第106回
106AM015|第106回 助産師国家試験 過去問
Aさん(25歳、初産婦)は妊娠13週で妊婦健康診査を受診し、子宮頸管のクラミジア検査を受け、結果は陽性だった。Aさんへの助産師の説明で適切なのはどれか。
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正解4
正答
4.「治療効果の判定まで性交時にコンドームをつけてください」
この問題のポイント
妊娠初期に性器クラミジア感染症と診断された妊婦への、治療・治癒判定・再感染予防の保健指導を問う問題です。手がかりは「妊婦」「子宮頸管の検査で陽性」という条件です。ここから、妊娠中に使える経口抗菌薬、核酸増幅法による治癒判定とその時期、パートナーからの再感染(ピンポン感染)の防止の3点を結びつけて判断します。
解説
病原体と感染の特徴
性器クラミジア感染症の原因菌はクラミジア・トラコマティスです。宿主の細胞内でしか増殖できない偏性細胞内寄生性の細菌で、わが国の性感染症の中で報告数が最も多い疾患です。女性では子宮頸管炎から始まりますが、多くは無症状です。そのため本人もパートナーも気づかないまま感染が続きやすくなります。上行感染すると卵管炎や骨盤内炎症性疾患を起こし、卵管性不妊や異所性妊娠の原因になります。
妊娠中に問題となる理由
妊娠中は、絨毛膜羊膜炎を介して前期破水や流早産の一因になり得ます。さらに分娩時の産道感染により、新生児に封入体結膜炎(新生児結膜炎)や新生児肺炎を起こします。このため妊婦健康診査では、妊娠30週頃までに子宮頸管の検体で検査を行います。陽性であれば、分娩までに治療と治癒の確認を済ませておくことが重要です。Aさんは妊娠13週で陽性が分かっており、分娩までに治療と判定を行う時間は十分にあります。
治療
妊婦にはマクロライド系の経口抗菌薬を用います。代表的なのはアジスロマイシンの単回内服と、クラリスロマイシンの7日間内服です。非妊時に使われるテトラサイクリン系は胎児の歯の着色や骨発育への影響があり、ニューキノロン系も妊婦には避けるため選択しません。外来での内服で完結するのが基本で、点滴は必要ありません。
治癒判定
診断も治癒判定も、子宮頸管擦過物などから病原体の遺伝子を検出する核酸増幅法(PCR法など)で行います。核酸増幅法は感度が高い一方、治療で死滅した菌の遺伝子も検出します。そのため治療直後に検査すると、治っていても陽性になることがあります。治癒判定は治療開始からおおむね3週間以上あけて行います。
再感染予防とパートナーへの対応
Aさんだけが治療しても、未治療のパートナーとの性交で再び感染します。これをピンポン感染といいます。パートナーにも受診・検査・治療を勧めます。そのうえで、治癒判定で陰性が確認されるまでは性交を控えるか、コンドームを使用するよう説明します。
助産師としての関わり
次の内容を、プライバシーに配慮して伝えます。
- 無症状でも治療が必要な理由
- 服薬を自己判断でやめないこと
- パートナーの受診を勧めること
- 次回の治癒判定の受診時期
性感染症の告知は、妊婦がパートナーとの関係に不安や動揺を抱きやすい場面です。責める口調を避け、治療で治ること、赤ちゃんを守るための治療であることを落ち着いて伝える姿勢も大切です。
選択肢の確認
1.「治療は抗菌薬の点滴になります」:妊婦の性器クラミジア感染症は、アジスロマイシンやクラリスロマイシンなどの経口抗菌薬で外来治療するのが標準です。点滴での治療という説明は不適切です。抗菌薬の注射が標準となる性感染症には淋菌感染症(セフトリアキソンの静注など)があります。また骨盤内炎症性疾患の重症例では点滴治療を行うこともあるため、それらと混同しないようにします。
2.「治療効果は採血検査で分かります」:治療効果は、子宮頸管の検体で病原体の遺伝子を調べる核酸増幅法で判定するため、不適切な説明です。血液で測るクラミジア抗体(IgG・IgA)は、菌が消えた後も長く陽性が続くことがあります。過去の感染と現在の感染を区別できないため、治癒判定には使えません。
3.「治療効果の判定を1週間後に行います」:治療後1週間では死滅した菌の遺伝子が残っており、核酸増幅法が陽性になることがあります。正確な判定ができないため不適切です。治癒判定は治療開始からおおむね3週間以上あけて行います。早く結果を知りたいという気持ちに応えて早めに検査すると、偽陽性による不要な追加治療や不安につながります。
4.「治療効果の判定まで性交時にコンドームをつけてください」:正答。クラミジアは性交で感染するため、治癒が確認されるまでの期間に未治療のパートナーから再感染する可能性があります。治癒判定まで性交を控えるかコンドームを使用することは、再感染を防ぐ具体的で適切な指導です。あわせてパートナーにも検査と治療を勧めることが重要です。
覚えるポイント
- 妊婦のクラミジア治療は経口マクロライド系(アジスロマイシン単回内服、クラリスロマイシン7日間内服)です。テトラサイクリン系・ニューキノロン系は妊婦には使いません。
- 診断も治癒判定も核酸増幅法で行います。血中抗体は既往感染でも陽性が続くため、治癒判定には使えません。
- 治癒判定は治療開始からおおむね3週間以上あけて行います。理由は、死菌の遺伝子による偽陽性を避けるためです。
- パートナーも同時に検査・治療します。治癒確認までは性交を控えるかコンドームを使用し、ピンポン感染を防ぎます。
- 妊婦健診のクラミジア検査は妊娠30週頃までに行います。母体では絨毛膜羊膜炎・前期破水・早産、新生児では産道感染による結膜炎・肺炎が問題になります。
- 性器クラミジア感染症は感染症法の5類感染症で、定点把握の対象です。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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