第106回

106AM039|第106回 助産師国家試験 過去問

2つ選択

Aさん(32歳、初産婦)は産褥5日、児は母乳のみで順調に体重が増加している。退院指導を行ったとき、Aさんは「実は、妹の子どもが1か月で乳幼児突然死症候群だったんです。予防のことも含めて教えてください」と話した。乳幼児突然死症候群〈SIDS〉に関する助産師の説明で正しいのはどれか。2つ選べ。

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正解1・3

正答

1.「予防のため睡眠時は固めのマットレスを使用しましょう」
3.「うつぶせ寝が発症のリスク因子です」

この問題のポイント

家族にSIDSの経験があり不安を抱える褥婦に対して、乳幼児突然死症候群(SIDS)の定義、疫学、危険因子、予防策を正しく説明できるかを問う問題です。判断の鍵は次の4点です。うつぶせ寝、喫煙、人工栄養が代表的な危険因子であること。安全な睡眠環境として固めの敷き寝具が勧められること。SIDSは原因不明の症候群で遺伝性疾患ではないこと。日本の発症頻度は、厚生労働省の推定で出生約6,000〜7,000人に1人であることです。

解説

SIDSとはどのような病態か

SIDSは、それまでの健康状態や既往歴からは死亡が予測できない乳児に起こります。死亡状況調査と解剖検査を行っても原因が特定できないまま、原則1歳未満の児に突然の死をもたらす症候群です。多くは睡眠中に起こります。診断には解剖が必要です。解剖や検査で感染症、先天異常、代謝異常などの原因が見つかった場合はその疾患による死亡となり、SIDSには含まれません。また、寝具で顔がふさがれるなどの窒息事故とは区別されます。

発症は生後2か月〜6か月に多く、まれに1歳以上でも起こります。厚生労働省は、日本での発症頻度を出生約6,000〜7,000人に1人と推定しています。

危険因子と予防の3つのポイント

SIDSの予防方法は確立していません。ただし、厚生労働省は次の3点を守るとSIDSの発症率が低くなるというデータがあるとして、普及に努めています。毎年11月は「SIDS対策強化月間」です。

  • 1歳になるまでは、寝かせるときはあおむけに寝かせる:うつぶせ寝は最も代表的な危険因子です。各国であおむけ寝が普及するとSIDSは大きく減りました。横向き寝も、うつぶせに転がりやすいため勧められません。
  • できるだけ母乳で育てる:母乳で育てられている児は、人工栄養の児よりSIDSの発症率が低いことが示されています。
  • たばこをやめる:妊娠中の喫煙と、出生後の周囲の喫煙(受動喫煙)は危険因子です。父親や同居家族の喫煙も対象です。

このほか、次の点も安全な睡眠環境として指導します。

  • 敷き寝具は固めのものを使う
  • 顔の周りに柔らかい枕、ぬいぐるみ、タオルなどを置かない
  • 厚着をさせすぎたり、部屋を温めすぎたりしない

これらは窒息事故の予防にもつながります。背景要因としては、早産児や低出生体重児でリスクが高いことも知られています。

事例の手がかりと助産師の関わり

  • