第106回
106AM027|第106回 助産師国家試験 過去問
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律で、戸籍上の性別の取扱いについて変更の審判ができる条件に含まれるのはどれか。
解答・解説を見る
正解4
正答
4.生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態であること。
この問題のポイント
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(以下、特例法)で、家庭裁判所が性別の取扱いの変更を審判できる要件を問う問題です。要件は「18歳以上」「現に婚姻をしていない」「現に未成年の子がいない」「生殖腺に関する要件」「外観に関する要件」の5つです。これらに加えて、前提となる「2人以上の医師による診断」を正確に覚えているかどうかが鍵になります。16歳という数字や「配偶者の同意」「カウンセリング」といった、それらしく見える条件に惑わされないことが大切です。
解説
特例法の仕組み
特例法は2003年に成立し、2004年に施行されました。この法律でいう性同一性障害者とは、次のような人です。
- 生物学的な性別は明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別であるという持続的な確信をもっている。
- 自己を身体的・社会的に他の性別に適合させようとする意思がある。
- 診断に必要な知識と経験をもつ2人以上の医師の診断が一致している。
この定義に当てはまる人が本人の請求によって家庭裁判所に申し立て、以下の要件をすべて満たすと、性別の取扱いの変更の審判を受けることができます。請求には、診断の結果や治療の経過・結果などを記載した医師の診断書を提出する必要があります。
出題当時の要件(第3条第1項)は次の5つです。
- 18歳以上であること
- 現に婚姻をしていないこと
- 現に未成年の子がいないこと
- 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
- その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること
年齢要件は制定当初「20歳以上」でしたが、民法の成年年齢引下げに合わせて2022年4月から「18歳以上」になりました。子に関する要件も、当初の「現に子がいないこと」から、2008年の改正で「未成年の子」に限定されています。
審判を受けると、民法その他の法令の適用では他の性別に変わったものとみなされ、戸籍の性別の記載が変更されます。ただし、審判前に生じた身分関係や権利義務には影響しません。
正答に至る考え方
設問は「条件に含まれるのはどれか」なので、5つの要件と一致するものを選びます。生殖腺がない、または生殖腺の機能を永続的に欠く状態であることは第4号そのものであり、これが正答です。実際には、性別適合手術のうち精巣や卵巣を摘出する手術によって満たされることが多い要件でした。
その後の変化(現在の扱い)
出題当時、この生殖腺に関する要件(生殖不能要件)は有効な法律上の要件でした。しかし2023年10月25日、最高裁判所大法廷は次のように判断しました。
- 生殖不能要件は、性別変更を望む人に生殖腺除去手術という強い身体的侵襲を事実上強いるものである。
- これは、憲法13条が保障する「自己の意思に反して身体への侵襲を受けない自由」を過剰に制約しており、違憲・無効である。
- 2019年には同じ要件を合憲とする決定がありましたが、この判断を変更しました。
- 外観要件については判断を示さず、高等裁判所で審理し直すよう差し戻しました。
このため現在は、生殖腺に関する要件を満たしていないことは、変更を認めない理由になりません。試験の正答は出題当時の法律に基づいて決まっていることを理解したうえで、この動向も押さえておきましょう。
助産師の実践とのつながり
性自認と出生時に割り当てられた性が一致しない人も、子宮や卵巣をもっていれば、月経・妊娠・婦人科疾患のケアの対象になりえます。助産師は、リプロダクティブヘルス/ライツの観点から性の多様性を前提に関わります。呼ばれたい名前や代名詞を確認し、プライバシーに配慮することが求められます。
用語にも注意が必要です。DSM-5では「性別違和」、ICD-11では「性別不合」という名称が使われています。ICD-11では、精神疾患の章から性の健康に関連する状態の章へ移されました。一方、出題当時の法律名には「性同一性障害」の語が用いられています。
選択肢の確認
1.16歳以上であること。:年齢要件は18歳以上なので、16歳では審判を請求できず、要件には含まれません。制定当初は20歳以上で、2022年4月の成年年齢引下げに伴って18歳以上になりました。「16歳」は、2022年3月まで女性の婚姻適齢が16歳だったことと混同しやすい数字ですが、この法律とは関係ありません。
2.婚姻状態にある場合は配偶者の同意があること。:特例法が求めるのは「現に婚姻をしていないこと」です。配偶者の同意があっても婚姻中のままでは審判を受けられないため、要件には含まれません。婚姻中に性別を変更すると同性同士の婚姻状態が生じるため、それを避ける趣旨の要件です。離婚などで婚姻を解消していれば、この要件を満たします。配偶者の同意が必要とされるのは母体保護法の不妊手術や人工妊娠中絶であり、これと取り違えないよう注意しましょう。
3.心理専門職によるカウンセリングを受けていること。:特例法が求めるのは、必要な知識と経験をもつ2人以上の医師による診断の一致と、医師の診断書の提出です。心理専門職によるカウンセリングの受診は要件に定められておらず、含まれません。臨床では、日本精神神経学会のガイドラインに沿った精神科領域の支援が行われることもあります。しかしそれは治療の過程の一部であり、審判の法的な条件ではありません。また、診断は医師が行うもので、公認心理師などの心理専門職は診断を行いません。
4.生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態であること。:正答。第3条第1項第4号に定められた要件で、出題当時は審判を受けるための条件の一つでした。精巣や卵巣を摘出している、または何らかの理由で生殖腺の機能を永続的に失っている状態を指します。なお、2023年10月の最高裁判所大法廷決定でこの要件は違憲・無効と判断され、現在は変更を認めない理由になりません。
覚えるポイント
- 性別の取扱いの変更は、本人の請求により家庭裁判所が審判します。前提は、2人以上の医師による診断の一致です(医師の診断書を提出)。
- 要件は5つです。18歳以上(当初は20歳以上、2022年4月から18歳)、現に婚姻をしていない、現に未成年の子がいない(2008年改正で「未成年の」が加わった)、生殖腺に関する要件、外観に関する要件。
- 「配偶者の同意」と「カウンセリング受診」は要件ではありません。配偶者の同意が要るのは、母体保護法の不妊手術・人工妊娠中絶です。
- 生殖腺に関する要件は出題当時は有効でした。2023年10月の最高裁大法廷決定で憲法13条違反・無効とされ、外観要件は高裁に差し戻されました。
- 用語は、DSM-5で「性別違和」、ICD-11で「性別不合」です。ICD-11では精神疾患の章から外れています。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する(medixmatch2025@gmail.com)までお知らせください。確認して修正します。
解いた記録を残して、苦手な問題をもう一度。
学習アプリなら、この問題の解答記録・メモ・暗記カード化を使えます。