115B042|第115回 歯科医師国家試験 過去問
23 歳の男性。下顎の前突感を主訴として来院した。診断をした結果、外科的矯 正治療を行うこととした。初診時の顔面写真 (別冊No. 15A 、口腔内写真 (別冊No. 15B 及びエックス線画像 (別冊No. 15C を別に示す。セファロ分析の結果を図に示す。 (セファロ分析図は問題画像参照) 抜歯部位 (智歯を除く )と顎矯正手術の組合せで正しいのはどれか。 1つ選べ。 (抜歯部位・術式の組合せは問題画像参照)

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正解: b
正答
b
この問題のポイント
この症例では、骨格性Ⅲ級の成分が上顎と下顎の双方にあることと、前歯に生じた歯性補償を読み取ります。術前矯正では上顎前歯の歯軸を整え、手術では上顎をLe Fort I型骨切り術、下顎を下顎枝矢状分割術で移動する組合せを選びます。
解説
顔貌写真ではオトガイ部の前方突出を伴う反対咬合様の側貌を認め、口腔内写真では前歯部の負のoverjetとAngleⅢ級傾向を確認できます。セファロ分析では、ANB角が小さく、上顎の後方位と下顎の前方位が組み合わさった骨格性Ⅲ級として考えます。
骨格性Ⅲ級では、上下顎骨のずれを歯の傾斜で補う歯性補償が生じます。本症例では上顎前歯の唇側傾斜が強く、術前矯正で上顎前歯を舌側へ移動するための空隙が必要です。そのため、上顎両側第一小臼歯を抜歯します。
一方、下顎前歯は骨格性Ⅲ級に対する補償として舌側傾斜しています。術前矯正ではむしろこの補償を除き、下顎前歯を適正な歯軸へ戻す必要があります。下顎第一小臼歯を抜歯して前歯をさらに後退させる計画は適切ではありません。
顎骨については、上顎骨全体の後方位を前方へ移動するためにLe Fort I型骨切り術を行い、下顎骨の前方位を後方へ移動するために下顎枝矢状分割術を行います。前歯部歯槽骨切り術では前歯部歯槽骨だけが移動するため、上顎骨全体の後方位を十分に改善できません。
症例問題の解き方
まずANB角とSNA角・SNB角から骨格性不調和を判定します。次に上下顎前歯歯軸から歯性補償を確認し、最後に「抜歯で作る空隙」と「手術で動かす顎骨」を対応させます。
画像の確認
実画像では、側貌に中顔面の後退感とオトガイ部の前方突出があり、口腔内では前歯部反対咬合と上顎前歯の唇側傾斜がみられる。セファロ図でもSNA角低値、SNB角高値、ANB角低値と上下前歯の歯性補償が示され、選択肢表のbは上顎両側第一小臼歯抜歯、Le Fort I型骨切り術、下顎枝矢状分割術の組合せである。この画像上の組合せが正答を支える。
選択肢の確認
a.選択肢a(問題画像参照)
誤り。
問題画像では、上顎両側第一小臼歯の抜歯、上顎前歯部歯槽骨切り術、下顎枝矢状分割術の組合せです。上顎前歯の後退はできますが、上顎骨全体の後方位を改善できないため、本症例には不十分です。
b.選択肢b(問題画像参照)
正答。最も適切です。
問題画像では、上顎両側第一小臼歯の抜歯、Le Fort I型骨切り術、下顎枝矢状分割術の組合せです。上顎前歯の歯性補償を除去しながら、上顎骨の前方移動と下顎骨の後方移動を行えるため、症例の骨格性不調和に適合します。
c.選択肢c(問題画像参照)
誤り。
問題画像では上下顎両側第一小臼歯を抜歯し、上下顎とも前歯部歯槽骨切り術を行う組合せです。下顎前歯をさらに後退させる抜歯計画は歯性補償の除去に反し、顎骨全体の前後的不調和も十分に改善できません。
d.選択肢d(問題画像参照)
誤り。
問題画像では上下顎両側第一小臼歯を抜歯し、上顎にLe Fort I型骨切り術、下顎に前歯部歯槽骨切り術を行う組合せです。下顎骨全体の前方位を改善できず、下顎第一小臼歯抜歯も本症例の下顎前歯歯軸に適しません。
e.選択肢e(問題画像参照)
誤り。
問題画像では上下顎両側第一小臼歯を抜歯し、上顎にLe Fort I型骨切り術、下顎に下顎枝垂直骨切り術を行う組合せです。下顎骨の後方移動自体は可能ですが、下顎第一小臼歯抜歯によって下顎前歯をさらに後退させる計画が症例の歯性補償と合いません。
覚えるポイント
- 骨格性Ⅲ級では、上顎前歯の唇側傾斜と下顎前歯の舌側傾斜という歯性補償がみられます。
- 上顎骨全体の後方位はLe Fort I型骨切り術で改善します。
- 本症例では上顎のみ第一小臼歯を抜歯し、上顎前歯の歯軸を整えます。