第105回

105AM014|第105回 助産師国家試験 過去問

在胎38週3日、正常分娩で出生した女児。Apgar〈アプガー〉スコア9点、体重3,000 g。出生後20時間、直腸温は36.8 ℃、呼吸数40/分、心拍数145/分。このときの児の胎外生活への適応状態として異常所見はどれか。

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正解4

正答

4.体幹にチアノーゼが見られる。

この問題のポイント

出生後20時間の新生児の所見を、胎外生活へ移る過程で起こる生理的な変化と、精査や治療が必要な異常所見とに分ける問題です。在胎週数、出生体重、Apgarスコア、バイタルサインはいずれも正常です。胎便がまだ出ていないこと、体重の減少、レンガ色の尿は、この時期に起こりうる生理的な現象です。体幹に及ぶチアノーゼは中心性チアノーゼで、出生直後の数分間なら健常児にもみられますが、移行期を過ぎた生後20時間では動脈血の酸素化の障害を示す異常所見と判断します。

解説

事例の整理

まず、児の背景と現在の状態を確認します。

  • 在胎38週3日は正期産(37週0日〜41週6日)です。出生体重3,000 gも正常範囲(2,500 g以上4,000 g未満)にあります。
  • Apgarスコア9点は7点以上の正常範囲で、出生直後の適応は良好でした。
  • 生後20時間の値は、直腸温36.8℃、呼吸数40/分、心拍数145/分です。いずれも新生児の基準範囲(体温36.5〜37.5℃、呼吸数40〜60/分、心拍数120〜160/分)に入っています。

背景にもバイタルサインにも、リスクを示す情報はありません。問われているのは、4つの所見のうち、生後20時間の生理的な経過から外れるものはどれかです。

チアノーゼは出現部位と時期で意味が変わる

チアノーゼは、毛細血管内の還元(脱酸素化)ヘモグロビンが増え、皮膚や粘膜が青紫色に見える状態です。おおむね5 g/dL以上で目に見えるようになるとされます。新生児では、どこに出ているか、そして生後どの時期かによって意味が変わります。

  • 末梢性チアノーゼ:手足の先だけが青く、口唇や体幹はピンク色です。出生後しばらくは末梢循環の調節が未熟なため起こり、寒冷刺激でも出やすくなります。生後1〜2日ごろまでよくみられる生理的な現象で、保温で改善します。
  • 中心性チアノーゼ:口唇、舌、口腔粘膜、体幹に及ぶチアノーゼです。動脈血そのものの酸素飽和度が下がっていることを示します。

中心性チアノーゼも、出生直後の数分間に限れば健常児にみられます。胎児は酸素分圧の低い状態で過ごしているため、出生直後の動脈血はまだ十分に酸素化されていません。呼吸が始まると肺が広がり、肺血管抵抗が下がって肺血流が増えます。肺で酸素化された血液が左心系に戻るようになると、卵円孔と動脈管を通っていた胎児期の右左短絡は減っていきます。卵円孔と動脈管は、その後、機能的な閉鎖へ向かいます。この切り替えのあいだは、健常な新生児でも動脈管前(右手)のSpO2が生後1分ごろには60%台と低く、生後10分ごろにかけて90%前後まで上がっていきます。

このため新生児蘇生法(NCPR)でも、蘇生の初期処置が必要かを出生直後に判断する項目は「早産児」「弱い呼吸・啼泣」「筋緊張低下」の3つで、皮膚色は含まれていません。その後の評価で努力呼吸やチアノーゼが続く場合に、パルスオキシメータを右手に装着し、生後の経過時間ごとの目標値と比べて判断します。

一方、呼吸が確立して移行期を過ぎた後にも続く中心性チアノーゼや、その時期に新たに現れる中心性チアノーゼは、胎外循環への切り替えがうまくいっていないことを示す病的な所見です。本事例は生後20時間で、出生直後の移行期はすでに過ぎています。したがって、体幹のチアノーゼは異常所見と判断します。主な原因は次のとおりです。

  • 呼吸障害(新生児一過性多呼吸、呼吸窮迫症候群など)
  • 新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)
  • チアノーゼ性先天性心疾患
  • 敗血症、多血症

本事例のように、呼吸数が基準範囲内で多呼吸がないのに中心性チアノーゼがある場合は、心疾患も念頭に置きます。動脈管は生後数日以内に機能的に閉鎖します。そのため、動脈管を通る血流に頼っている心疾患では、閉鎖に伴って、生後しばらくたってからチアノーゼが目立ってくることがあります。

発見したときの対応は次の順です。

  • 口唇や舌の色を確認し、パルスオキシメータでSpO2を測ります。
  • 右手(動脈管前)と足(動脈管後)の両方で測ります。足の値が右手より低ければ、動脈管を通る右左短絡を疑う手がかりになります。
  • 保温しながら観察を続け、直ちに医師へ報告します。動脈管に依存する心疾患では、高濃度の酸素投与が動脈管の閉鎖を促して状態を悪化させることがあります。そのため、酸素投与や精査は医師と連携して進めます。

