112AM017|第112回 看護師国家試験 過去問

薬物動態で肝臓が関与するのはどれか。

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正解: 3

正答

3.代謝

この問題のポイント

薬物動態を構成する4つの過程(吸収・分布・代謝・排泄)の名称と、それぞれを主に担う臓器を問う基礎問題です。「肝臓」という語から、薬物代謝酵素(シトクロムP450など)が集中する臓器であることを思い出せるかが鍵になります。選択肢4の「蓄積」は4過程の名称ではないので、ADMEの構成を正確に覚えていれば除外できます。

解説

薬物動態の4過程

薬物動態は、体に入った薬がどう取り込まれ、運ばれ、変えられ、出ていくかを表す概念です。吸収(Absorption)、分布(Distribution)、代謝(Metabolism)、排泄(Excretion)の4過程からなり、頭文字をとってADMEと呼ばれます。一方、薬が作用部位で受容体などに働いて効果を現すしくみは薬力学と呼ばれ、薬物動態とは区別します。

各過程の主な場は次のとおりです。

  • 吸収:投与部位から血液中へ移行する過程です。経口薬は、表面積の大きい小腸から主に吸収されます。
  • 分布:血中の薬が全身の組織へ移行する過程です。臓器の血流量、血漿蛋白(主にアルブミン)との結合、薬の脂溶性、血液脳関門や胎盤などの関門が影響します。
  • 代謝:薬を化学的に変化させる過程です。主な場は肝臓です。
  • 排泄:薬や代謝物が体外へ出る過程です。主な経路は腎臓(尿中)で、ほかに胆汁(糞便中)、呼気、乳汁などがあります。

肝臓での代謝のしくみ

肝細胞には薬物代謝酵素が多く存在し、代表が**シトクロムP450(CYP)**です。代謝は大きく2段階に分けられます。

  • 第Ⅰ相反応:酸化・還元・加水分解。主にCYPが担います。
  • 第Ⅱ相反応:グルクロン酸抱合、硫酸抱合、アセチル抱合などの抱合反応です。

多くの薬は脂溶性で、そのままでは腎臓の尿細管で再吸収されやすく、体外に出にくい性質があります。代謝によって水溶性が高まると、尿や胆汁に排泄されやすくなります。一般に代謝で薬は不活性化されますが、代謝を受けて初めて作用を示す薬(プロドラッグ)もあるため、「代謝=不活性化」とは限りません。なお、肝臓は胆汁中への排泄にも関わり、胆汁に出た薬が腸で再吸収されて肝臓に戻る腸肝循環という現象もあります。ただし本問の選択肢に排泄はなく、肝臓の中心的な役割である代謝が正答です。

初回通過効果

経口投与された薬は、小腸で吸収されたあと門脈を通って肝臓に入り、全身循環に届く前に一部が代謝されます。これを初回通過効果といいます。ニトログリセリンは初回通過効果が大きいため、狭心症発作時には舌下投与します。口腔粘膜から吸収された薬は門脈を通らずに全身循環に入るからです。直腸下部から吸収される坐薬も、初回通過効果を一部避けられます。初回通過効果は「吸収」の現象ではなく、肝臓での「代謝」の現象であると整理しておきましょう。

臨床での活かし方

  • 肝機能障害(肝硬変など)では代謝が低下し、薬の血中濃度が上がったり、作用が長引いたりします。また肝臓はアルブミンを合成するため、低アルブミン血症では蛋白と結合していない遊離型の薬が増え、作用が強く出ることがあります(分布への間接的な影響)。
  • 高齢者では肝血流量や肝重量の低下で代謝が、腎機能の低下で排泄が遅れやすくなります。そのため少量から開始し、ふらつきや過鎮静などの副作用を観察することが看護のうえで重要です。
  • 薬物相互作用にもCYPが関わります。グレープフルーツジュースは主に小腸壁のCYP3A4を阻害し、ニフェジピンなど一部のカルシウム拮抗薬の血中濃度を上げます。逆にリファンピシンのようにCYPを誘導する薬は、併用薬の血中濃度を下げます。

選択肢の確認

1.吸収:吸収は投与部位から薬が血液中に入る過程で、経口薬では主に小腸粘膜が担います。肝臓は、吸収された薬を門脈経由で受け取って代謝する臓器であり、吸収そのものは行いません。経口投与後に起こる初回通過効果を「吸収」と取り違えやすいので注意が必要です。なお静脈内投与では吸収の過程がなく、投与した全量がそのまま血中に入ります。

2.分布:分布は血中の薬が血流に乗って全身の組織へ移行する過程で、血流量、血漿蛋白結合率、脂溶性、血液脳関門などの関門によって決まります。肝臓はアルブミンの合成を通じて間接的に影響しますが、分布は特定の臓器が担う過程ではありません。肝臓が中心的に関与する過程としては、代謝が該当します。

3.代謝:正答。肝細胞のシトクロムP450などの酵素が、酸化・還元・加水分解(第Ⅰ相)と抱合(第Ⅱ相)によって薬を化学的に変化させ、水溶性を高めて排泄しやすくします。初回通過効果もこの肝臓での代謝によって起こり、薬物動態の中で肝臓が中心的な役割を担う過程です。

4.蓄積:蓄積は、投与量や投与頻度が消失(代謝と排泄)の速さを上回ったときに、体内に薬がたまる状態を表す語で、ADMEの4過程には含まれません。肝機能や腎機能が低下した患者、高齢者で起こりやすく、脂溶性の薬は脂肪組織にたまりやすい特徴があります。代謝の低下の「結果」として起こることはありますが、肝臓が行う過程ではありません。

覚えるポイント

  • 薬物動態はADMEです。吸収は主に小腸、分布は血流・蛋白結合・関門で決まり、代謝は主に肝臓、排泄は主に腎臓(ほかに胆汁・呼気・乳汁)が担います。
  • 肝臓の薬物代謝酵素の代表はシトクロムP450です。第Ⅰ相(酸化・還元・加水分解)と第Ⅱ相(抱合)で水溶性を高め、排泄を促します。
  • 初回通過効果は、経口薬が門脈から肝臓へ入り、全身循環の前に代謝されることです。ニトログリセリンの舌下投与は、これを避ける代表例です。
  • 肝機能低下では代謝の低下と低アルブミン血症による遊離型の増加が、腎機能低下では排泄の遅延が起こります。いずれも作用の増強や蓄積につながります。
  • 高齢者は代謝・排泄がともに低下しやすいため、少量から開始して副作用を観察します。
  • 薬物動態(体が薬をどう処理するか)と薬力学(薬が体にどう作用するか)を区別して覚えましょう。

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