第105回

105AM015|第105回 助産師国家試験 過去問

新生児における酸素消費量と環境温度の関係を図に示す。中性温度環境はどれか。

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解答・解説を見る

正解3

正答

3.C

この問題のポイント

新生児の体温調節の図から、中性温度環境にあたる区間を選ぶ問題です。中性温度環境とは、正常な体温を保ちながら酸素消費量(熱産生)が最も少なくてすむ環境温度の範囲です。そのため、曲線がいちばん低くなる谷底の区間を選びます。あわせて、次の2点を曲線の形から読み取れるかが問われています。寒くても暑くても酸素消費量は増えます。また、最も低温側で酸素消費量が再び下がるのは、体温調節が破綻した結果です。

解説

縦軸は酸素消費量、横軸は環境温度で、左が低温、右が高温です。目盛りや数値はないので、曲線の形から判断します。

  • 曲線は左端から上がって頂点に達し、そこから右下がりになります。灰色のCの区間で最も低い谷底になり、その右で再び上がります。Dを過ぎた網掛けのない部分では、さらに急な上り坂になっています。
  • A(横線)は、左端から頂点を越えて下り坂の途中までです。
  • B(点)は下り坂の後半です。
  • C(灰色)は谷底です。
  • D(格子)は、谷底のすぐ右で曲線が上がり始める部分です。

中性温度環境とは

熱をつくる代謝には酸素が使われます。そのため、酸素消費量は熱産生量(代謝量)の指標になります。このグラフは、「その環境温度で体温を保つために、どれだけエネルギーを使っているか」を表しています。

中性温度環境(neutral thermal environment)では、熱産生を増やす必要がありません。発汗などで積極的に熱を逃がす必要もありません。皮膚血管の収縮・拡張や姿勢の調節だけで、正常な体温を保てます。このとき酸素消費量は最小になり、酸素とエネルギーを成長に回せます。

定義には「正常な体温を保てる」と「酸素消費量が最小」の両方が含まれています。図では、体温調節が保たれたまま酸素消費量が最も低くなる谷底、つまりCがこれにあたります。

新生児の体温調節と曲線の形

新生児は熱を失いやすい体です。

  • 体重あたりの体表面積が大きく、皮下脂肪が薄いです。
  • 出生直後は羊水で濡れているため、蒸散による熱の喪失も大きくなります。

一方で、ふるえによる熱産生はほとんどできず、褐色脂肪組織による非ふるえ熱産生に頼ります。仕組みは次のとおりです。

  • 寒冷刺激で交感神経からノルアドレナリンが出ると、肩甲骨間・頸部・腋窩・縦隔・腎周囲などの褐色脂肪組織で脂肪が分解されます。
  • 褐色脂肪細胞のミトコンドリアには脱共役タンパク質(UCP1、サーモゲニン)があり、ATPをつくる代わりに熱を産生します。
  • この熱産生で酸素とブドウ糖を消費するため、中性温度環境より寒くなるほど酸素消費量が増えます(B)。
  • 褐色脂肪組織は妊娠後期に蓄えられるため、早産児では熱をつくる余力が小さくなります。

さらに寒くなると、熱産生を限界(曲線の頂点)近くまで高めても熱の喪失に追いつかず、体温が下がっていきます。頂点より低温側では、低体温のために代謝そのものが抑えられ、酸素消費量が減ります(A)。これは楽になったのではなく、体温調節が破綻した危険な状態です。

高温側では、末梢血管の拡張や発汗で熱を逃がす反応にエネルギーを使います。体温も上がりやすくなるため、酸素消費量が増え始めます(D)。さらに高温になると放熱が追いつかずに体温が上がり(うつ熱・高体温)、体温の上昇そのものが代謝を高めます。新生児は発汗機能が未熟なので、高温でも体温が上がりやすいことに注意します。

寒冷ストレスと臨床での対応

中性温度環境より寒い環境(寒冷ストレス)では、次の影響が連鎖します。

  • 酸素消費量が増えて低酸素血症になり、嫌気性代謝で乳酸がたまって代謝性アシドーシスになる
  • ブドウ糖の消費が増えて低血糖になる
  • 低酸素とアシドーシスで肺血管が収縮して肺高血圧となり、卵円孔や動脈管を通る右左短絡でさらに低酸素が進む(悪循環)
  • 脂肪分解で増えた遊離脂肪酸が、アルブミンへの結合をめぐってビリルビンと競合し、アシドーシスとともに核黄疸のリスクを高める
  • 熱産生にエネルギーを取られ、体重増加が不良になる

