第105回

105AM016|第105回 助産師国家試験 過去問

新生児低血糖のため輸液療法中の児。全身状態の観察をする際、低血糖症状の増悪を疑う所見はどれか。

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正解1

正答

1.振戦

この問題のポイント

新生児低血糖で現れる症状を、ほかの病態の所見と区別できるかを問う問題です。ブドウ糖の輸液を受けていても、投与量の不足や輸液の途絶によって血糖が保てず、症状が再び出たり強くなったりすることがあります。その代表的な徴候が振戦です。低血糖では筋緊張は低下し体温も下がりやすいこと、発疹は低血糖の症状ではないことを押さえておけば、ほかの選択肢を除外できます。

解説

問題文の手がかりは「新生児低血糖のため輸液療法中」と「低血糖症状の増悪」です。治療中の児に、低血糖そのものによる症状が新たに出ていないか、強くなっていないかを見極める場面です。新生児低血糖の症状、特に体温や筋緊張がどちらの向きに変化するかを知っていれば、答えを選べます。

新生児が低血糖になりやすい理由

胎児は胎盤を通して母体からブドウ糖の供給を受けています。出生と同時にこの供給が途絶えるため、血糖は生後1〜2時間ごろに最も低くなります。その後は、肝臓のグリコーゲン分解、糖新生、哺乳によって回復していきます。新生児は体重あたりのブドウ糖の需要が大きい一方で、グリコーゲンの蓄えは限られており、生後早い時期に使われてしまいます。糖新生の働きもまだ十分ではありません。そのため新生児はもともと低血糖を起こしやすく、次のような児では特にその危険が高く、遷延もしやすくなります。

  • 糖尿病母体児:胎内で母体の高血糖にさらされて胎児が高インスリン状態となり、出生後もしばらく続きます。巨大児・LGA児も同様の背景をもつことがあります。
  • 早産児・低出生体重児・SGA児:グリコーゲンや脂肪の蓄えが少ない児です。
  • 新生児仮死、呼吸障害、低体温、感染(敗血症):糖の消費が増えます。
  • 母体に切迫早産治療としてリトドリン(β2刺激薬)が投与された児:母体の血糖上昇などを介して、胎児が高インスリン状態になりやすくなります。

新生児低血糖の症状

症状は非特異的で、無症状のこともあります。そのため、ハイリスク児では症状の有無にかかわらず血糖測定を行います。症状は大きく2つに分けて理解すると整理しやすくなります(分類のしかたは成書によって多少異なります)。

  • 交感神経系の反応によるもの:振戦(ふるえ、jitteriness)、易刺激性、多呼吸、頻脈、蒼白、発汗など。ただし新生児は汗腺の働きが未熟なため、発汗は目立たないことが多いです。
  • 脳へのエネルギー不足によるもの:哺乳不良、活気の低下、筋緊張低下、弱い泣き声や甲高い泣き声、無呼吸・チアノーゼ、低体温、けいれん、意識障害など。

振戦は頻度が高く、早い段階から現れやすい症状です。一方、けいれん、無呼吸、意識障害は重症化を示します。低血糖が遷延したり反復したりすると脳障害の原因となるため、軽い症状の段階で気づくことが大切です。この問題の4つの選択肢のうち、低血糖そのものの症状にあたるのは振戦だけです。

輸液療法中の観察と看護

問題の児はすでに輸液を受けています。それでも低血糖が増悪する原因としては、次のようなことが考えられます。

  • ブドウ糖の投与量が需要に見合っていない。
  • ラインの閉塞や血管外漏出・抜去で輸液が途切れている。
  • 高インスリン状態が続いている。

振戦が出現したり強くなったりしたら、ただちに血糖を測定し、輸液ポンプの流量、ラインの状態、刺入部を確認して医師に報告します。高濃度のブドウ糖液は漏れると皮膚障害を起こしうるため、刺入部の観察も欠かせません。また、輸液を急に中止すると、ブドウ糖の供給だけが途絶えてインスリンの作用が残ります。その結果、反跳性(リバウンド)の低血糖を起こすことがあります。輸液の減量は、哺乳の確立に合わせて血糖を確認しながら段階的に行います。

