第105回

105PM006|第105回 助産師国家試験 過去問

妊娠中期以降における羊水の機能で正しいのはどれか。

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正解3

正答

3.胎児の運動空間の確保

この問題のポイント

羊水の生理的な機能を問う問題です。鍵は、羊水が胎児のために担う働きと、胎盤・下垂体・脱落膜が担う機能を区別できるかどうかです。羊水が少ないと何が起こるか(拘縮、肺低形成、臍帯圧迫)から逆に考えると、羊水の働きを確実に思い出せます。

解説

妊娠中期以降の羊水の成り立ち

妊娠初期の羊水は、母体血漿に由来する成分が羊膜や角化前の胎児皮膚を通って移行したものが主体です。妊娠中期以降は胎児の腎機能が発達し、胎児尿が羊水の主な供給源になります。胎児肺から分泌される肺胞液も加わります。羊水を除く主な経路は胎児の嚥下で、ほかに羊膜を介して胎盤表面の胎児血管へ吸収される経路もあります。この産生と吸収の釣り合いで羊水量が保たれます。羊水量は妊娠30週台前半ごろに最大となり、その後は少しずつ減ります。

設問が「妊娠中期以降」と限定しているのは、この時期に羊水量が増えて胎児が活発に動くようになり、胎児の排尿・嚥下・呼吸様運動が羊水循環の中心になるためです。

羊水の主な機能

  • 物理的保護:外力や子宮収縮の圧を分散させ、胎児への衝撃を和らげます。
  • 運動空間の確保:胎児が四肢を動かし体位を変えられる空間を保ち、筋骨格系の正常な発育を支えます。
  • 臍帯圧迫の防止:臍帯が胎児と子宮壁の間に挟まれにくくなり、臍帯の血流が守られます。
  • 肺と消化管の発育:呼吸様運動で羊水が肺に出入りすることが肺の発育に、羊水を嚥下することが消化管の発育に関わります。
  • その他:温度を一定に保つこと、胎児と羊膜の癒着の防止、抗菌作用があります。
  • 分娩時の働き:胎胞をつくって子宮頸管の開大を助け、破水後は産道を洗い流して滑らかにします。

羊水量の異常から考える

羊水の役割は、羊水が少ないと何が起こるかを考えると整理しやすくなります。羊水が極端に少ないと、子宮壁が胎児を直接圧迫します。その結果、内反足などの四肢の変形、関節拘縮、特有の顔貌が生じます。さらに胸郭が広がりにくく、肺への羊水の出入りも減るため、肺低形成を来します。これらをまとめてPotterシークエンスと呼び、胎児尿がつくられない腎無形成が典型的な原因です。また臍帯が圧迫されやすくなり、胎児心拍数陣痛図では変動一過性徐脈が出やすくなります。拘縮や変形が起こるのは胎児が動く空間を失うためであり、このことが選択肢3を羊水の機能とする根拠になります。

助産師は妊婦健診で、子宮底長の推移、胎動の自覚、超音波での羊水量の評価を合わせて、羊水の異常を早く見つけます。羊水過少では胎児発育不全、胎盤機能不全、前期破水がないかを確認します。羊水過多では、胎児が羊水を飲み込めない病態(消化管閉鎖、神経筋疾患など)や母体の糖代謝異常を念頭に置きます。羊水過多の産婦が破水したときは、臍帯脱出や常位胎盤早期剝離が起こりうるため、破水直後に胎児心拍を確認することが重要です。なお羊水は弱アルカリ性で、酸性の腟分泌物と区別できます。この性質を利用し、破水の判定ではBTB試験紙が青く変わるかを確認します。

選択肢の確認

1.臍帯下垂の予防:臍帯下垂とは、卵膜が破れていない状態で、臍帯が胎児の先進部より下方(子宮口側)にあることです。破水後に同じ状態になれば臍帯脱出と呼びます。危険因子は、羊水過多、骨盤位や横位、早産児などの小さな児、児頭が骨盤入口に固定していない状態、多胎などです。羊水が多いと臍帯が浮いて動き、先進部の脇へ入り込みやすくなるため、羊水はむしろ臍帯下垂を起こしやすくする因子です。羊水の働きとして正しいのは臍帯の「圧迫」を防ぐことで、「下垂」を防ぐことと取り違えないよう注意します。

2.プロラクチンの産生:プロラクチンは下垂体前葉でつくられるホルモンで、妊娠中はエストロゲンの刺激を受けて母体の血中濃度が上がります。子宮の脱落膜でも産生されます。羊水中には高い濃度のプロラクチンが含まれますが、これは主に脱落膜でつくられたものが移行したもので、羊水自体がホルモンを産生するわけではありません。「羊水に含まれる」と「羊水が産生する」は区別して覚えます。

3.胎児の運動空間の確保:正答。羊水は胎児の周囲に液体の空間を保ち、胎児が四肢を曲げ伸ばしし、体位を変えられるようにしています。この運動が筋肉・骨格・関節の発育を促します。羊水過少で関節拘縮や四肢の変形が起こることが、この機能の裏付けです。

4.胎盤でのガス交換の補助:胎児のガス交換は胎盤で行われ、絨毛間腔を流れる母体血と、絨毛内の胎児毛細血管の血液との間で、拡散によって酸素と二酸化炭素がやりとりされます。この過程に羊水は関与しません。胎児の肺は液体で満たされており、呼吸様運動で羊水が肺に出入りしてもガス交換は起こりません。その意義は肺の発育にあります。ガス交換は胎盤の機能、肺の発育の補助は羊水の機能と分けて覚えます。

覚えるポイント

  • 羊水の機能は、衝撃の緩和、胎児の運動空間の確保、臍帯圧迫の防止、肺・消化管の発育、保温、癒着防止、抗菌作用、分娩時の胎胞形成と産道の洗浄です。
  • 妊娠中期以降の羊水の主な供給源は胎児尿、主な除去経路は胎児の嚥下です。
  • 羊水過少(100mL以下)の主な原因は、腎無形成、尿路閉塞、破水、胎盤機能不全です。肺低形成、四肢の拘縮・変形、臍帯圧迫による変動一過性徐脈を来します。
  • 羊水過多(800mLを超える)の主な原因は、消化管閉鎖や神経筋疾患による嚥下障害、母体の糖尿病、双胎間輸血症候群の受血児です。早産、胎位異常、破水時の臍帯脱出・常位胎盤早期剝離、分娩後の弛緩出血に注意します。
  • 超音波では、最大羊水深度2cm以下またはAFI 5cm以下で羊水過少、最大羊水深度8cm以上で羊水過多と判断します。
  • ガス交換は胎盤、プロラクチンの産生は下垂体前葉と脱落膜の機能であり、羊水の機能ではありません。

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