第105回

105PM030|第105回 助産師国家試験 過去問

2つ選択

妊娠に伴う変化で正しいのはどれか。2つ選べ。

解答・解説を見る

正解1・2

正答

1.心拍出量が増加する。
2.機能的残気量が減少する。

この問題のポイント

妊娠による母体の生理的変化について、循環・呼吸・代謝・血液の4つの系統で「増えるか減るか」を問う問題です。判断の鍵は4つの機序です。循環血液量の増加、増大した子宮による横隔膜の挙上、胎盤ホルモンによる脂質代謝の変化、血漿量の増加による血液希釈です。機序から変化の方向を導ければ、丸暗記に頼らずに判定できます。

解説

循環:心拍出量の増加

妊娠すると循環血液量が増えます。子宮と胎盤へ血流を送るためと、分娩時の出血に備えるためです。循環血液量は妊娠32週前後に最大となり、非妊時のおよそ4〜5割増に達します。

心拍出量は「一回拍出量×心拍数」で決まります。妊娠中は静脈還流が増えるので一回拍出量が増え、心拍数も1分あたり10〜15回程度増えます。その結果、心拍出量は妊娠初期から増え始め、非妊時の3〜5割増まで上がります。一方、プロゲステロンなどの作用で末梢血管抵抗が下がるため、血圧は妊娠中期にやや低下します。

臨床では次の2点が重要です。

  • 妊娠後期に仰臥位をとると、子宮が下大静脈を圧迫して静脈還流が減ります。心拍出量が落ちて仰臥位低血圧症候群を起こすことがあるため、左側臥位に体位を変えます。
  • 心疾患合併妊婦では、循環血液量が最大となる妊娠後期、分娩時、分娩直後に心負荷が強まります。分娩直後は、子宮収縮で子宮の血液が体循環に戻り、下大静脈の圧迫も解除されるためです。これらの時期は特に注意して観察します。

呼吸:機能的残気量の減少

増大した子宮により、横隔膜は約4cm挙上します。機能的残気量は、安静時の呼気の終わりに肺に残っている空気量で、予備呼気量と残気量の和です。横隔膜が押し上げられるとこの両方が減るため、機能的残気量は減少します。

一方、プロゲステロンが呼吸中枢を刺激するため、一回換気量は増えます。呼吸数はほぼ変わらないので、分時換気量は増加します。胸郭が横に広がる(肋骨下角が開く)ことで容積の減少を補うため、肺活量はほとんど変わりません。

過換気の結果、動脈血二酸化炭素分圧は30mmHg前後に低下します。腎臓での重炭酸イオンの排泄が増えて代償され、代償性の呼吸性アルカローシスとなります。母体のCO2分圧が低いと、胎児から母体へCO2が移りやすくなります。

機能的残気量は、無呼吸時に体内に蓄えられた酸素でもあります。妊婦は機能的残気量が小さく、しかも酸素消費量が増えています。そのため全身麻酔の導入時などに低酸素血症に陥りやすく、これが臨床上の要点です。

代謝:脂質の上昇

妊娠前半は、母体に脂肪を蓄える同化期です。妊娠後半は、ヒト胎盤性ラクトゲン(hPL)などの作用で脂肪分解が進む異化期です。母体は脂肪をエネルギー源として使い、ブドウ糖を胎児に回します。さらにエストロゲンが肝臓での中性脂肪の合成を促します。

これらにより、中性脂肪は妊娠後期に非妊時の2〜3倍程度まで上がり、総コレステロールも上昇します。hPLにはインスリン拮抗作用もあります。妊娠後半にインスリン抵抗性が強まることと合わせて覚えます。

血液:希釈と白血球の増加

血漿量の増加が赤血球量の増加を上回るため、血液は希釈されます。その結果、次の値が低下します。

  • 赤血球系:ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値
  • 蛋白:血清総蛋白、アルブミン濃度

アルブミンが低下すると膠質浸透圧が下がり、これが妊婦に浮腫が起こりやすい一因になります。

白血球は好中球を中心に増加し、分娩時にはさらに高くなります。そのため、白血球の増加だけで感染と判断せず、体温や局所所見なども合わせて評価します。

また、フィブリノゲンなどの凝固因子が増え、血液は固まりやすい状態(過凝固)になります。分娩時の止血に備える変化ですが、血栓症のリスクも高まります。

選択肢の確認

1.心拍出量が増加する。:正答。循環血液量の増加で一回拍出量が増え、心拍数も上がるため、心拍出量は非妊時の3〜5割増になります。妊娠後期に仰臥位をとると、下大静脈の圧迫で一時的に低下することがあります。ただしこれは体位による例外で、妊娠全体の変化としては増加です。

2.機能的残気量が減少する。:正答。機能的残気量は予備呼気量と残気量の和で、横隔膜の挙上によって両方が減るため低下します。一回換気量と分時換気量は増え、肺活量はほぼ変わりません。これらと混同しないよう、量ごとに整理しておきます。

3.血中中性脂肪濃度が減少する。:妊娠後半は、hPLによる脂肪分解とエストロゲンによる肝臓での合成促進により、中性脂肪は非妊時の2〜3倍程度まで上昇します。変化の方向が逆なので誤りです。総コレステロールも上昇するため、妊娠中の脂質の検査値は非妊時の基準のままでは評価できません。

4.末梢血中白血球数が減少する。:妊娠中の白血球数は好中球を中心に増え、分娩時にはさらに増加するため、減少とする記述は誤りです。血液希釈で濃度が下がるのは赤血球系の値と血漿蛋白であり、白血球は希釈の影響を上回って増えます。ここが取り違えやすい点です。白血球の増加は生理的な変化でもあるため、感染の判断には体温などの所見を合わせて用います。

5.血清アルブミン濃度が増加する。:血漿量が大きく増えて血液が希釈されるため、血清アルブミン濃度は非妊時より低下します。アルブミンの総量が大きく減るのではなく、主に希釈によって濃度が下がります。低下に伴って膠質浸透圧が下がり、浮腫の一因になります。一方、フィブリノゲンなどの凝固因子は増える蛋白です。「妊娠中は血漿蛋白がすべて減る」と覚えないよう注意します。

覚えるポイント

  • 妊娠で増えるもの:循環血液量(32週前後に最大、4〜5割増)、心拍出量(3〜5割増)、心拍数、一回換気量、分時換気量、酸素消費量、白血球、中性脂肪、コレステロール、フィブリノゲン
  • 妊娠で減るもの:機能的残気量、予備呼気量、残気量、動脈血CO2分圧、末梢血管抵抗、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値、血清アルブミン濃度
  • ほぼ変わらないもの:呼吸数、肺活量(胸郭が横に広がって補うため)
  • 機能的残気量=予備呼気量+残気量。横隔膜の挙上で減るため、妊婦は無呼吸時に低酸素になりやすい
  • 血液希釈で「濃度」が下がるのはHbやアルブミン。白血球、脂質、凝固因子は希釈を上回って上昇する
  • 妊娠後期の仰臥位低血圧症候群は左側臥位で対応する。心疾患合併妊婦は妊娠後期・分娩時・分娩直後の心負荷に注意する

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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