112PM047|第112回 看護師国家試験 過去問
成人の気管支喘息 bronchial asthma に対する副腎皮質ステロイド薬の吸入で正しいのはどれか。
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正解: 4
正答
4.吸入後は含嗽を促す。
この問題のポイント
吸入ステロイド薬(ICS)の治療上の位置づけと、副作用の特徴を問う問題です。判断の鍵は「吸入」という投与経路です。薬が気道に直接届くため全身性の副作用は少なく、口腔・咽頭に残った薬による局所の副作用が問題になります。発作治療薬との区別と、ほかの喘息治療薬の副作用との取り違えにも注意が必要です。
解説
気管支喘息と吸入ステロイド薬の位置づけ
気管支喘息の本態は、好酸球などが関わる気道の慢性炎症です。炎症によって気道過敏性が高まり、刺激を受けると気道が狭くなります。この気流制限は可逆性で、喘鳴、呼吸困難、咳嗽の発作として現れます。そのため治療は次の2本立てになります。
- 長期管理薬(コントローラー):発作がないときも炎症を抑え続ける薬です。
- 発作治療薬(リリーバー):起きた発作を速やかに鎮める薬です。
吸入ステロイド薬は長期管理薬の中心で、重症度にかかわらず治療の基本になります。抗炎症作用は使い続けることで現れ、即効性の気管支拡張作用はありません。そのため、症状がなくても毎日規則正しく続けることが大切です。自己判断で中止すると炎症が再燃し、発作を起こしやすくなります。
吸入という投与経路の意味と含嗽の指導
吸入では薬が気道粘膜に直接作用するため、少ない量で効果が得られ、全身循環に入る量はわずかです。内服や注射の副腎皮質ステロイド薬では、高血糖、易感染性、骨粗鬆症、満月様顔貌、消化性潰瘍などの全身性副作用が問題になります。吸入ではこれらが通常量では起こりにくくなります。ただし、高用量を長期間使う場合は、全身への影響にも注意します。
一方、吸入した薬の一部は口腔や咽頭に付着します。付着した薬が局所の免疫を抑えると口腔・咽頭カンジダ症が起こり、喉頭への作用で嗄声が生じます。これを防ぐのが吸入後の含嗽で、看護師が行う服薬指導の重要な項目です。
- 吸入のたびに、水を口に含んでブクブクと口腔内をすすいで吐き出し、続けて上を向いてガラガラと咽頭をうがいします。
- 高齢者などで含嗽が難しい場合は、口をすすぐ、水を飲む、食事の前に吸入して飲食で洗い流す、といった方法で代えます。
- 加圧噴霧式定量吸入器(pMDI)では、スペーサーを使うと口腔内への付着を減らせます。
- 吸入手技が不十分だと効果が落ち、口腔内に残る量も増えます。手技は定期的に確認します。
発作時の治療との区別
発作時には、まず短時間作用性β2刺激薬(SABA)を吸入します。重積発作は、通常の治療に反応しない重い発作が続く状態です。この場合は、酸素投与、SABAの反復吸入、副腎皮質ステロイド薬の点滴静注などの全身投与、アミノフィリン点滴静注、アドレナリン皮下注射などを状況に応じて行います。呼吸不全が進めば人工呼吸管理も検討します。
吸入ステロイド薬は即効性がなく、重い発作では十分に吸入すること自体が難しいため、発作を鎮める目的では用いません。なお、ブデソニド・ホルモテロール配合剤を長期管理に使っている患者では、症状が出たときに同じ吸入薬を追加する方法があります。これは配合されたホルモテロールの速効性の気管支拡張作用を利用したもので、重積発作の治療ではありません。同じステロイドでも「発作時は全身投与、長期管理は吸入」と、投与経路と目的を分けて整理しておきましょう。
選択肢の確認
1.糖尿病 diabetes mellitus の患者への投与は禁忌である。:吸入ステロイド薬は全身に移行する量がわずかで、通常量では血糖への影響はほとんどありません。そのため、糖尿病があっても投与は禁忌ではありません。糖尿病の患者で血糖上昇に特に注意が必要なのは、内服や点滴静注など副腎皮質ステロイド薬を全身投与する場合です。全身投与の副作用を吸入にもあてはめてしまう取り違えを誘う選択肢です。
2.副作用(有害事象)に不整脈がある。:不整脈は吸入ステロイド薬の副作用としては挙げられません。頻脈、動悸、不整脈、手指振戦、低カリウム血症はβ2刺激薬を過量に使ったときに起こりやすい副作用です。また、不整脈、痙攣、悪心・嘔吐は、テオフィリン(アミノフィリン)の血中濃度が上昇したときに起こりやすい副作用です。気管支拡張薬の副作用と混同しないようにします。
3.重積発作の際に使用する。:重積発作では、SABAの反復吸入、酸素投与、副腎皮質ステロイド薬の全身投与(点滴静注など)、アミノフィリン点滴静注などを行います。吸入ステロイド薬は効果が現れるまでに時間がかかる長期管理薬で、発作を速やかに鎮める作用はありません。発作時に用いるステロイドは吸入ではなく全身投与である、という点が判断のポイントです。
4.吸入後は含嗽を促す。:正答。吸入後に口腔・咽頭に残った薬は、口腔カンジダ症や嗄声の原因になります。これを防ぐため、吸入のたびに含嗽を促します。含嗽が難しい場合は、口をすすぐ、飲水や食事で洗い流すなどの方法で代えるよう指導します。
覚えるポイント
- 気管支喘息の本態は気道の慢性炎症です。長期管理薬の中心は吸入ステロイド薬で、症状がなくても毎日続けます。
- 吸入ステロイド薬の副作用は局所性が中心で、口腔・咽頭カンジダ症と嗄声が代表です。予防は吸入後の含嗽(難しければ口すすぎ・飲水)です。
- 高血糖、易感染性、骨粗鬆症、満月様顔貌などの全身性副作用は全身投与で問題になり、吸入の通常量では起こりにくいです。
- 発作時の基本はSABA吸入です。重積発作ではこれに加え、酸素、ステロイドの全身投与、アミノフィリン点滴静注などを行います。
- 副作用を薬ごとに区別します。β2刺激薬は頻脈・動悸・振戦・低カリウム血症、テオフィリンは不整脈・痙攣・悪心嘔吐(血中濃度の管理が必要)です。
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