、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(成人T細胞白血病)、EBウイルス(上咽頭癌、バーキットリンパ腫)
  • 化学物質・職業曝露:アスベスト(中皮腫、肺癌)、芳香族アミン(膀胱癌)、アフラトキシン(肝細胞癌)、塩化ビニル(肝血管肉腫)、ベンゼン(白血病)
  • 内分泌環境:エストロゲンへの曝露(乳癌、子宮体癌)

胃癌と塩蔵食品

胃癌の最も重要な危険因子は、ピロリ菌の持続感染です。慢性胃炎から萎縮性胃炎を経て発癌に至る経過が知られています。これに喫煙と高塩分の食事が加わります。国立がん研究センターによる日本人を対象とした評価でも、塩分・塩蔵食品の摂取は胃癌のリスクを上げることが「ほぼ確実」とされています。

高濃度の塩分は胃粘膜の保護層を傷害して炎症を起こし、ピロリ菌による胃炎や発癌物質の作用を強めると考えられています。塩辛、漬物、干物、たらこなど塩蔵食品の多い食習慣は、日本で胃癌が多かった背景の一つとされます。

誤りの選択肢の見分け方

この問題の誤りの選択肢は、次の型に当てはめると見抜きやすくなります。

  • 主要ではない因子を組み合わせた型:選択肢2
  • リスクの向きを逆にした型:選択肢3
  • 別の部位の危険因子と入れ替えた型:選択肢4
  • 感染が原因の疾患に生活習慣を組み合わせた型:選択肢5

保健師活動との関わり

国立がん研究センターが示す「日本人のためのがん予防法(5+1)」は、次の2つからなります。

  • 5つの生活習慣:禁煙、節酒、食生活(減塩、野菜・果物の摂取など)、身体活動、適正体重の維持
  • 感染への対策:ピロリ菌の検査と除菌、肝炎ウイルス検査など

危険因子の除去は一次予防、がん検診は二次予防にあたります。健康教育や特定保健指導の場で減塩を勧めるときは、高血圧予防だけでなく胃癌予防にもつながることを伝えられます。

減塩の目標値もよく問われます。出題当時の健康日本21(第二次)では、食塩摂取量の目標は1日8gでした。2024年度からの健康日本21(第三次)では1日7gです。日本人の食事摂取基準(2020年版)の目標量は、成人男性7.5g未満、成人女性6.5g未満です。

選択肢の確認

1.胃癌 ― 塩蔵食品:正答。塩蔵食品を含む高塩分の食事は、ピロリ菌感染、喫煙とともに胃癌の代表的な危険因子です。高濃度の塩分による胃粘膜傷害が慢性胃炎を進め、発癌を促すと考えられています。反対に、野菜・果物の摂取は胃癌のリスクを下げる方向に働くとされています。

2.肺癌 ― 運動不足:肺癌の危険因子で最も重要なのは喫煙です。受動喫煙、アスベスト、ラドン、ヒ素、大気汚染なども挙げられますが、運動不足は主要な危険因子に含まれません。身体活動の不足と明確に関連するのは結腸癌で、運動は結腸癌のリスクを下げることが知られています。「生活習慣病の危険因子としての運動不足」と取り違えないようにします。

3.乳癌 ― 遅い初経年齢:乳癌は、生涯でエストロゲンに曝される期間が長いほど起こりやすくなります。危険因子は、早い初経、遅い閉経、出産経験がないこと、初産年齢が高いこと、授乳経験がないことです。初経が遅いと曝露期間が短くなるため、リスクはむしろ低くなり、向きが逆です。ほかに閉経後の肥満、飲酒、家族歴(BRCA1/2遺伝子変異など)、ホルモン補充療法も危険因子です。

4.膀胱癌 ― アフラトキシン:アフラトキシンは、アスペルギルス属のカビがナッツ類や穀類などに産生するカビ毒で、肝細胞癌の危険因子です。B型肝炎ウイルス感染と重なると、肝細胞癌のリスクがさらに高まります。膀胱癌の主な危険因子は、喫煙と芳香族アミン(β-ナフチルアミン、ベンジジンなど)です。芳香族アミンには染料工業などの職業で曝露します。ビルハルツ住血吸虫の感染も膀胱癌の原因になります。この選択肢は、部位の対応を入れ替えたものです。

5.成人T細胞白血病 ― 肥満:成人T細胞白血病はヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の感染が原因で、肥満とは関連がありません。主な感染経路は母乳を介した母子感染で、ほかに性行為による感染があります。輸血による感染は、献血血液の抗体検査で防がれています。キャリアの多くは生涯発症せず、長い潜伏期間を経て、一部が成人期以降に発症します。九州・沖縄に多く、妊婦健康診査で抗体検査が行われ、陽性の場合は人工栄養を中心とした栄養方法の説明が行われます。

覚えるポイント

  • 胃癌の三大危険因子は、ピロリ菌の持続感染、喫煙、塩分・塩蔵食品です。野菜・果物はリスクを下げる方向に働きます。
  • 乳癌は「エストロゲン曝露期間が長いほど高リスク」です。早い初経、遅い閉経、未産、高齢初産、授乳なし、閉経後の肥満、飲酒が該当し、遅い初経はリスク低下です。
  • 化学物質と部位の対応は、アフラトキシン→肝細胞癌、芳香族アミン→膀胱癌、アスベスト→中皮腫・肺癌、塩化ビニル→肝血管肉腫、ベンゼン→白血病です。
  • 感染と部位の対応は、HTLV-1→成人T細胞白血病(主に母乳感染)、HPV→子宮頸癌、HBV・HCV→肝細胞癌、EBウイルス→上咽頭癌・バーキットリンパ腫です。
  • 喫煙は肺・膀胱・胃など多くの部位の危険因子です。運動不足・肥満は結腸癌、肥満は閉経後乳癌・子宮体癌と結び付けて覚えます。
  • がん予防は「5+1」です。禁煙、節酒、食生活、身体活動、適正体重の5つに、感染対策を加えます。

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