111AM034|第111回 看護師国家試験 過去問
健康を人々の権利として明記したのはどれか。
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正解: 1 または 3
正答
1.世界保健機関〈WHO〉の健康に関する定義
3.世界人権宣言
選択肢1と選択肢3のいずれも正答として扱われます。
この問題のポイント
健康に関わる国際的な文書・宣言について、「誰の、何を、どのように定めたものか」を区別できるかを問う問題です。手がかりは「健康を」「人々の権利として」「明記した」という言葉で、健康そのものをすべての人の権利と位置づけた文書を選びます。WHO憲章前文は、健康の定義とあわせて健康の享有を万人の基本的権利と明言しています。世界人権宣言も第25条で健康と福祉に十分な生活水準を保持する権利を定めているため、この2つが正答として扱われました。
解説
「健康を人々の権利として明記した」という条件は、次の3つに分けると判断しやすくなります。
- 何について:医療の受け方や医療者の義務ではなく、健康そのもの
- 誰の:患者など特定の立場の人ではなく、すべての人
- どのように:権利であることを文書にはっきり書いている
健康を権利として明記した2つの文書
WHO憲章は1946年に採択され、1948年4月7日に発効しました(この日が世界保健デーです)。日本は1951年に加盟しています。前文には、健康に関する原則として次の2つが続けて掲げられています。
- 健康とは、完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。
- 到達しうる最高基準の健康を享有することは、人種、宗教、政治的信念、経済的・社会的条件の差別なしに、万人の有する基本的権利の一つである。
前半は有名な健康の定義です。健康を「病気や虚弱がないこと」だけでなく、身体・精神・社会の3側面が満たされた積極的な状態としてとらえています。well-beingは「福祉」「良好な状態」などと訳されるので、試験で表現が変わっても同じ内容だと見抜けるようにしておきましょう。後半では、健康そのものを万人の権利と正面から宣言しています。選択肢1の「健康に関する定義」はこの前文に示された健康の考え方を指しており、3つの条件をすべて満たす最も典型的な文書です。
世界人権宣言は、第二次世界大戦の惨禍への反省から、1948年12月10日に国際連合総会で採択されました(12月10日は人権デー)。第25条は次の2つの権利を定めています。
- すべて人が、衣食住、医療及び必要な社会的施設等により、自己と家族の健康及び福祉に十分な生活水準を保持する権利
- 疾病、心身障害、老齢などで生活できなくなった場合に保障を受ける権利
同条2項では、母と子が特別の保護と援助を受ける権利も定めています。健康を「十分な生活水準」の中に位置づけた表現で、WHO憲章ほど直接的ではありません。それでも、健康と医療に関わる権利をすべての人に認めている点で設問の条件を満たすと読めるため、選択肢3も正答として扱われています。
国内では、日本国憲法第25条が「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と生存権を定めています。あわせて、国に社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上と増進に努める責務を課しています。国際文書とあわせて出題されやすい条文です。
世界医師会の2つの宣言
ジュネーブ宣言とリスボン宣言は、どちらも世界医師会(WMA)が採択した医療倫理の宣言です。
- ジュネーブ宣言(1948年):医師が医療専門職の一員となるときに行う誓いで、ヒポクラテスの誓いの精神を現代化したものとされます。
- リスボン宣言(1981年採択、1995年改訂):患者の権利に関する宣言です。良質の医療を受ける権利、選択の自由の権利、自己決定の権利、情報に対する権利、守秘義務に対する権利、健康教育を受ける権利、尊厳に対する権利、宗教的支援に対する権利などを掲げています。
前者は医師の責務、後者は医療の場での患者の権利を定めたものです。どちらも「健康」や「権利」という言葉を含んでいますが、健康そのものを人々の権利として宣言した文書ではありません。
これらの知識は看護実践にも直結します。WHOの健康の定義は、対象者を身体面だけでなく精神面・社会面も含めて全人的にとらえる看護の視点の土台です。健康を差別なく万人の権利とする考え方は、日本看護協会の「看護職の倫理綱領」が掲げる人間の尊厳と権利の尊重や、対象となる人々への平等な看護の提供に通じます。リスボン宣言が示す患者の権利は、インフォームド・コンセントや意思決定支援を行う際の根拠になります。
選択肢の確認
1.世界保健機関〈WHO〉の健康に関する定義:正答。WHO憲章の前文は、健康を身体・精神・社会の3側面が完全に満たされた状態と定義しています。そのうえで、到達しうる最高基準の健康を享有することを、人種や宗教、政治的信念、経済的・社会的条件による差別なく万人が有する基本的権利の一つと明言しています。健康そのものをすべての人の権利として直接宣言している点で、設問の条件に最もよく当てはまります。
2.ジュネーブ宣言:1948年に世界医師会が採択した、医師が医療専門職の一員となるにあたって行う倫理的な誓いであり、健康を人々の権利として定めた文書ではありません。患者の健康を第一に考慮することなどを医師自身が誓う内容なので、「健康」という語が出てきても、それは医師の責務として書かれています。医師の職業倫理を問う設問なら正答になる宣言です。同じ世界医師会の選択肢4や、人間を対象とする医学研究の倫理的原則を示したヘルシンキ宣言と取り違えないようにしましょう。
3.世界人権宣言:正答。1948年に国際連合総会で採択されたこの宣言は、第25条で、すべて人は衣食住・医療・必要な社会的施設等により、自己と家族の健康及び福祉に十分な生活水準を保持する権利を有すると定めています。健康を生活水準の権利の中に位置づけた間接的な表現ですが、健康と医療に関わる権利をすべての人のものとして明記しているため、選択肢1とともに正答として扱われています。
4.リスボン宣言:1981年に世界医師会が採択した、医療専門職が認めて擁護すべき患者の権利をまとめた宣言です。良質の医療を受ける権利、自己決定の権利、情報に対する権利など、医療の場における患者の権利を定めたもので、健康そのものをすべての人の権利として宣言したものではありません。患者の権利やインフォームド・コンセントの根拠を問う設問であれば正答になります。
覚えるポイント
- WHO憲章前文(1946年採択、1948年発効):健康とは「完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない」。続けて、到達しうる最高基準の健康の享有を万人の基本的権利と明記しています。spiritual(霊的)とdynamic(動的)を加える改正案が1998年にWHO執行理事会でまとめられましたが、総会では採択されず、定義は変わっていません。
- 世界人権宣言(1948年、国際連合総会)第25条:健康と福祉に十分な生活水準(衣食住・医療・社会的施設)を保持する権利と、母と子が特別の保護と援助を受ける権利を規定しています。日本国憲法第25条(生存権と、国の社会福祉・社会保障・公衆衛生の向上増進の責務)とあわせて覚えます。
- 世界医師会の宣言は主題で区別します:ジュネーブ宣言(1948年)=医師の倫理的な誓い、ヘルシンキ宣言(1964年)=人間を対象とする医学研究の倫理的原則、リスボン宣言(1981年)=患者の権利。
- WHOが関わる国際会議の宣言・憲章も整理します:アルマ・アタ宣言(1978年)=プライマリヘルスケアを提唱し、健康が基本的人権であることを再確認。オタワ憲章(1986年)=ヘルスプロモーションを提唱。
- 文書を見分けるときは「誰が採択したか」「誰の権利・義務か」「何についての規定か」の3点で整理すると、初見の選択肢にも対応できます。
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