排泄と体重変化の生理

  • 胎便:暗緑色で粘りのある便です。胎児期に飲み込んだ羊水の成分、はがれた腸上皮、胆汁色素などからできています。多くの児は生後24時間以内に初回の胎便を出し、哺乳が進むにつれて、生後数日のうちに移行便を経て乳便へ変わります。
  • 生理的体重減少:出生直後は哺乳量が少ない一方で、不感蒸泄や排尿・排便で水分が失われるため、体重が一時的に減ります。出生体重の10%以内が生理的範囲とされます。生後3〜5日ごろに最も減り、1〜2週ごろまでに出生体重へ戻ります。
  • レンガ尿:初回排尿も多くは生後24時間以内です。生後数日は尿が濃縮されるため、尿酸塩の結晶でおむつがオレンジ〜レンガ色に染まることがあります。

選択肢の確認

1.胎便の排出がない。:初回の胎便は多くの児で生後24時間以内に出るため、生後20時間の時点でまだ出ていなくても異常とは判断しません。24時間を過ぎても出なければ、腹部膨満や嘔吐の有無と合わせて観察を強めます。48時間を超えて遅れる場合は、ヒルシュスプルング病や胎便性イレウスなどの通過障害を疑う根拠になります。「胎便が出ていない=異常」と早合点せず、時間の基準と照らし合わせることが大切です。

2.体重が90 g減少した。:減少率は90÷3,000×100=3%で、10%以内とされる生理的体重減少の範囲にあります。哺乳量がまだ少なく、不感蒸泄や排泄で水分が失われるために起こる、胎外生活への適応過程の正常な変化です。次のような場合には哺乳不足や脱水を疑います。減少が10%を超えるとき、生後3〜5日を過ぎても減り続けるとき、1〜2週たっても出生体重に戻らないときです。

3.レンガ色の排尿があった。:尿が濃縮される生後数日間に、尿中の尿酸塩が結晶として出て、おむつをオレンジ〜レンガ色に染めるものです。生理的な所見で、哺乳量が増えて尿量が増えれば自然に消えます。レンガ尿が生後数日を過ぎても続く場合は、尿の濃縮が続いていることを示し、哺乳不足や脱水を疑うきっかけになります。色が似ているため血尿と取り違えやすく、女児では新生児月経との区別も必要です。新生児月経は、胎内で受けていた母体由来のエストロゲンが出生後に消えていくことで起こる、少量の性器出血(消退出血)です。通常は数日で自然に止まる生理的な所見で、哺乳量とは関係しません。

4.体幹にチアノーゼが見られる。:正答。体幹に及ぶチアノーゼは中心性チアノーゼで、動脈血の酸素飽和度の低下を示します。出生直後の数分間であれば健常児にもみられますが、生後20時間は移行期をすでに過ぎているため異常所見です。手足の先だけに限られる末梢性チアノーゼ(生理的)とは区別します。呼吸障害、チアノーゼ性先天性心疾患、新生児遷延性肺高血圧症、敗血症などを疑い、SpO2測定と医師への報告を直ちに行います。

覚えるポイント

  • 新生児のバイタルサインの基準は、呼吸数40〜60/分、心拍数120〜160/分、体温36.5〜37.5℃です。
  • 手足の先だけの青さ(末梢性チアノーゼ)は生理的で、保温で改善します。口唇・舌・体幹の青さ(中心性チアノーゼ)は、出生直後の数分間なら移行期の生理的な所見です。移行期を過ぎた後にも続く場合や新たに現れる場合は病的で、SpO2測定(右手と足)と医師への報告を直ちに行います。
  • NCPRで、蘇生の初期処置が必要かを出生直後に判断する項目は「早産児」「弱い呼吸・啼泣」「筋緊張低下」の3つで、皮膚色は含まれません。
  • 初回排尿と初回胎便は、どちらも多くが生後24時間以内です。便は胎便→移行便→乳便と変わり、胎便の排泄が48時間を超えて遅れる場合は通過障害を疑います。
  • 生理的体重減少は出生体重の10%以内で、生後3〜5日で最大、1〜2週で出生体重に戻ります。減少率は「減少量÷出生体重×100」で計算します。
  • 異常と紛らわしい生理的所見として、レンガ尿(尿酸塩)、新生児月経(母体由来エストロゲンの消退出血)、四肢末端のチアノーゼ、生理的黄疸(生後2〜3日に出現)があります。出現時期と範囲が基準内かで判断します。たとえば、生後24時間以内に現れる黄疸(早発黄疸)は病的です。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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