第105回
105AM009|第105回 助産師国家試験 過去問
Aさん(32歳、初産婦)は既往歴・家族歴ともに特記すべきことはなく、妊娠経過に異常はない。妊娠37週に妊婦健康診査のため助産師外来を受診した。Aさんの状態について現時点で医師への報告が必要な情報はどれか。
解答・解説を見る
正解1
正答
1.子宮底28 cm
この問題のポイント
妊娠経過に異常のない初産婦の妊娠37週の健診で、分娩が近づくことによる生理的な変化と、医師への報告が必要な異常の徴候を見分ける問題です。判断の鍵は「妊娠37週」という週数です。子宮底長の目安、産徴と前駆陣痛という分娩準備の徴候、NSTのリアクティブの基準を、この週数に当てはめて評価します。4つのうち週数に見合わないのは子宮底長だけで、胎児発育不全や羊水過少を疑う所見です。
解説
問題文の手がかりと助産師外来の役割
Aさんは32歳の初産婦で、既往歴・家族歴に特記事項がなく、妊娠経過も正常です。ローリスクの妊婦として助産師外来で健診を受けています。妊娠37週は正期産(37週0日〜41週6日)に入ったばかりで、妊娠月数では10か月(36週0日〜39週6日)にあたります。
保健師助産師看護師法第38条は、助産師が妊婦・産婦・褥婦・胎児・新生児に異常があると認めたときは、医師の診療を求めさせなければならないと定めています。また、臨時応急の手当を除き、自ら処置をしてはならないとしています。助産師外来では、経過が正常かどうかを見極め、異常の徴候を見逃さずに医師につなぐことが中心的な役割です。この問題は、その境界を判断できるかを問うています。
子宮底長の評価
子宮底長は、恥骨結合上縁から子宮底までの長さを巻尺で測る値です。胎児の大きさ、羊水量、子宮の大きさを反映する簡便なスクリーニング指標です。概算式は次のとおりです。
- 妊娠5か月まで:妊娠月数×3(cm)
- 妊娠6か月以降:妊娠月数×3+3(cm)
この式では、妊娠8か月で約27 cm、9か月で約30 cm、10か月で約33 cmになります。妊娠37週で28 cmという値は、9か月の目安をも下回ります。10か月の目安より約5 cm小さく、8か月の目安に近い大きさです。
妊娠10か月になると児頭が骨盤内へ下降し、子宮底の高さは9か月末ごろを最高にやや下がります。しかし、子宮底長の目安は10か月でも約33 cmです。分娩が近づいたことでは、28 cmという小さな値を説明できません。
子宮底長が週数に比べて小さいときは、次のような原因を考えます。
- 胎児発育不全(FGR)
- 羊水過少
- 横位などの胎位異常(横位では子宮が横に広がるため、子宮底が週数に比べて低くなりやすい)
- 妊娠週数の算定の誤り(通常は妊娠初期の超音波検査で週数が確定しています)
- 子宮底の最高点の見誤りや巻尺の当て方など、測定手技の誤り
なお、膀胱が充満していると子宮底が押し上げられ、子宮底長は実際より大きく測定されます。そのため、測定前には排尿を済ませてもらいます。膀胱の充満は値を大きくする方向に働くので、今回のような小さな値の説明にはなりません。
実際には、まず測定手技を確認して測り直し、レオポルド触診法で胎位も確かめます。前回の健診からの推移(増え方が止まっていないか)も確認し、医師に報告します。医師には、超音波検査で推定胎児体重、羊水量、胎位、胎児の健康状態を評価してもらいます。胎児発育不全や羊水過少は胎盤機能の低下と関係していることがあり、分娩中の胎児機能不全のリスクにもつながります。そのため、分娩が始まる前に把握し、分娩方針に反映させることが重要です。
分娩準備の徴候と胎児の健康状態
妊娠末期に分娩が近づくと、子宮頸管の熟化・開大に伴う産徴や、不規則な前駆陣痛がみられるようになります。正期産であれば、どちらも生理的な変化です。日本産科婦人科学会の定義では、陣痛周期が10分以内、または陣痛頻度が1時間に6回以上となった時点を分娩開始とします。間隔が10〜15分で不規則かつ弱い収縮は、この基準を満たしません。
