第105回

105PM007|第105回 助産師国家試験 過去問

乳汁分泌を抑制するための薬剤の使用が禁忌となるのはどれか。

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正解2

正答

2.妊娠高血圧症候群

この問題のポイント

産褥期の乳汁分泌抑制に使う薬剤と、その副作用からくる禁忌を問う問題です。用いられるのはカベルゴリンやブロモクリプチンで、どちらも麦角アルカロイド系のドパミン作動薬です。麦角系の薬には血管を収縮させて血圧を上げる作用があります。「麦角系=血管を締める」と結びつけられれば、高血圧を本態とする病態が禁忌だと判断できます。

解説

乳汁分泌の仕組み

乳汁の産生は下垂体前葉のプロラクチンが担い、射乳(乳汁を押し出す働き)は下垂体後葉のオキシトシンが担います。妊娠中は、胎盤由来のエストロゲンとプロゲステロンが乳汁の産生を抑えています。胎盤娩出でこれらが急に減るとプロラクチンの作用が表に出て、乳汁分泌が始まります。

プロラクチンの分泌は、視床下部から出るドパミン(プロラクチン抑制因子)によって常に抑えられています。乳頭への吸啜刺激はこの抑制を外し、プロラクチンとオキシトシンの分泌を促します。

乳汁分泌抑制薬の作用と禁忌

この仕組みを利用した薬が、カベルゴリン(カバサール)とブロモクリプチン(パーロデル)です。ドパミンの代わりに下垂体前葉のドパミンD2受容体を刺激し、プロラクチンの分泌を抑えます。

どちらも麦角アルカロイドの誘導体で、麦角系に共通する血管収縮作用をもちます。産褥期に投与した例では、次のような重大な副作用が報告されています。

  • 血圧上昇、頭痛
  • 痙攣
  • 脳血管障害
  • 心筋梗塞

このため添付文書では、妊娠高血圧症候群の患者と産褥期高血圧の患者が禁忌とされています。

妊娠高血圧症候群は、妊娠時に高血圧(収縮期140mmHg以上または拡張期90mmHg以上)を認める病態の総称です。妊娠高血圧腎症、妊娠高血圧、加重型妊娠高血圧腎症、高血圧合併妊娠の4病型に分けられます。

この病態は分娩が終わってもすぐには正常化しません。産褥早期に血圧が再上昇したり、分娩後に子癇(産褥子癇)や脳出血を起こしたりすることがあります。血管内皮障害と血管攣縮を基盤にもつ時期に血管収縮薬を加えると、こうした重篤な合併症を誘発しかねません。これが禁忌とされる理由です。

臨床での活かし方

乳汁分泌の抑制が必要になるのは、たとえば次のような場合です。

  • 死産や新生児死亡
  • 母体の治療薬が授乳に適さない場合
  • HIV感染などで母乳を与えない選択をした場合

助産師は投与前に、妊娠中の血圧の経過、現在の血圧、頭痛・視覚症状・上腹部痛の有無を確認し、異常があれば医師に報告します。投与後も血圧測定と症状の観察を続けます。

薬剤を使えない場合は、非薬物的な方法で対応します。乳房・乳頭への刺激を避け、張って痛むときは冷罨法を行い、搾乳は苦痛を和らげる程度の少量にとどめます。死産などでは、グリーフケアの視点で母親の気持ちに寄り添いながら説明することも欠かせません。

選択肢の確認

1.Basedow〈バセドウ〉病:甲状腺機能亢進症は、カベルゴリンやブロモクリプチンの禁忌に挙げられていません。産後数か月は甲状腺の自己免疫が動きやすく、この病態の増悪や無痛性甲状腺炎が起こりやすい時期です。ただし抗甲状腺薬を内服していても、用量と児の状態に配慮すれば授乳を続けられることが多く、乳汁分泌抑制薬を使えない理由にはなりません。放射性ヨウ素を用いる検査・治療では授乳の中止が必要になるため、その点と取り違えないようにします。

2.妊娠高血圧症候群:正答。麦角系ドパミン作動薬は血管収縮作用で血圧を上昇させ、産褥期の痙攣(子癇)、脳血管障害、心筋梗塞などを誘発するおそれがあります。そのため添付文書上、この病態の患者は禁忌です。分娩後に血圧が落ち着いて見えても産褥早期に再上昇することがあるので、妊娠中の経過として必ず把握しておきます。同じ理由で産褥期高血圧の患者も禁忌です。

3.産後うつ病:抑うつなどの精神症状は、乳汁分泌抑制薬の禁忌として定められていません。ドパミン作動薬には幻覚などの精神症状の副作用があるため、投与後の観察は必要です。また、抗精神病薬などドパミン受容体遮断作用のある薬とは作用が打ち消し合う点にも注意します。授乳を続けるかは、抗うつ薬の母乳移行、母親の意向、睡眠の確保などを踏まえて個別に判断します。薬剤の禁忌とは別の問題として扱います。

4.妊娠糖尿病:糖代謝異常は、乳汁分泌抑制薬の禁忌ではありません。この病態は妊娠中に初めて発見・発症した、明らかな糖尿病には至らない糖代謝異常です。胎盤ホルモンによるインスリン抵抗性の増大が背景にあるため、多くは分娩後に耐糖能が改善します。インスリンは授乳中も使用できます。母乳育児は母体の将来の2型糖尿病の発症リスク低下との関連が報告されており、むしろ授乳を積極的に支援したい対象です。産後は75gOGTTで耐糖能を再評価します。

覚えるポイント

  • 乳汁分泌抑制薬はカベルゴリンとブロモクリプチンです。どちらも麦角系のドパミンD2受容体作動薬で、下垂体前葉のプロラクチン分泌を抑えます。
  • 禁忌の核心は血管収縮です。妊娠高血圧症候群と産褥期高血圧の患者には禁忌で、痙攣、脳血管障害、心筋梗塞のおそれがあります。カベルゴリンは心臓弁膜症も禁忌です。
  • 乳汁の産生はプロラクチン(前葉)、射乳はオキシトシン(後葉)が担います。ドパミンはプロラクチンを抑え、ドパミン遮断薬(メトクロプラミド、スルピリド、抗精神病薬など)はプロラクチンを上げます。
  • 妊娠高血圧症候群の基準は140/90mmHg以上で、4病型に分かれます。分娩後も血圧の再上昇と産褥子癇に注意し、頭痛・視覚症状・上腹部痛を観察します。
  • 子宮収縮薬のメチルエルゴメトリンも麦角系で血管収縮作用をもつため、高血圧のある褥婦では血圧上昇に注意します。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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