112AM018|第112回 看護師国家試験 過去問

胃から食道への逆流を防ぐために、成人が食後30分から1時間程度とるとよい体位はどれか。

解答・解説を見る

正解: 1

正答

1.座位

この問題のポイント

食後の胃食道逆流を防ぐ体位を問う、基礎看護の問題です。判断の鍵は「胃から食道への逆流を防ぐ」「食後30分から1時間程度」という条件です。食道が胃より高い位置にあり、重力が胃内容物を胃にとどめる方向に働く体位ほど逆流しにくいという原理から考えます。上半身が水平になる臥位系の体位では、重力による防御が働きません。

解説

逆流を防ぐしくみ

食道は横隔膜の食道裂孔を通り、胃の噴門につながります。噴門部では次の3つが逆流防止機構として働きます。

  • 下部食道括約筋(LES):食道の下端を締めています。
  • 横隔膜脚:外側から食道を締めつけます。
  • His角:食道と胃底部がつくる鋭い角度です。

これらの機構が弱まったり、胃内の圧が高まったりすると逆流が起こります。主な要因は次のとおりです。

  • LES圧の低下:脂肪の多い食事、アルコール、喫煙、一部の薬剤
  • 一過性LES弛緩:嚥下と関係なくLESが一時的にゆるむ現象
  • 腹圧の上昇:肥満、便秘時のいきみ、締めつける衣服、前かがみの姿勢、円背
  • 食道裂孔ヘルニア

食後は胃が食物で満たされて伸展し、この伸展が一過性LES弛緩の引き金になります。そのため、食後は1日のうちで最も逆流が起こりやすい時間帯です。

体位と重力の関係

上半身を起こした座位では、食道が胃の真上に位置します。胃内容物は重力によって胃の下部にたまるので、LESが一時的にゆるんでも食道へは上がりにくくなります。仮に少量が逆流しても、重力で胃へ戻りやすくなります。

一方、仰臥位や側臥位のように上半身が水平の体位では、食道と胃がほぼ同じ高さになります。その結果、胃内容物が噴門部に接しやすくなり、逆流した内容物も食道にとどまりやすくなります。胃内容量が多い食後30分から1時間程度は、上体を起こしておくのが基本です。

臨床での活用

  • 高齢者や嚥下障害のある人:食後すぐに寝かせず、車椅子やベッド上でしばらく座位を保ちます。逆流物は、咳反射の低下した人では気管に入りやすく、誤嚥性肺炎の原因になります。座位の保持はその予防にもつながります。
  • 座位を保てない人:ファウラー位(上半身を約45度起こす)など、可能な範囲で上体を挙上します。
  • 経管栄養(胃管・胃瘻)の人:注入中と注入後30分から1時間程度は、上半身を30度以上起こした姿勢を保ちます。
  • 胃食道逆流症の生活指導:食後すぐに横にならない、就寝直前の食事を避ける、就寝時は上半身をやや高くする、腹圧を高める要因(肥満、便秘、きつい衣服、前かがみ)を減らす、といった点を伝えます。

選択肢の確認

1.座位:正答。上半身を垂直に近く起こす体位で、食道が胃の真上に位置します。重力によって胃内容物が胃の下部にとどまり、噴門部へ上がりにくくなります。選択肢の中で重力を最も有効に利用でき、逆流物の誤嚥予防にも役立つため、食後の体位として最も適しています。

2.仰臥位:上半身が水平になり、食道と胃がほぼ同じ高さになるため、胃内容物が噴門部へ流れ込みやすい体位です。逆流した内容物も重力で胃へ戻りにくく食道にとどまるので、胸やけや誤嚥の原因になります。なお、慢性肝炎や肝硬変では、肝血流量を保つ目的で食後に安静臥床をすすめることがあります。同じ「食後30分〜1時間」という表現でも、目的が異なる点を区別しておきましょう。

3.右側臥位:体幹の右側を下にした体位で、上半身は水平のままです。胃の出口である幽門が右側にあるため、胃から十二指腸への排出を促す目的で用いられることがあります。しかし、この体位では食道胃接合部が胃内容物に対して相対的に低い位置になり、胃内容物が接合部に接しやすくなります。そのため、左側臥位に比べて逆流が起こりやすいとされています。「胃の排出を促す体位」と「逆流を防ぐ体位」は別物だと覚えておきましょう。

4.半側臥位:あおむけと側臥位の中間で、体幹を斜め(30度程度)に傾けた体位です。上半身は水平のままなので、重力による逆流防止効果は期待できません。30度側臥位として、仙骨部の圧迫を避ける褥瘡予防の体位変換で用いられるのが代表的な場面です。名称の「半」から、上半身を起こすファウラー位と混同しないよう注意が必要です。

覚えるポイント

  • 食後の逆流と誤嚥を防ぐ基本は、食後30分から1時間程度は上体を起こしておくことです。第一選択は座位で、難しければファウラー位など上体挙上位にします。
  • 逆流防止機構は、下部食道括約筋、横隔膜脚、His角の3つです。LES圧の低下、一過性LES弛緩、腹圧上昇、食道裂孔ヘルニアで逆流が起こりやすくなります。
  • 側臥位どうしで比べると、逆流しにくいのは左側臥位です。右側臥位は胃の排出を促しますが、逆流は起こりやすくなります。
  • 半側臥位は仰臥位と側臥位の中間の体位(上体は水平)で、半座位(ファウラー位、上体挙上)とは別物です。
  • 経管栄養では、注入中と注入後30分から1時間程度は上半身を30度以上挙上します。
  • 胃食道逆流症の生活指導では、食後すぐ臥床しない、就寝直前の食事を避ける、就寝時は上半身を高くする、腹圧上昇の要因を避ける、を押さえておきましょう。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する([email protected])までお知らせください。確認して修正します。

関連問題

← 112AM017112AM019 →
学習アプリでこの問題を解く(記録・メモ・カード化)