NSTでは、胎動などに伴って胎児心拍数が一時的に上昇する一過性頻脈が、20分間に2回以上あればリアクティブと判定します。胎児の中枢神経系が正常に働き、低酸素やアシドーシスに陥っていないことを示す所見で、健康状態が良好なしるしです。ただし、NSTが良好でも胎児の発育が週数相当とは限りません。子宮底長の異常はNSTとは別に評価する必要があり、この点からも報告を要するのは選択肢1だけです。
選択肢の確認
1.子宮底28 cm:正答。妊娠9か月の目安(約30 cm)も下回り、10か月の目安(月数×3+3で約33 cm)より約5 cm小さい値で、8か月の目安(約27 cm)に近い大きさです。胎児発育不全、羊水過少、胎位異常などを疑います。排尿を済ませてもらったうえで測り直して測定誤差を除き、医師に報告して超音波検査による評価につなげる必要があります。
2.粘液性の血性分泌物を少量排出:分娩が近づいて子宮頸管が熟化・開大し始めると、卵膜が子宮壁から少し剝がれ、脱落膜の細い血管から出た少量の血液が頸管粘液に混じって排出されます。これが産徴(おしるし)で、正期産に入った時期であれば生理的な分娩準備の徴候として扱い、報告の必要はありません。報告が必要なのは次のような場合です。産徴より明らかに多い出血や鮮血が続く場合(前置胎盤などを疑う)、持続する腹痛や子宮の硬直、胎動の減少を伴う場合(常位胎盤早期剝離を疑う)、破水を伴う場合です。「粘液性」「少量」という表現が、正常と判断する手がかりです。
3.断続的な10〜15分の弱い子宮収縮:間隔が一定せず強さも弱いこの収縮は、前駆陣痛(偽陣痛)にあたります。陣痛周期10分以内、または1時間に6回以上という分娩開始の基準を満たしていません。妊娠37週は正期産に入っているので早産の心配もなく、報告の必要はありません。同じような収縮でも早産期であれば切迫早産の徴候として評価が必要になるため、週数と組み合わせて判断することが大切です。一般に初産婦には、陣痛が規則的に10分間隔になったら連絡するよう指導します。
4.ノンストレステスト〈NST〉で胎児の一過性頻脈が20分間に2回:20分間に2回以上の一過性頻脈がみられればリアクティブと判定し、胎児の健康状態は良好と評価できるため、報告の必要はありません。妊娠32週以降の一過性頻脈は、基線から15 bpm以上上昇し、15秒以上2分未満続くものをいいます(32週未満は10 bpm以上・10秒以上)。20分間で基準を満たさない場合は、胎児の睡眠周期を考えて観察を40分程度まで延長します。それでも満たさなければ、ノンリアクティブとして医師に報告します。
覚えるポイント
- 子宮底長の概算は、妊娠5か月までが「月数×3」、6か月以降が「月数×3+3」(cm)で、9か月で約30 cm、10か月で約33 cmです。測定は排尿後に行います(膀胱が充満していると子宮底が押し上げられ、値が大きく出ます)。
- 子宮底長が週数に比べて小さいときは、胎児発育不全・羊水過少・横位・週数の誤り・測定手技の誤りを考えます。大きいときは巨大児・羊水過多・多胎を考えます。いずれも超音波検査につなげます。
- 正期産は37週0日〜41週6日、妊娠10か月は36週0日〜39週6日です。子宮底の高さは9か月末ごろが最も高く、10か月には児頭の下降でやや下がりますが、子宮底長の目安は10か月でも約33 cmです。
- 分娩開始は、陣痛周期が10分以内、または陣痛頻度が1時間に6回以上となった時点です。不規則で弱い前駆陣痛と、少量の粘液性の血性分泌物である産徴は、正期産では正常な分娩準備の徴候です。多量の出血、鮮血の持続、腹痛や子宮の硬直を伴う出血は異常として扱います。
- NSTのリアクティブは、20分間に2回以上の一過性頻脈です(32週以降は15 bpm以上・15秒以上2分未満)。NSTが良好でも、胎児の発育の評価は別に必要です。
- 助産師は異常を認めたら医師の診療を求めさせ、臨時応急の手当を除いて自ら処置をしてはなりません(保健師助産師看護師法第38条)。正常か逸脱かの判断は、常に週数と組み合わせて行います。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する(medixmatch2025@gmail.com)までお知らせください。確認して修正します。
解いた記録を残して、苦手な問題をもう一度。
学習アプリなら、この問題の解答記録・メモ・暗記カード化を使えます。