第105回
105PM023|第105回 助産師国家試験 過去問
胎児期の性器形成で正しいのはどれか。
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正解2
正答
2.尿生殖溝の癒合にはアンドロゲンが関わる。
この問題のポイント
胎児の性分化を「染色体→性腺→内性器→外性器」の順に理解しているかを問う問題です。判断の鍵は3つあります。SRY遺伝子がY染色体上にあること、ウォルフ管とミュラー管がそれぞれどちらの性の内性器になるか、外性器の男性化(尿生殖溝の閉鎖)をアンドロゲンが担うこと、です。
解説
胎児の性器は、最初は男女共通の原基から出発します。そこから段階ごとに男性型へ進むか女性型へ進むかが決まります。この順序に沿って整理すると、各選択肢を判断できます。
性腺の分化:SRY遺伝子
発生初期の性腺は、精巣にも卵巣にもなりうる未分化性腺です。Y染色体の短腕にあるSRY遺伝子は、精巣決定因子をつくります。この遺伝子が働くと、未分化性腺は精巣へ分化します。SRY遺伝子がなければ、性腺は卵巣へ向かいます。つまり、性腺の性を決めるのは「Y染色体上のSRY遺伝子があるかないか」です。
内性器の分化:2対の管の行方
胎児には男女ともに、ウォルフ管(中腎管)とミュラー管(中腎傍管)が1対ずつあります。
- 精巣ができた場合:セルトリ細胞が分泌する抗ミュラー管ホルモン(AMH)がミュラー管を退縮させます。ライディッヒ細胞が分泌するテストステロンは、ウォルフ管を精巣上体・精管・精嚢・射精管へ分化させます。
- 精巣がない場合(女性):AMHがないのでミュラー管が残り、テストステロンがないのでウォルフ管は退縮します。ミュラー管のうち、左右が離れたままの頭側部分は卵管になります。尾側で左右が正中で癒合した部分は、子宮と腟の上部になります。腟の下部は尿生殖洞に由来します。
女性型への発生には卵巣のホルモンは必要ありません。「AMHとアンドロゲンが働かなければ女性型になる」と整理しておくと、応用問題にも対応できます。
外性器の分化:アンドロゲン
外性器も、男女共通の原基である生殖結節、尿道ひだ、陰唇陰嚢隆起から形成されます。左右の尿道ひだの間には尿生殖溝が開いています。テストステロンは標的組織で5α還元酵素によりジヒドロテストステロン(DHT)に変換され、このDHTが外性器を男性化させます。
- 男性:生殖結節は陰茎になります。左右の尿道ひだは正中で癒合して尿生殖溝を閉じ、陰茎の中を通る尿道になります。陰唇陰嚢隆起は癒合して陰嚢になります。
- 女性:アンドロゲンが作用しないので癒合は起こりません。生殖結節は陰核、尿道ひだは小陰唇、陰唇陰嚢隆起は大陰唇になります。尿生殖溝は閉じずに腟前庭として残ります。
これらの分化は、胎芽期(妊娠10週未満)から妊娠初期のうちに進みます。
臨床・助産の場面でのつながり
この仕組みは、新生児の外性器を観察する場面に直結します。
- 46,XXの胎児が先天性副腎過形成(21-水酸化酵素欠損症)で副腎アンドロゲンに過剰にさらされると、陰核肥大や陰唇の癒合といった外性器の男性化が起こります。ただし、子宮などの内性器は女性型です。この疾患は新生児マススクリーニングの対象です。
- 46,XYのアンドロゲン不応症では、精巣からAMHが出るため子宮はできません。一方でアンドロゲンが作用しないため、外性器は女性型になります。
- 尿道ひだの癒合が不完全だと、外尿道口が陰茎の腹側に開く尿道下裂になります。
いずれも「尿生殖溝の癒合にはアンドロゲンが必要」という原理で説明できます。
選択肢の確認
