第105回
105PM002|第105回 助産師国家試験 過去問
日常的な喫煙がリスク因子となるのはどれか。
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正解2
正答
2.早産
この問題のポイント
妊娠中の日常的な喫煙が、どの周産期合併症のリスクを高めるかを問う知識問題です。ニコチンによる血管収縮と、一酸化炭素による酸素運搬能の低下という2つの機序を理解していれば判断できます。この機序から、喫煙が胎盤・卵膜・胎児発育に関わる合併症(早産、前期破水、常位胎盤早期剝離、前置胎盤、胎児発育不全など)を増やすことが導けます。ほかの選択肢は、それぞれ喫煙以外に主な成因をもつ病態であることを確認します。
解説
喫煙が妊娠に影響する機序
たばこの煙には多くの有害物質が含まれます。周産期への影響で特に重要なのは、ニコチンと一酸化炭素です。
- ニコチン:交感神経を刺激して血管を収縮させるため、子宮胎盤循環の血流が減少します。
- 一酸化炭素:酸素よりはるかに強くヘモグロビンと結合し、一酸化炭素ヘモグロビン(CO-Hb)をつくって酸素運搬能を下げます。さらに酸素解離曲線を左方へ移動させるため、組織で酸素が放出されにくくなります。
この2つが重なると、胎児は慢性的な低酸素状態に置かれます。胎盤の形成や機能にも影響が及びます。
喫煙がリスク因子となる主な合併症
妊娠中の喫煙との関連が確立している主な合併症は次のとおりです。
- 妊娠初期:流産、異所性妊娠
- 胎盤・卵膜の異常:前置胎盤、常位胎盤早期剝離、前期破水
- 分娩の時期:早産
- 胎児・新生児:胎児発育不全(FGR)、低出生体重児、死産
- 出生後:乳幼児突然死症候群(SIDS)
早産は妊娠22週以降37週未満の分娩を指します。喫煙は、前期破水や常位胎盤早期剝離を増やし、子宮胎盤循環不全から胎児発育不全を招きます。その結果、陣痛や破水から始まる早産と、母児の適応で分娩を早める早産の両方が増えます。
早産の代表的なリスク因子には、次のようなものがあり、喫煙もその1つです。
- 早産の既往
- 子宮頸管長の短縮、円錐切除術後
- 細菌性腟症などの感染
- 多胎妊娠
- 妊娠前のやせ
このうち喫煙は、本人の行動によって変えられる修正可能なリスク因子です。保健指導で介入する意義が大きい点が特徴です。
ほかの選択肢の主な成因
- 子癇:妊娠高血圧症候群を基盤とするけいれん発作です。背景となる妊娠高血圧症候群のリスク因子は、初産、高年、肥満、多胎、既往・家族歴、腎疾患、糖尿病などで、喫煙は含まれません。
- 妊娠貧血:大部分が鉄欠乏性貧血です。循環血漿量の増加による血液の希釈と、胎児・胎盤による鉄需要の増加が主な原因です。
- 子宮復古不全:子宮筋の収縮不良や、胎盤・卵膜の遺残などによって起こります。
実践での活用
助産師は、妊娠届出や母子健康手帳の交付時、妊婦健康診査の場で喫煙状況を確認し、禁煙を支援します。妊娠が分かってからでも、早く禁煙するほどリスクの低減が期待できます。「今さら遅い」と思わせない関わりが大切です。
夫や同居家族の喫煙による受動喫煙も、胎児発育やSIDSに影響します。そのため、家族を含めて支援します。また、ニコチンは母乳中に移行するため、産後の再喫煙の防止も継続して取り組む課題です。
選択肢の確認
1.子癇:妊娠20週以降(分娩中・産褥期を含む)に初めて起こるけいれん発作のうち、てんかんなど他の原因が否定されるものを指します。妊娠高血圧症候群を背景に、脳血管の自動調節能の破綻や脳浮腫によって生じます。リスク因子は妊娠高血圧症候群と共通で、初産、高年、肥満、多胎妊娠、既往歴などであり、喫煙は含まれません。疫学的には、喫煙者のほうが妊娠高血圧腎症の発症が少ないという報告もあります。ただし、それで喫煙の有害性が小さくなるわけではありません。「喫煙→血管収縮→高血圧」と連想して選ばないよう注意します。
2.早産:正答。喫煙は、ニコチンによる子宮胎盤血流の減少と、一酸化炭素による低酸素を通じて作用します。その結果、前期破水、常位胎盤早期剝離、胎児発育不全が増え、妊娠22週以降37週未満での分娩が増加します。禁煙によってリスクを下げられる修正可能な因子なので、妊娠初期からの保健指導の重点項目になります。
3.妊娠貧血:日本産科婦人科学会は、妊娠中にヘモグロビン値11 g/dL未満、またはヘマトクリット値33%未満の場合を貧血としています。その大部分は、血液の希釈と鉄需要の増大による鉄欠乏性貧血です。喫煙者では、一酸化炭素ヘモグロビンによる低酸素を補うために赤血球が増え、ヘモグロビン値はむしろ高めに出る傾向があります。そのため喫煙は、貧血の原因ではなく、貧血を見かけ上隠してしまう要因として理解しておきます。
4.子宮復古不全:分娩後に子宮が非妊時の状態へ戻る過程が遅れる状態です。主な原因は次のとおりで、喫煙は主な要因として挙げられていません。胎盤・卵膜の遺残、多胎妊娠・羊水過多・巨大児による子宮筋の過度伸展、遷延分娩による子宮筋の疲労、子宮筋腫、膀胱や直腸の充満、産褥期の子宮内感染などです。予防には、早期離床、授乳によるオキシトシン分泌の促進、排尿・排便の管理が有効です。「子宮収縮を妨げる要因」としてまとめて覚えると整理しやすくなります。
覚えるポイント
- 妊娠中の喫煙で増える主な合併症は、流産、異所性妊娠、前置胎盤、常位胎盤早期剝離、前期破水、早産、胎児発育不全・低出生体重児、死産、SIDSです。
- 機序は2つです。ニコチンは血管収縮で子宮胎盤血流を減らし、一酸化炭素はCO-Hbの形成と酸素解離曲線の左方移動で酸素供給を下げます。
- 早産は妊娠22週以降37週未満の分娩です。リスク因子は、早産の既往、頸管長の短縮・円錐切除後、細菌性腟症などの感染、多胎、やせ、喫煙です。
- 妊娠高血圧症候群(子癇を含む)のリスク因子は、初産、高年、肥満、多胎、既往・家族歴、腎疾患、糖尿病などで、喫煙は含まれません。
- 妊娠貧血の基準はHb 11 g/dL未満またはHt 33%未満で、多くは鉄欠乏性です。喫煙者ではHbが高めに出やすい点に注意します。
- 子宮復古不全の原因は、子宮筋の過伸展・疲労、胎盤・卵膜の遺残、膀胱・直腸の充満、感染などです。促進策は早期離床、授乳、排尿の管理です。
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