111PM087|第111回 看護師国家試験 過去問

動脈硬化症 arteriosclerosis の粥腫形成に関与するのはどれか。2つ選べ。

2つ選択
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正解: 3・5

正答

3.血管内皮細胞
5.泡沫細胞

この問題のポイント

粥状動脈硬化(アテローム硬化)で、粥腫(プラーク)がどの細胞の働きでできるかを問う問題です。粥腫は「内皮の傷害から始まり、脂質を取り込んだマクロファージが泡沫細胞になる」という順に形成されます。この流れを思い浮かべられれば、関与する細胞は2つに絞れます。ほかの選択肢は、存在する臓器と主な働きから除外できます。

解説

動脈壁の構造

動脈壁は内側から次の3層でできています。粥腫ができるのは内膜です。

  • 内膜:内腔に面した1層の内皮細胞と、その下の薄い結合組織
  • 中膜:平滑筋と弾性線維
  • 外膜:結合組織

粥腫ができるまでの流れ

  1. 内皮の傷害・機能障害
    • 原因:高血圧、喫煙、高血糖、脂質異常(LDLの上昇、HDLの低下)、血管分岐部などで乱れる血流のずり応力
    • 健康な内皮は一酸化窒素(NO)を産生し、血管拡張、血小板凝集の抑制、平滑筋増殖の抑制を担っています。
    • 傷害されるとこの働きが落ち、透過性が高まって、血中のLDLが内膜下に入り込みます。
  2. LDLの酸化と単球の侵入
    • 内膜にとどまったLDLは酸化されて酸化LDLになります。
    • 活性化した内皮細胞は接着分子を出します。これに単球が接着し、内膜へ潜り込んでマクロファージに分化します。
  3. 泡沫細胞の形成
    • マクロファージはスカベンジャー受容体を介して酸化LDLを取り込みます。
    • 通常のLDL受容体には、細胞内のコレステロールが増えると取り込みが抑えられる負のフィードバックがあります。スカベンジャー受容体にはこの調節がないため、際限なく取り込み続けます。
    • その結果、細胞質が脂肪滴で満たされ、顕微鏡で泡のように見える泡沫細胞になります。
    • 泡沫細胞が集まると、内膜に黄色い脂肪線条ができます。これは最も早期の病変で、若年期から見られます。
  4. 線維性被膜と脂質コアの形成
    • 中膜の平滑筋細胞が内膜へ遊走・増殖し、膠原線維を産生して線維性被膜を作ります。平滑筋細胞の一部も脂質を取り込んで泡沫化します。
    • 被膜の下では泡沫細胞が壊死し、コレステロール結晶を含む粥(かゆ)状の脂質コアができます。
    • これが粥腫で、進行すると石灰化も伴います。

臨床とのつながり

  • 狭窄による症状:粥腫が大きくなって内腔が狭くなると、狭心症や閉塞性動脈硬化症による間欠性跛行が起こります。
  • 破綻による急性発症:粥腫が破綻すると、露出した脂質コアに血小板が集まって血栓ができます。これが急性冠症候群やアテローム血栓性脳梗塞の原因になります。
  • 不安定プラーク:線維性被膜が薄い、脂質コアが大きい、炎症細胞が多い、という特徴をもつ粥腫です。狭窄が軽くても破綻しやすい点が重要です。

看護では、禁煙支援、血圧・血糖・脂質の管理、食事・運動療法への支援が、内皮を守り粥腫の進展を防ぐことにつながります。HDLは末梢組織の余分なコレステロールを肝臓へ戻す働き(コレステロール逆転送)があるため、「善玉」と呼ばれます。

動脈硬化の3つの型

  • 粥状硬化:大動脈、冠動脈、頸動脈、脳動脈、下肢動脈など、大~中型の動脈に起こります。本問の対象です。
  • 細動脈硬化:長期の高血圧により細動脈の壁が厚く硬くなります。脳ではラクナ梗塞や高血圧性脳出血、腎では腎硬化症につながります。
  • 中膜硬化(メンケベルク型):四肢の筋性動脈の中膜が石灰化するもので、高齢者、糖尿病、透析患者に見られます。内腔の狭窄はあまり起こしません。

選択肢の確認

1.Langerhans〈ランゲルハンス〉細胞:表皮(主に有棘層)にある樹状細胞で、侵入した抗原を捕らえて所属リンパ節へ移動し、T細胞に抗原提示します。接触皮膚炎(Ⅳ型アレルギー)の感作などに関わる皮膚の免疫細胞であり、動脈内膜で粥腫を作る細胞ではありません。膵臓のランゲルハンス島(α細胞がグルカゴン、β細胞がインスリンを分泌)とは名前が同じだけで別物なので、混同しないようにします。

2.メサンギウム細胞:腎糸球体の毛細血管係蹄の間にある細胞で、係蹄を支え、基質の産生や貪食を行います。IgA腎症ではこの領域にIgAが沈着して細胞が増殖し、糖尿病性腎症では基質が増えて結節性病変を作ります。いずれも腎臓の病変に関わる細胞であり、動脈の粥腫形成とは関係しません。

3.血管内皮細胞:正答。内皮細胞の傷害・機能障害が粥状動脈硬化の出発点です。NOの産生が低下して透過性が高まり、LDLが内膜へ入り込みます。さらに接着分子を出して単球を呼び込むことで、粥腫形成の最初の段階を担います。

4.肥満細胞:結合組織や粘膜に分布し、表面のIgEに抗原が結合するとヒスタミンなどを放出して、Ⅰ型アレルギー(アナフィラキシー、花粉症、蕁麻疹など)を起こす細胞です。「肥満」は細胞が顆粒で膨らんで見えることに由来する名前で、体の肥満とは無関係です。肥満が動脈硬化の危険因子であることから連想して選ばないよう注意します。粥腫内に存在するという研究報告はありますが、粥腫形成の基本過程を構成する細胞としては扱われません。

5.泡沫細胞:正答。単球由来のマクロファージ(一部は平滑筋細胞)が酸化LDLを大量に取り込み、脂肪滴で満たされた細胞です。集まって脂肪線条を作り、壊死すると脂質コアを形成するため、粥腫の中心的な構成要素です。

覚えるポイント

  • 粥腫形成の順序は「内皮傷害 → LDLの侵入と酸化 → 単球の侵入とマクロファージ化 → 泡沫細胞 → 脂肪線条 → 平滑筋の遊走・増殖と線維性被膜 → 脂質コア」です。
  • 泡沫細胞は、酸化LDLをスカベンジャー受容体で取り込んだマクロファージです。取り込みに負のフィードバックがないことが、脂質が蓄積する理由です。
  • 不安定プラーク(被膜が薄い、脂質コアが大きい、炎症が強い)は、狭窄が軽くても破綻して血栓を作り、急性冠症候群や脳梗塞を起こします。
  • 動脈硬化は、粥状硬化(大~中型動脈)、細動脈硬化(高血圧、ラクナ梗塞・腎硬化症)、中膜硬化(石灰化、狭窄は少ない)の3型で区別します。
  • 脂質異常症の診断基準(日本動脈硬化学会)は、LDLコレステロール140mg/dL以上、HDLコレステロール40mg/dL未満、空腹時トリグリセライド150mg/dL以上です。
  • 紛らわしい細胞名は所在で覚えます。ランゲルハンス細胞は表皮、メサンギウム細胞は糸球体、肥満細胞はⅠ型アレルギーです。

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