111PM064|第111回 看護師国家試験 過去問
Aさん(32歳、初産婦)は前置胎盤 placenta previa のため妊娠37週0日の午前10時から帝王切開術を受ける予定である。手術前日の看護師の対応で適切なのはどれか。
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正解: 3
正答
3.輸血の準備ができているか確認する。
この問題のポイント
前置胎盤に対する予定帝王切開の前日に、看護師が何を準備・確認すべきかを問う問題です。判断の鍵は「前置胎盤」という病名です。子宮下部に付着した胎盤は剝離面の止血が難しく、術中に大量出血が起こりやすいことを思い出せるかが問われています。ほかの選択肢は、浣腸の可否、絶飲食の開始時期、血栓予防器具を装着する時期という周術期看護の一般知識で除外します。
解説
問題文の手がかり
- 32歳の初産婦で、前置胎盤と診断されている
- 妊娠37週0日に予定帝王切開を受け、手術開始は午前10時
- 問われているのは手術の「前日」の対応
前置胎盤で出血が多くなる理由
正常な胎盤は子宮体部に付着します。前置胎盤は、胎盤が子宮下部に付着し、内子宮口を覆う、または内子宮口にかかる状態です。覆い方によって、全前置胎盤、部分前置胎盤、辺縁前置胎盤に分けられます。妊娠後期に子宮下部が伸びると胎盤の一部がずれて、痛みを伴わない出血(警告出血)を起こすことがあります。
出血しやすい理由は、胎盤が付着している子宮の部位にあります。
- 止血の仕組みが働きにくい:子宮体部は筋層が厚く、胎盤が剝がれた後に強く収縮して血管を締め付けます(生物学的結紮)。子宮下部は筋層が薄く収縮力が弱いため、胎盤剝離面からの出血が止まりにくくなります。
- 癒着胎盤を合併しやすい:子宮下部は脱落膜の発育が乏しく、絨毛が筋層に入り込みやすいためです。癒着していると胎盤を剝がせずに出血がさらに増え、子宮摘出が必要になることもあります。帝王切開の既往があると、この危険はいっそう高まります。Aさんは初産婦で既往はありませんが、危険がないわけではありません。
陣痛が始まって子宮口が開くと大出血につながるため、前置胎盤では陣痛が来る前の時期に予定帝王切開を行います。今回の妊娠37週0日の手術も、この考え方によるものです。
手術前日に確認すべき輸血の準備
前置胎盤の帝王切開では、大量出血に備えて輸血をすぐに始められる状態にしておくことが最も重要な準備です。看護師は、医師の指示に基づく準備が整っているかを確認し、不足があれば報告します。
- 血液型(ABO式・RhD)と不規則抗体の検査結果
- 交差適合試験と、輸血用血液製剤(赤血球製剤、新鮮凍結血漿など)の確保
- 自己血を貯血している場合は、その保管状況と当日の搬送手順
- 輸血の同意書、子宮摘出の可能性についての説明と同意
- 急速輸液・輸血に備えた太い留置針での静脈路確保の準備
前日には、性器出血の量と性状、子宮収縮(おなかの張り)、胎児心拍、貧血の程度も観察します。出血や陣痛が始まれば緊急手術に切り替える可能性があるため、異常時はすぐに知らせるよう本人に伝えておきます。初めての出産が手術となり、出血の危険も説明されているため、不安の軽減と十分な睡眠への援助も前日の大切な看護です。
ほかの術前準備との区別
「前置胎盤で避ける処置」「絶飲食をいつから始めるか」「血栓予防をいつ始めるか」を整理できていれば、残りの選択肢は除外できます。浣腸は子宮収縮を誘発して出血を招くおそれがあるため避けます。翌日午前の手術なので、前日の夕食は食べてかまいません。間欠的空気圧迫装置は手術当日から使う器具です。
選択肢の確認
1.浣腸を行う。:浣腸による腸管への刺激やいきみは子宮収縮を誘発し、胎盤付着部からの出血を招くおそれがあるため、前置胎盤では行いません。内診を原則として避けるのも同じ理由です。また帝王切開は腸管を切る手術ではないため、大腸の手術のような腸管前処置(下剤や浣腸)も必要ありません。消化管手術の術前準備と取り違えないようにしましょう。
2.夕食が禁食となっているか確認する。:手術は翌日の午前10時開始なので、前日の夕食を食べても手術までの時間は十分に空き、夕食を禁食にする必要はありません。妊婦は胃内容の排出が遅く誤嚥の危険が高いため絶飲食の管理自体は重要です。ただし前日に確認すべきなのは、夕食後の何時から固形物が禁止になるか、水やお茶などの清澄水を何時まで飲めるかを本人が理解しているかです。日本麻酔科学会のガイドラインでは、清澄水は手術の2時間前まで摂取できるとされています。不必要に長い絶食は脱水や空腹による苦痛につながります。
3.輸血の準備ができているか確認する。:正答。前置胎盤では、子宮下部の収縮不良による止血困難や癒着胎盤の合併によって、術中に大量出血が起こる危険が高くなります。血液型、不規則抗体、交差適合試験、血液製剤や自己血の確保、同意書などが整っているかを前日に確認しておくことが、最も優先度の高い対応です。
4.下肢に間欠的空気圧迫装置を装着する。:間欠的空気圧迫装置は、手術当日に手術室で装着し、術後に十分歩行できるようになるまで続ける静脈血栓塞栓症の予防策です。自由に歩ける前日に装着する意味はありません。妊娠と帝王切開はどちらも血栓の危険因子なので、前日には弾性ストッキングのサイズ測定、下肢の腫れや痛み・左右差の確認、早期離床の説明を行います。すでに深部静脈血栓がある場合、装置の使用は血栓を飛ばして肺塞栓症を招くおそれがあるため禁忌です。
覚えるポイント
- 前置胎盤は、子宮下部の収縮が弱く胎盤剝離面の止血が難しいうえ、癒着胎盤を合併しやすいため、分娩時に大量出血しやすくなります。帝王切開の前には輸血の準備(血液型、不規則抗体、交差適合試験、血液製剤・自己血、同意書)を必ず確認します。
- 前置胎盤では、内診や浣腸など子宮収縮や出血を誘発しうる刺激を避けます。妊娠後期の無痛性の出血が特徴で、腹痛と子宮の板状硬を伴う常位胎盤早期剝離とは区別します。
- 予定手術の絶飲食は「前日夕食まで食べてよい、その後に固形物を中止、清澄水は手術の2時間前まで」が基本の考え方です。確認するのは禁食を始める時刻と飲水できる最終時刻です。
- 間欠的空気圧迫装置は手術当日から十分に歩けるまで使います。深部静脈血栓が既にあれば禁忌です。前日は下肢の観察と弾性ストッキングの準備を行います。
- 「前日に行うこと」と「当日に行うこと」を区別します。前日には、同意の確認、輸血などの物品と体制の確認、出血・子宮収縮・胎児心拍の観察、不安の軽減と睡眠の確保を行います。
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