第105回
105PM034|第105回 助産師国家試験 過去問
生後15分の新生児。在胎39週0日、Apgar〈アプガー〉スコア1分後8点、5分後8点であった。新生児蘇生法〈NCPR〉としてルーチンケアを行った後、インファントラジアントウォーマー下で観察を継続していたところ、生後12分ころから呻吟と陥没呼吸が出現したため、改めて気道開通の処置を行ったが呼吸状態は増悪傾向である。バイタルサインは体温(腋窩温)36.8 ℃、呼吸数50/分、心拍数170/分、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉87%であった。初期対応の選択として適切なのはどれか。2つ選べ。
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正解3・5
正答
3.酸素投与
5.持続的気道陽圧〈CPAP〉
この問題のポイント
新生児蘇生法(NCPR)のアルゴリズムで、自発呼吸があり心拍数も100/分以上ある児に、努力呼吸と酸素化不良が現れたときの初期対応を問う問題です。判断の鍵は次の2点です。1つは、呼吸数50/分で自発呼吸が保たれ、心拍数170/分と100/分を大きく上回っていることです。もう1つは、呻吟・陥没呼吸とSpO2 87%がそろい、「努力呼吸+低酸素」の状態にあることです。この分岐で行うのは、SpO2をモニターしながらの酸素投与またはCPAPで、人工呼吸や胸骨圧迫の段階ではありません。
解説
問題文から読み取る情報
- 在胎39週0日の正期産児で、Apgarスコアは1分・5分とも8点です。出生直後の状態は良好で、ルーチンケア(保温、気道開通、皮膚の乾燥)の後に観察を続けていました。
- 生後12分ころから呻吟と陥没呼吸(努力呼吸)が現れ、気道開通をやり直しても増悪しています。分泌物や体位といった気道の問題だけでは説明できない呼吸障害です。
- 呼吸数50/分は新生児の正常範囲(40〜60/分)にあり、無呼吸やあえぎ呼吸ではありません。自発呼吸は保たれています。
- 心拍数170/分は100/分以上です。基準(おおむね120〜160/分)をやや上回る頻脈で、低酸素や呼吸努力に対する反応と考えられます。
- SpO2 87%は、生後15分としては低値です。NCPRでは出生後のSpO2の目安を、生後1分60%以上、3分70%以上、5分80%以上、10分90%以上としています。
- 体温36.8℃は目標範囲(36.5〜37.5℃)内です。低体温による酸素消費の増加は、主な原因ではありません。
NCPRの判断の流れ
NCPRでは、蘇生の必要性をまず自発呼吸と心拍数で判断します。
- 無呼吸・あえぎ呼吸がある、または心拍数が100/分未満の場合は、バッグ・マスクによる人工呼吸を開始し、SpO2モニタを装着します。
- 人工呼吸を30秒間有効に行っても心拍数が60/分未満であれば、人工呼吸に胸骨圧迫を加えます。
- 自発呼吸があり心拍数も100/分以上の場合は、努力呼吸や中心性チアノーゼの有無を確認します。これらがあれば、右手(動脈管より上流のプレダクタル部位)にパルスオキシメータを装着し、酸素投与またはCPAPを検討します。
本例は3つ目の分岐に当たるため、選択肢3と選択肢5が初期対応になります。「呼吸状態が増悪傾向」という言葉から人工呼吸を選びたくなりますが、人工呼吸へ進むかどうかは、自発呼吸と心拍数で判断します。
酸素とCPAPが効く理由
呻吟は、呼気時に声門を狭めて気道内圧を保ち、肺胞がつぶれるのを防ごうとする代償反応です。陥没呼吸は、肺が硬く広がりにくいために、強い吸気努力で胸壁が引き込まれる所見です。どちらも、肺胞の虚脱によって機能的残気量が保てず、酸素化が落ちている状態を示しています。
- 酸素投与は、吸入酸素濃度を上げて低酸素血症を補正します。フリーフロー(マスクやチューブを顔に近づけて流す方法)で行い、SpO2を見ながら濃度を調整します。高濃度の酸素は酸化ストレスの原因になるため、漫然と使い続けてはいけません。正期産児の人工呼吸は空気(21%)で開始するのが原則であることも、合わせて覚えておきましょう。