1.男女ともにSRY遺伝子を持つ。:SRY遺伝子はY染色体の短腕にある遺伝子です。Y染色体をもつ男性(46,XY)だけが持ち、46,XXの女性は持ちません。この遺伝子は性腺を精巣へ分化させるスイッチにあたり、男女ともに持っているなら性腺に性差は生じません。SRY遺伝子がX染色体に移った46,XX男性や、SRY遺伝子の異常で女性型を示す46,XYの例があることも、SRYが精巣分化を決めていることを裏づけます。男女がともに持っているのは、ウォルフ管・ミュラー管という内性器の原基のほうです。
2.尿生殖溝の癒合にはアンドロゲンが関わる。:正答。尿生殖溝は、左右の尿道ひだに挟まれた溝です。男性では、テストステロンから変換されたジヒドロテストステロンの作用で尿道ひだが正中で癒合し、溝が閉じて陰茎の尿道になります。女性の胎児でも、先天性副腎過形成などで過剰なアンドロゲンにさらされると陰唇の癒合が起こります。このことからも、癒合を進めているのがアンドロゲンであると分かります。
3.Müller〈ミュラー〉管が精巣上体に分化する。:精巣上体に分化するのはウォルフ管で、精管・精嚢・射精管もウォルフ管に由来します。男性のミュラー管は、セルトリ細胞が分泌するAMHによって退縮します。痕跡として精巣垂や前立腺小室が残る程度です。ミュラー管は、女性で卵管・子宮・腟上部になる管です。2つの管と男女の対応を逆に覚えていると選んでしまう選択肢です。
4.卵管、子宮および腟は妊娠22週ころに形成される。:卵管・子宮・腟のもとになるミュラー管は胎芽期に現れます。左右が癒合して、妊娠初期のうちに子宮や腟の原型ができます。妊娠22週は妊娠中期で、性器が形成される時期ではありません。22週は、流産と早産を分ける週数であり、人工妊娠中絶ができる期間(22週未満)の基準でもあります。この「22週」という数字を性器形成の時期と取り違えないようにします。
5.Wolff〈ウォルフ〉管の癒合部分が子宮の一部になる。:左右が正中で癒合して子宮と腟上部になるのはミュラー管で、ウォルフ管ではありません。女性のウォルフ管はほぼ退縮し、卵巣上体やガートナー管として痕跡が残る程度です。ミュラー管の癒合や、癒合した後の中隔の吸収がうまくいかないと、重複子宮・双角子宮・中隔子宮などの子宮奇形が生じます。この知識は、妊娠中の胎位異常や流早産のリスク評価にもつながります。
覚えるポイント
- 性分化の順序は「染色体(SRYの有無)→性腺(精巣か卵巣か)→内性器→外性器」です。SRY遺伝子はY染色体上にあり、男性だけが持ちます。
- 精巣の2種類の細胞の働きを区別します。セルトリ細胞はAMHを出してミュラー管を退縮させ、ライディッヒ細胞はテストステロンを出してウォルフ管を精巣上体・精管・精嚢・射精管へ分化させます。
- 女性では、ミュラー管の癒合しない部分が卵管に、癒合した部分が子宮と腟上部になり、ウォルフ管は退縮します。AMHとアンドロゲンがなければ女性型になります。
- 外性器の男性化を担うのはDHTです。生殖結節は陰茎/陰核、尿道ひだは陰茎の尿道/小陰唇、陰唇陰嚢隆起は陰嚢/大陰唇になり、尿生殖溝は女性では腟前庭として残ります。
- 臨床との対応を押さえます。46,XXの先天性副腎過形成では外性器が男性化し、46,XYのアンドロゲン不応症では外性器が女性型で子宮がありません。尿道ひだの癒合不全は尿道下裂、ミュラー管の癒合不全は重複子宮・双角子宮です。
- 性器の分化は妊娠初期に進みます。22週は流産と早産の境界、人工妊娠中絶ができる期間(22週未満)の基準として覚える数字です。
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