第105回
105AM010|第105回 助産師国家試験 過去問
Aさん(16歳、初産婦)は妊娠16週である。近隣の診療所からの紹介で、妊婦健康診査と分娩の予約のため病院の産科外来を1人で受診した。このときの情報収集で最も優先されるのはどれか。
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正解2
正答
2.家族との関係
この問題のポイント
16歳の未成年の初産婦が、妊娠16週で1人で受診した場面で、何を最初に把握すべきかを問う問題です。「16歳」「初産婦」「1人で受診」「分娩の予約」が判断の手がかりです。妊娠を続けて出産し、育児に至るまでの支援の基盤、つまり家族が妊娠を知り、受け止め、支えられる状態にあるかを最優先で確認します。若年妊娠が特定妊婦として支援の対象になりうることも、あわせて押さえておきたい知識です。
解説
問題文の手がかり
- 16歳:未成年で、経済的にも社会的にも保護者に頼っている年齢です。出題当時の民法の成年年齢は20歳でした。2022年4月から18歳に引き下げられましたが、どちらでも16歳は未成年です。婚姻については、出題当時は女性は16歳から父母の同意を得て婚姻できました。現在は男女とも18歳にならないと婚姻できません。
- 初産婦:妊娠・分娩・育児のすべてが初めてなので、身近な支援者の存在が特に重要です。
- 1人で受診:付き添いの都合がつかなかっただけのこともあります。一方で、家族が妊娠を知らない、受け入れていない、関係が不安定である、といった可能性を示す手がかりにもなります。
- 妊婦健康診査と分娩の予約、紹介受診:妊娠を続け、この病院で出産する方向で動き出している段階です。妊娠経過や検査結果などの医学的情報は、紹介状である程度引き継がれます。生活背景は本人から丁寧に聞き取る必要があります。
若年妊娠と特定妊婦
10歳代の妊娠では、身体面で貧血、早産、低出生体重児などのリスクが指摘されます。それに加えて、社会面の課題が重なりやすいのが特徴です。
- 経済的に自立していない
- 学業の中断を迫られやすい
- パートナーとの関係が不安定になりやすい
- 妊娠に気づくのや受診が遅れやすい
- 産後の育児で孤立しやすい
こうした状況は、出産後の子どもの養育に影響し、児童虐待のリスクとも関連します。
児童福祉法では、出産後の養育について出産前から支援することが特に必要と認められる妊婦を特定妊婦と定めています。若年妊娠、望まない妊娠、経済的困窮、支援者がいないことなどが、特定妊婦として把握される代表的な状況です。特定妊婦は要保護児童対策地域協議会の支援対象です。医療機関は市町村(保健センターなど)と連携し、妊娠期から支援を組み立てます。
家族の状況を最優先する理由
未成年の妊婦にとって、家族は次のすべてに関わる支援の基盤です。
- 経済面(健診や分娩の費用、生活費)
- 住まいと通院の手段
- 入院時や緊急時の対応
- 産後の育児
家族が妊娠を知って受け止めているかどうかで、支援の組み立て方は根本から変わります。家族が知らない、あるいは反対している場合は、本人の意思を尊重しながら家族への伝え方を一緒に考えます。あわせて、行政・学校・福祉の支援を早めに導入することも検討します。
ここでいう家族には、親だけでなくパートナー(胎児の父親)や婚姻の有無も含めて考えます。相手との年齢差や関係によっては、性的な搾取や暴力が背景にある可能性にも注意します。
就学の状況やバースプランも、いずれは確認して支援すべき事項です。しかし、家族の支えが得られるかが分からなければ、学業をどう続けるか、どこでどう産み育てるかという具体策は立てられません。家族の状況は、ほかの情報を生かすための前提となる情報です。
実践の場では、責めたり説教したりすると信頼関係を損ね、受診の中断につながりかねません。まず1人で受診できたことをねぎらいます。プライバシーが守られる場で、妊娠をどう受け止めているか、誰に相談できているかを本人の言葉で語ってもらいます。そのうえで次の点を把握し、必要に応じて医療ソーシャルワーカーや市町村の保健師につなぎます。
- 妊娠の届出と母子健康手帳の交付状況
- 家族やパートナーの反応
- 経済状況
選択肢の確認
1.就学の状況:16歳は高校に在籍していることが多い年齢です。学業を続けるか、休学や転学を選ぶか、学校にどう伝えるかは本人の将来に大きく関わるため、いずれ必ず確認して支援すべき情報です。文部科学省も、妊娠した生徒が学業の継続を望む場合は必要な配慮をするよう学校に求めています。しかし、通学しながら妊娠期を過ごせるか、出産後に誰が子どもをみるかは、家族の支援体制に左右されます。そのため、家族の状況を把握したうえで検討するほうが現実的で、優先度は選択肢2より低くなります。
2.家族との関係:正答。未成年で1人で受診した初産婦にとって、家族が妊娠を知り、受け止め、支えられる状態にあるかは、経済面・生活面・育児面すべての支援の基盤です。この情報によって支援の方向性や関係機関との連携の必要性が決まるため、最も優先して把握します。
3.バースプラン:分娩の方法、立ち会う人、産痛の緩和、産後の過ごし方などについて、妊婦自身の希望をまとめる計画です。妊娠中期以降、分娩に関する知識が深まり、医療者との信頼関係ができるにつれて具体化していくものです。妊娠16週の初回受診で最優先する情報ではありません。また、立ち会いや産後の生活は家族の支えの有無と切り離せないため、家族の状況が分かって初めて具体的に話し合えます。
4.胎動自覚の有無:胎動を感じ始める時期は、初産婦ではおおむね妊娠18〜20週ころで、経産婦はそれより早い傾向があります。妊娠16週の初産婦がまだ胎動を感じていなくても正常で、自覚がないことは異常を示しません。この時期の胎児の生存や発育は、超音波検査やドプラ法による胎児心音で確認します。このため、優先して聴取する意義は低い情報です。胎動は妊娠後期になると、減少の有無などが胎児の健康状態を知る手がかりとして重視されます。
覚えるポイント
- 10歳代の妊娠では、身体面(貧血、早産、低出生体重児など)に加えて、経済・学業・パートナー関係・育児の孤立といった社会面の課題を重点的に評価します。
- 未成年の妊婦の初回の情報収集では、家族が妊娠を知っているか、受け止めているか、支援が得られるかを最優先で確認します。「1人で受診」は支援が不足している可能性を示す手がかりです。
- 特定妊婦は児童福祉法に定められた、出産後の養育について出産前から支援が特に必要な妊婦です。若年妊娠、望まない妊娠、経済的困窮、支援者がいないことなどが該当しうるため、市町村と連携し、要保護児童対策地域協議会で支援します。
- 胎動を感じ始めるのは、初産婦でおおむね妊娠18〜20週ころ、経産婦ではそれより早い時期です。
- バースプランは妊娠中期以降に、信頼関係と知識の提供を土台にして作成するもので、初回受診で優先する事項ではありません。
- 情報収集の優先度を問う問題では、「ほかの情報を生かすための前提となる情報(支援の基盤)はどれか」という視点で選びます。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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