第105回

105PM033|第105回 助産師国家試験 過去問

2つ選択

助産所において、分娩期に緊急に医療機関への母体搬送の適応となるのはどれか。2つ選べ。

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正解2・3

正答

2.分娩第1期の母体の体温が38.5 ℃である。
3.分娩第2期において、2時間以上分娩が進行せず児の娩出が期待できない。

この問題のポイント

助産所が扱えるのは正常に経過する分娩だけです。医師の診断や処置が必要な異常が起きたときは、速やかに連携医療機関へ母体搬送します。この問題では、日本助産師会の助産業務ガイドラインが示す分娩期の搬送基準のうち、「38℃以上の発熱」と「急速遂娩が必要な分娩第2期の遷延」を判別できるかが問われています。ほかの選択肢は、数値が基準に届いていないもの(前期破水からの時間、出血量)か、程度が軽いもの(会陰裂傷)です。

解説

助産所で扱える分娩の範囲

保健師助産師看護師法第38条は、助産師が妊婦・産婦・褥婦・胎児・新生児に異常を認めたときは医師の診療を求めさせなければならず、臨時応急の手当を除いて自ら処置してはならないと定めています。医療法も、分娩を取り扱う助産所に対し、嘱託医師と嘱託する病院・診療所を定めておくよう求めています。したがって助産所での分娩は「正常であること」が前提です。異常の徴候を見逃さずに医療機関へ引き継ぐことは、助産師の重要な責務です。

この判断の具体的な目安として、日本助産師会が助産業務ガイドラインを作成しています(出題当時は2019年版)。ガイドラインは、妊娠期・分娩期・産褥期・新生児それぞれについて、医療機関への搬送や医師への相談が必要な状態を示しています。

正答2つの根拠

分娩中の発熱(選択肢2):分娩第1期に38℃以上の発熱があれば、まず子宮内感染、とくに絨毛膜羊膜炎を疑います。Lenckiの診断基準では、38.0℃以上の発熱に次のいずれか1つが加われば臨床的絨毛膜羊膜炎と診断します。

  • 母体頻脈(100回/分以上)
  • 子宮の圧痛
  • 腟分泌物や羊水の悪臭
  • 白血球増多(15,000/μL以上)

子宮内感染は、母体では敗血症や産褥子宮内膜炎の原因になります。胎児・新生児では胎児頻脈、胎児機能不全、新生児の早発型感染症につながるおそれがあります。対応には血液検査、抗菌薬投与、連続した胎児心拍数モニタリング、場合によっては急速遂娩が必要であり、助産所では完結できません。

分娩第2期の遷延(選択肢3):分娩第2期は子宮口全開大から児娩出までの期間で、所要時間の目安は初産婦で1〜2時間、経産婦で30分〜1時間程度です。2時間を超えても進行せず娩出の見込みがない場合、児頭骨盤不均衡、回旋異常、微弱陣痛などが背景にある可能性があります。胎児は産道内で圧迫を受け続けるため、低酸素やアシドーシスに陥る危険が高まります。母体にも疲労、脱水、軟産道損傷、弛緩出血のリスクが増えます。吸引分娩・鉗子分娩・帝王切開といった急速遂娩は医師が行う医行為なので、医療機関への緊急搬送が必要です。

実践での意味

搬送は、異常が確定してから動くと遅れることがあります。発熱や進行の停滞に気づいた時点で連携医療機関に連絡し、同時に次のことを進めます。

  • 産婦・家族への説明
  • 搬送中の観察(バイタルサイン、胎児心拍、出血)
  • 経過をまとめた情報提供

平時から嘱託医療機関と搬送手順を共有しておくことが、助産所の安全を支えます。

選択肢の確認

1.前期破水後12時間経過しても陣痛が発来しない。:前期破水とは陣痛開始前の破水のことで、正期産では多くの場合、破水後24時間以内に自然に陣痛が始まります。助産業務ガイドラインでは、前期破水後24時間を過ぎても陣痛が発来しない場合を搬送の目安としています。12時間の時点は、母体の体温・脈拍、羊水の性状(混濁や悪臭)、胎児心拍(頻脈の有無)を観察しながら経過をみる段階です。ただし、経過中に発熱や羊水混濁、胎児心拍の異常が現れれば、その時点で搬送の対象になります。

2.分娩第1期の母体の体温が38.5 ℃である。:正答。38℃以上の発熱は子宮内感染(絨毛膜羊膜炎)を強く疑わせる所見です。母体の敗血症、胎児機能不全、新生児感染を防ぐため、抗菌薬投与や連続モニタリングなど医師による管理が必要になります。助産所で経過をみてよい状態ではなく、緊急搬送の適応です。

3.分娩第2期において、2時間以上分娩が進行せず児の娩出が期待できない。:正答。分娩第2期が遷延して娩出が見込めない状態では、胎児の低酸素が進む前に吸引分娩・鉗子分娩・帝王切開による急速遂娩が必要になる可能性が高くなります。これらは医師しか行えないため、緊急搬送の適応です。

4.会陰裂傷第1度である。:第1度は会陰の皮膚と腟粘膜の表層にとどまる軽い裂傷で、止血の確認、必要に応じた処置、局所の観察と清潔保持で対応でき、緊急搬送の適応ではありません。搬送が必要になるのは、医師による修復を要する損傷です。具体的には、肛門括約筋に及ぶ第3度、肛門・直腸粘膜まで及ぶ第4度の裂傷や、頸管裂傷が該当します。会陰の筋層まで及ぶ第2度との区別も押さえておきましょう。

5.分娩後2時間までの出血量が400 mLである。:分娩時異常出血の目安は500 mL以上とされており、400 mLはこれに達していません。子宮収縮の状態、出血が続いているか、バイタルサインを観察し、子宮底の輪状マッサージや膀胱を空にするなどの対応で経過をみる段階です。ただし、出血が続いて500 mLを超える場合や、ショックインデックス(心拍数÷収縮期血圧)が1以上になるなど循環動態が変化した場合は、速やかに搬送を判断します。

覚えるポイント

  • 助産師は異常を認めたら医師の診療を求めさせる(保健師助産師看護師法第38条)。分娩を取り扱う助産所は、嘱託医師と嘱託する病院・診療所を定めておく(医療法)。
  • 分娩期の主な搬送の目安:38℃以上の発熱、急速遂娩が必要な分娩第2期の遷延、胎児心拍数の異常(胎児機能不全)、前期破水後24時間を過ぎても陣痛が来ない、500 mL以上の出血、第3度以上の会陰裂傷や頸管裂傷。
  • 絨毛膜羊膜炎(Lenckiの基準):38.0℃以上の発熱+「母体頻脈100回/分以上・子宮圧痛・腟分泌物/羊水の悪臭・白血球15,000/μL以上」のいずれか。
  • 分娩第2期の所要時間の目安は初産婦1〜2時間、経産婦30分〜1時間。急速遂娩(吸引・鉗子・帝王切開)は医師の業務。
  • 会陰裂傷の分類:第1度=皮膚・腟粘膜の表層、第2度=会陰の筋層、第3度=肛門括約筋、第4度=肛門・直腸粘膜まで。
  • 出血は量だけでなくショックインデックスでも評価する。SI 1で約1.5 Lの出血に相当し、1.5以上は産科危機的出血として対応する。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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