第105回

105AM038|第105回 助産師国家試験 過去問

2つ選択

日本で行われている新生児の先天性代謝異常等マススクリーニング検査の対象はどれか。2つ選べ。

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正解2・4

正答

2.先天性副腎過形成、4.フェニルケトン尿症

この問題のポイント

新生児マススクリーニング(先天性代謝異常等検査)の対象疾患を問う問題です。対象になるのは、新生児期には症状が乏しいものの、放置すると重い障害や死亡につながり、早期に治療すれば防げる先天性疾患です。内分泌疾患の先天性副腎過形成症と、アミノ酸代謝異常症のフェニルケトン尿症がこれにあたります。幼児期に多い一過性の病態や、新生児期のろ紙血では見つけにくいウィルソン病は対象ではありません。

解説

検査のしくみ

日本の新生児マススクリーニングは、国の通知に基づき、都道府県・指定都市が実施主体となって行います。保護者の同意を得たうえで、ほぼすべての新生児が受けています。哺乳が進んだ生後4〜6日ころにかかとを穿刺し、専用のろ紙に血液を染み込ませて乾燥させ、検査機関へ送ります。検査費用は公費で負担されます。

この時期に採血するのには理由があります。哺乳でたんぱく質をとる前は血中フェニルアラニンが上がらず、見逃すおそれがあります。また、出生直後は生理的なTSHの急上昇や17-OHPの高値があり、偽陽性になりやすいためです。

対象疾患の変遷

  • 1977年:フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、ヒスチジン血症、ガラクトース血症の5疾患で開始
  • 1979年:先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)を追加
  • 1988年:先天性副腎過形成症を追加
  • 1993年:ヒスチジン血症を除外(治療しなくても予後が良いと分かったため)
  • 2010年代:タンデムマス法が全国に導入され、有機酸代謝異常症、脂肪酸代謝異常症、尿素サイクル異常症が追加

出題当時の対象はおよそ20疾患です。アミノ酸・有機酸・脂肪酸・糖質(ガラクトース血症)の代謝異常症と、内分泌疾患2つ(先天性甲状腺機能低下症、先天性副腎過形成症)に整理できます。発見頻度が最も高いのは先天性甲状腺機能低下症です。なお出題後には、重症複合免疫不全症や脊髄性筋萎縮症を調べる国の実証事業が始まっています。ただし、出題当時の公的な対象疾患ではありません。

正答の2疾患

フェニルケトン尿症は常染色体劣性遺伝の病気です。フェニルアラニン水酸化酵素の欠損により、フェニルアラニンをチロシンに変えられません。フェニルアラニンが蓄積すると知的障害やけいれんが起こり、メラニン不足による色白・赤毛やネズミ尿臭もみられます。低フェニルアラニン食(治療用ミルク)で発症を防げるため、制度開始当初からの代表的な対象疾患です。

先天性副腎過形成症の大部分(約9割)は21-水酸化酵素欠損症です。コルチゾールとアルドステロンが不足し、ACTHの過剰分泌で副腎アンドロゲンが増えます。その結果、女児では外性器の男性化が起こります。塩喪失型では、生後数週以内に低ナトリウム血症、高カリウム血症、脱水、ショック(副腎クリーゼ)を起こします。男児は外性器に異常がなく見逃されやすいため、スクリーニングの意義が特に大きい疾患です。蓄積する前駆物質の17-OHPを測定します。

対象外の病態との区別

スクリーニングの対象には、次の条件がそろっている必要があります。

  • 無症状の時期に発見できる
  • 放置すると重篤になる
  • 有効な治療がある
  • 安価で信頼できる検査がある

ケトン性低血糖とアセトン血性嘔吐症は、幼児期に誘因があって起こる一過性の病態で、この枠組みに入りません。対照的に、対象疾患である脂肪酸代謝異常症では、ケトン体をつくれない「低ケトン性低血糖」が起こります。この違いは頻出です。

助産実践とのつながり

採血時の要点は次のとおりです。

  • 踵骨を避けて、かかとの内側または外側の縁を穿刺する
  • ろ紙の円を裏まで1回で満たし、重ね付けしない
  • 直射日光を避けて自然乾燥させる

早産児・低出生体重児や輸血を受けた児では、再採血が必要になることがあります。「要精密検査」の連絡があったときは、家族の不安が強くなります。確定診断ではないことを説明し、速やかな受診を支えることが大切です。また、フェニルケトン尿症の女性が妊娠すると、高フェニルアラニン血症が胎児の小頭症や心疾患の原因になります(マターナルPKU)。そのため、妊娠前からの血中濃度管理を支援します。

選択肢の確認

1.ケトン性低血糖:おおむね1歳半〜5歳ころのやせ型の幼児に起こる低血糖です。夕食を十分とらなかった翌朝や、感染症で食事がとれないときなどの空腹がきっかけになります。背景にはグリコーゲンの蓄えと糖新生の予備力の小ささがあり、成長とともに起こらなくなります。新生児期に見つけて予防する病態ではないため、対象ではありません。

2.先天性副腎過形成:正答。本症は1988年から対象に加えられた内分泌疾患です。ろ紙血の17-OHPで発見します。早期にヒドロコルチゾンや鉱質コルチコイドを補充することで、塩喪失による副腎クリーゼでの死亡を防げます。女児の外性器男性化による性別判定の誤りを避けることにもつながります。

3.アセトン血性嘔吐症:自家中毒や周期性嘔吐症とも呼ばれ、2〜10歳ころの子どもに起こります。感染、疲労、精神的ストレスなどを誘因に嘔吐を繰り返し、尿中ケトン体が陽性になります。ブドウ糖を含む輸液などで回復し、年長になると自然に軽快する機能的な病態のため、対象ではありません。

4.フェニルケトン尿症:正答。本症は1977年の制度開始時からの対象疾患で、現在はタンデムマス法で血中フェニルアラニンを測定して発見します。新生児期から低フェニルアラニン食を始めることで、知的障害を防げます。

5.Wilson〈ウイルソン〉病:銅を胆汁へ排泄できず、肝臓・脳・角膜に銅が蓄積する常染色体劣性遺伝の疾患です。治療法(キレート薬、亜鉛製剤)はあります。しかし、発症は多くが幼児期以降で、指標となる血清セルロプラスミンも新生児期には生理的に低値です。新生児期のろ紙血では判定が難しいため、対象ではありません。肝障害、構音障害などの神経症状、カイザー・フライシャー角膜輪で気づかれます。

覚えるポイント

  • 新生児マススクリーニングは、都道府県・指定都市が実施主体で、保護者の同意のもと、生後4〜6日(哺乳後)にかかとのろ紙血で行う
  • 対象はアミノ酸・有機酸・脂肪酸・糖質の代謝異常症と、先天性甲状腺機能低下症・先天性副腎過形成症(およそ20疾患)で、頻度が最も高いのは先天性甲状腺機能低下症
  • 測定指標は、フェニルケトン尿症がフェニルアラニン、先天性甲状腺機能低下症がTSH、先天性副腎過形成症が17-OHP
  • 対象になる条件は「無症状期に発見できる・放置で重篤・有効な治療がある・信頼できる安価な検査がある」
  • ケトン性低血糖・アセトン血性嘔吐症は幼児期の一過性病態、ウィルソン病は幼児期以降に発症する銅代謝異常で、いずれも対象外
  • 新生児聴覚検査や便色カード(胆道閉鎖症)は、マススクリーニングとは別の仕組みの検査

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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