- CPAPは、自発呼吸を生かしたまま呼気の終わりまで気道に一定の陽圧をかけます。肺胞を開いた状態に保つことで機能的残気量が維持され、酸素化の改善と呼吸仕事量の軽減が得られます。呻吟が児自身で行っている働きを、外から代わりに担う処置といえます。NCPRでは、流量膨張式バッグやTピース蘇生装置とマスクを用いて行います。自己膨張式バッグでは、CPAPを確実にかけることができません。
その後の対応と実践での意味
対応を始めた後は、胸郭の動き、呼吸音、SpO2、心拍数の推移を観察します。改善すれば蘇生後のケアに移り、原因を調べます。正期産児の出生後早期の呼吸障害には、新生児一過性多呼吸、胎便吸引症候群、気胸、感染症、先天性心疾患などがあります。一方、無呼吸になった、心拍数が100/分未満に下がった、酸素やCPAPでも改善しないといった場合は、人工呼吸へ進みます。助産師は、分娩直後の新生児を最初に観察する立場にあります。ルーチンケアの後も観察を続け、努力呼吸に気づいたら、応援と医師への連絡を行いながら、この段階的な対応を迷わず始めることが求められます。
選択肢の確認
1.気管挿管:挿管は侵襲の大きい手技です。NCPRでは、バッグ・マスクによる人工呼吸が有効でないときや長引くとき、胸骨圧迫を行うとき、先天性横隔膜ヘルニアのようにマスク換気を避けるべき状況などで検討します。本例は自発呼吸が保たれ心拍数も100/分以上あり、酸素やCPAPといった非侵襲的な対応をまだ試していません。そのため、初期対応として選ぶのは適切ではありません。これらを行っても改善せず、人工呼吸が必要になり、さらに確実な気道確保を要する場合に検討する処置です。
2.胸骨圧迫:この処置は、有効な人工呼吸を30秒行っても心拍数が60/分未満のときに、人工呼吸と3対1の比率で組み合わせて行います。本例の心拍数は170/分で循環は保たれているため、適応はありません。「心拍数100/分未満で人工呼吸、60/分未満で圧迫を追加」という2つの基準を、混同しないようにしましょう。
3.酸素投与:正答。自発呼吸があり心拍数も100/分以上の児に、努力呼吸と低酸素(SpO2 87%)がみられるときは、NCPRでCPAPと並んで検討される対応です。フリーフローで酸素を投与し、右手のSpO2を指標に濃度を調整します。高濃度のまま続けて過剰な酸素にさらさないよう注意します。
4.バッグ・マスク換気:陽圧による人工呼吸の適応は、無呼吸・あえぎ呼吸がある場合、または心拍数が100/分未満の場合です。本例は呼吸数50/分の自発呼吸があり、心拍数も170/分と保たれているので、この時点では適応になりません。酸素やCPAPを行っても改善しない場合や、無呼吸・徐脈に陥った場合には、次の段階として開始します。
5.持続的気道陽圧〈CPAP〉:正答。自発呼吸を保ったまま気道に持続的な陽圧をかけ、呼気時の肺胞の虚脱を防いで機能的残気量を維持します。これにより、酸素化の改善と呼吸仕事量の軽減が得られます。呻吟・陥没呼吸という肺胞虚脱を示す所見がある本例に合った対応で、流量膨張式バッグやTピース蘇生装置を用いて行います。
覚えるポイント
- NCPRでは、まず自発呼吸と心拍数で判断します。無呼吸・あえぎ呼吸、または心拍数100/分未満なら人工呼吸を始めます。人工呼吸を30秒行っても心拍数60/分未満なら、胸骨圧迫を3対1で加えます。
- 自発呼吸があり心拍数100/分以上で、努力呼吸や中心性チアノーゼがある場合は、右手にSpO2モニタを装着し、酸素投与またはCPAPを検討します。
- 出生後のSpO2の目安は、1分60%以上、3分70%以上、5分80%以上、10分90%以上です。正期産児の人工呼吸は空気で開始し、酸素はSpO2を見て調整します。
- 呻吟は、呼気時に声門を狭めて肺胞の虚脱を防ぐ代償反応です。CPAPはこれを外から補い、機能的残気量を保ちます。CPAPは流量膨張式バッグやTピース蘇生装置で行い、自己膨張式バッグでは確実にかけられません。
- 新生児の正常値は、呼吸数40〜60/分、心拍数おおむね120〜160/分、体温36.5〜37.5℃です。
- 気管挿管は、マスク換気が無効または長引くとき、胸骨圧迫を行うとき、先天性横隔膜ヘルニアなどで検討する次の段階の処置です。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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