中性温度環境は決まった数値ではありません。出生体重・在胎週数・日齢・着衣・湿度などで変わります。出生体重が小さいほど、また在胎週数や日齢が少ないほど、高い温度にあり、幅も狭くなります。そのため早産児や低出生体重児では、保育器で温度や湿度を児に合わせて調整するなど、細かな環境管理が必要です。

出生直後は、熱が逃げる経路ごとに対策をとります。

  • 蒸散:羊水をすぐに拭き取り、濡れたリネンを替える
  • 伝導:温めたリネンや処置台を使い、冷たい器具を直接当てない
  • 輻射:窓際や冷たい壁のそばを避ける
  • 対流:エアコンの風や隙間風を避ける

Bの状態のように、体温が正常範囲(おおむね36.5〜37.5℃)でも余分なエネルギーを使っていることがあります。体温の値だけでなく、四肢の冷感、皮膚色、活気、哺乳状態、体重増加、血糖も合わせて評価します。

選択肢の確認

1.A:横線の網掛けで示した最も低温側の区間で、曲線の頂点(酸素消費量の最大値)を含みます。熱産生を限界近くまで高めても熱の喪失に追いつかず、体温が下がっていく範囲です。頂点より低温側では低体温で代謝が抑えられ、酸素消費量はかえって減っています。左端では曲線が谷底に近い高さまで下がるため、「酸素消費量が少ない区間」と見誤りやすいところです。しかし正常な体温を保てていないので、中性温度環境にはあたりません。

2.B:点の網掛けで示した、曲線が右下がりに下っていく区間です。中性温度環境より低い温度で、環境温度が下がるほど酸素消費量が増えています。褐色脂肪組織の非ふるえ熱産生を高めて、体温を正常に保っている範囲です。体温は正常でも、余分な酸素とブドウ糖を使う寒冷ストレスの状態です。「体温を保てる範囲」ではあっても「酸素消費量が最小の範囲」ではないので、中性温度環境ではありません。

3.C:正答。灰色で塗られた区間で、曲線が最も低い谷底にあたります。熱産生を増やす必要も積極的に熱を逃がす必要もなく、皮膚血管の調節や姿勢だけで正常な体温を保てるため、酸素消費量が最小になります。これが中性温度環境の定義そのものです。図でも狭い幅で描かれているように、新生児の中性温度環境は狭い温度範囲です。わずかな環境の変化で、寒い側にも暑い側にも外れやすいことを意識して管理します。

4.D:格子の網掛けで示した、谷底のすぐ高温側で曲線が上がり始める区間です。中性温度環境より暑いため、末梢血管の拡張や発汗で熱を逃がす反応にエネルギーを使い、酸素消費量が増え始めています。その右の網掛けのない部分では放熱が追いつかずに体温が上がり(うつ熱・高体温)、酸素消費量が急に増えます。新生児は発汗機能が未熟なので、保育器の温度の上げすぎや、衣類・掛け物の多すぎでもこの状態になりうることを押さえておきます。

覚えるポイント

  • 中性温度環境は、正常な体温を保ちながら酸素消費量(熱産生)が最小となる環境温度の範囲です。グラフでは曲線の谷底を選びます。
  • 低温側から順に次のように整理します。酸素消費量が低いというだけで中性温度環境と判断しないことが大切です。
  • 体温が下がる範囲(頂点より低温側では代謝が抑えられて酸素消費量が減る)→熱産生を増やして体温を保つ範囲→中性温度環境→放熱を強めて体温を保つ範囲→体温が上がる範囲
  • 新生児の熱産生の中心は、ふるえではなく褐色脂肪組織の非ふるえ熱産生です。ノルアドレナリンが刺激し、UCP1の働きで熱をつくります。酸素とブドウ糖を消費し、早産児では蓄えが少ないため寒さに弱くなります。
  • 寒冷ストレスは、低酸素血症、代謝性アシドーシス、低血糖、肺高血圧による右左短絡、核黄疸のリスク上昇、体重増加不良につながります。体温が正常範囲でも起こりえます。
  • 中性温度環境は、出生体重が小さいほど、また在胎週数・日齢が少ないほど高い温度にあり、幅も狭くなります。熱が逃げる4経路(蒸散・伝導・輻射・対流)は、それぞれの保温対策とセットで覚えます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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