第105回

105PM031|第105回 助産師国家試験 過去問

2つ選択

新生児の体温調節で正しいのはどれか。2つ選べ。

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正解4・5

正答

4.代謝性アシドーシスの原因として低体温がある。
5.体表面積が体積に比べて大きく熱喪失が大きい。

この問題のポイント

新生児が「熱を失いやすく、熱をつくる手段が限られている」ことを、体格・皮膚・産熱のしくみから理解しているかを問う問題です。判断の鍵は次の3点です。体積に比べて体表面積が大きいこと、熱産生はふるえではなく褐色脂肪組織による非ふるえ熱産生が中心であること、低体温が酸素消費の増大と末梢循環不全を通じて代謝性アシドーシスを招くことです。発汗機能の未熟さが低体温と高体温のどちらにつながるかも、取り違えやすいポイントです。

解説

熱が失われやすい理由

体が小さいほど、体積に対する体表面積の比は大きくなります。新生児は熱をつくる体の量に比べて熱が逃げる面が広く、皮下脂肪が薄いため断熱性も低く、全身に占める頭部の割合も大きいです。早産児ではさらに角質層が薄く、皮膚からの水分蒸発(不感蒸泄)による熱喪失が大きくなります。

熱喪失の経路は4つあり、それぞれに対応するケアがあります。

  • 蒸発:出生直後の羊水でぬれた皮膚や沐浴後に起こります。温めたタオルで速やかに拭き、ぬれたタオルは取り除きます。
  • 伝導:冷たい体重計・処置台・聴診器・手に触れると熱が奪われます。器具や手をあらかじめ温めます。
  • 対流:空調の風や人の出入りによる気流で熱が奪われます。気流を避け、保育器の窓の開閉は最小限にします。
  • 放射:直接触れていない冷たい窓や外壁に向かって熱が逃げます。コットや保育器を窓際から離します。

熱をつくるしくみ

成人は寒冷時に骨格筋のふるえで熱をつくりますが、新生児ではふるえはほとんどみられません。熱産生の中心は褐色脂肪組織での非ふるえ熱産生です。寒冷刺激で交感神経からノルアドレナリンが放出されると、褐色脂肪細胞のミトコンドリアにある脱共役たんぱく質(UCP1、サーモゲニン)が働きます。その結果、脂肪酸の酸化で得たエネルギーがATPの合成に使われず、熱として放出されます。褐色脂肪組織は肩甲骨の間、頸部、腋窩、縦隔、腎臓・副腎の周囲に分布し、妊娠後期に蓄積が進みます。そのため早産児や胎児発育不全の児では少なくなります。この産熱は酸素とエネルギーを消費するため、低酸素や低血糖の状態では十分に働きません。

低体温がもたらすもの

寒冷刺激が続くと、体温を保つために酸素消費量とブドウ糖消費量が増え、同時に末梢血管が収縮します。組織が低酸素になると嫌気性代謝が進んで乳酸が蓄積し、代謝性アシドーシスとなります。ブドウ糖の消費が増えるため、低血糖も起こします。低酸素とアシドーシスは肺血管も収縮させます。その結果、肺血管抵抗が上がって動脈管や卵円孔を介した右左短絡が生じ、新生児遷延性肺高血圧症の誘因になります。低酸素はさらに産熱を妨げるので、低体温が低体温を呼ぶ悪循環に陥ります。

大切なのは、体温計の値が正常でも、産熱によって体温を「保っている」寒冷ストレスの段階で、すでに酸素とエネルギーを余分に消費していることです。そこで看護・助産の目標は、酸素消費量が最小のまま体温を正常に保てる中性温度環境に児を置くことになります。腋窩温は36.5〜37.5℃を目安に観察します。出生直後の保温は新生児蘇生法(NCPR)の初期処置にも含まれており、分娩室の室温調整、ラジアントウォーマーの予熱、皮膚の乾燥、早期母子接触中の観察が実践の基本です。

選択肢の確認

1.低出生体重児は褐色脂肪組織が多い。:褐色脂肪組織は妊娠後期に蓄えられるため、在胎週数の短い早産児や、子宮内で栄養が不足した胎児発育不全の児では少なく、記述は逆です。正しくは「低出生体重児は褐色脂肪組織が少なく、非ふるえ熱産生の能力が低いため低体温になりやすい」です。皮下脂肪やグリコーゲンの蓄えも乏しいため、低出生体重児は低体温と低血糖が重なりやすい点も押さえておきます。

2.発汗機能が未熟で低体温になりやすい。:発汗は熱を体外へ逃がすしくみなので、その未熟さは高温環境で熱を逃がせず、うつ熱(高体温)を起こしやすいことにつながります。着せすぎ、室温や保育器温度の上げすぎ、光線療法中などが注意の場面です。早産児の皮膚からの水分蒸発は熱喪失の原因になりますが、発汗とは別のしくみであり、両者を混同しないようにします。

3.熱産生は主に筋収縮による震えによって行う。:骨格筋のふるえによる熱産生が主体になるのは成人で、新生児ではふるえはほとんどみられず、褐色脂肪組織での非ふるえ熱産生が中心です。したがって「ふるえていないから寒くない」とは判断できません。皮膚温の低下、末梢の冷感やチアノーゼ、活気の低下、哺乳力の低下などで寒冷ストレスを評価します。

4.代謝性アシドーシスの原因として低体温がある。:正答。寒冷刺激で酸素消費量が増える一方、末梢血管が収縮して組織が低酸素になるため、嫌気性代謝で乳酸が蓄積し、代謝性アシドーシスを生じます。アシドーシスは肺血管を収縮させて低酸素血症を悪化させ、低体温をさらに進める悪循環をつくります。新生児の代謝性アシドーシスをみたときは、仮死や感染症などとともに低体温も原因として評価します。

5.体表面積が体積に比べて大きく熱喪失が大きい。:正答。体が小さいほど体積に対する体表面積の比が大きく、熱をつくる体の量に比べて熱の逃げる面が広くなります。皮下脂肪が薄く、頭部の割合が大きいことも加わり、新生児は環境温度の影響を強く受けます。低出生体重児ほどこの傾向は強くなります。

覚えるポイント

  • 新生児が熱を失いやすい理由は、体積に比べて体表面積が大きいこと、皮下脂肪が薄いこと、早産児では皮膚が薄く水分蒸発が多いことです。熱喪失の経路は蒸発・伝導・対流・放射の4つで、出生直後はまず皮膚を拭いて乾かします。
  • 熱産生は褐色脂肪組織による非ふるえ熱産生が中心です(ノルアドレナリン→UCP1)。ふるえはほとんどありません。
  • 褐色脂肪組織は妊娠後期に蓄積されるため、低出生体重児では少なくなります。
  • 発汗機能の未熟さは高体温(うつ熱)の原因であり、低体温の原因ではありません。
  • 低体温は酸素消費増大、低血糖、代謝性アシドーシス、肺血管収縮(遷延性肺高血圧)を招き、悪循環に陥ります。
  • 中性温度環境は、酸素消費量が最小で体温を正常に保てる環境温度です。腋窩温36.5〜37.5℃を目安に観察します。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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