振戦とけいれんの見分け方

振戦は刺激や啼泣で誘発される、振幅のそろった規則的なふるえです。四肢を軽く押さえたり屈曲させたりすると止まり、眼球偏位や無呼吸、心拍の変化は伴いません。けいれんは押さえても止まらず、眼球偏位、口をもぐもぐさせる動き、無呼吸などを伴います。ただし、振戦は低カルシウム血症や薬物離脱などでもみられます。糖尿病母体児では、低血糖と低カルシウム血症が重なることもあります。振戦があるだけで低血糖と決めつけず、血糖値で確認します。

選択肢の確認

1.振戦:正答。低血糖に対する交感神経系の反応として現れるふるえで、新生児低血糖で頻度が高く、早期から現れやすい症状です。輸液中に出現したり強くなったりした場合は、血糖が保てていない可能性を考えます。直ちに血糖を測定し、流量・ライン・刺入部を確認して報告します。四肢を軽く押さえて止まるかどうかを観察し、けいれんとの区別もあわせて行います。

2.発熱:低血糖では熱産生に使うエネルギーが不足するため体温はむしろ低下しやすく、体温上昇は低血糖の増悪を示す所見ではありません。低体温は低血糖の結果であると同時に、糖の消費を増やして低血糖を悪化させる原因にもなります。新生児で体温が上がった場合は、まず保育器やコットの環境温度が高すぎないか、着衣や掛け物が多すぎないかを確認します。あわせて、哺乳量不足による脱水や感染症の可能性を考えます。敗血症は低血糖の原因にもなりますが、新生児の感染症ではむしろ低体温を示すことも多いため、高体温と低体温のどちらにも注意が必要です。輸液中であれば、カテーテルに関連した感染も考慮します。

3.発疹:紅斑や丘疹などの皮疹は血糖の状態を反映する所見ではなく、新生児低血糖の症状には含まれません。ただし、皮膚の所見がすべて低血糖と無関係というわけではありません。交感神経系の反応による蒼白や発汗(新生児では目立ちにくい)、無呼吸などに伴うチアノーゼは、低血糖でみられることがあります。そのため、皮膚の色や湿りけの変化は観察が必要です。皮疹がみられた場合は、生理的な新生児中毒性紅斑、汗疹、おむつ皮膚炎、感染症や薬剤によるものなどを考えます。輸液中の児で刺入部周囲に発赤や腫脹があれば、血管外漏出を疑って早期に対応します。これは輸液管理上の問題であり、低血糖の症状とは別に評価します。

4.筋緊張亢進:低血糖では脳へのエネルギー供給が不足して活動性が落ちるため、筋緊張は低下し、ぐったりした状態になるのが典型です。筋緊張が高まる代表的な病態は次のとおりで、いずれも低血糖とは向きが逆です。核黄疸(ビリルビン脳症)で筋緊張低下の時期に続いて現れる後弓反張、新生児薬物離脱症候群、低カルシウム血症によるテタニーがあります。選択肢1のふるえに加えて筋緊張の低下や活気の低下が出てきた場合は、低血糖が進行しているサインとして特に注意します。

覚えるポイント

  • 新生児低血糖の症状:振戦、易刺激性、多呼吸、蒼白、哺乳不良、活気低下、筋緊張低下、弱い(甲高い)泣き声、無呼吸・チアノーゼ、低体温、けいれん。非特異的で、無症状のこともあります。
  • 低血糖では筋緊張も体温も「下がる」方向です。筋緊張亢進はビリルビン脳症・薬物離脱・低カルシウム血症(テタニー)を、発熱は環境温・脱水・感染を考えます。
  • 皮膚の所見は区別します。蒼白・チアノーゼ・発汗(新生児では目立ちにくい)は低血糖でもみられますが、発疹は低血糖の症状ではありません。
  • ハイリスク児:糖尿病母体児・巨大児、早産児・低出生体重児・SGA児、新生児仮死、低体温、感染、母体へのリトドリン投与。血糖は生後1〜2時間ごろに最も低くなります。
  • 振戦とけいれんの鑑別:振戦は刺激で誘発され、四肢を軽く押さえると止まり、眼球偏位や無呼吸を伴いません。
  • 輸液中の低血糖症状には、すぐ血糖を測定し、流量・ライン・刺入部(血管外漏出)を確認します。輸液は急に止めず段階的に減量し、リバウンド性低血糖を防ぎます。

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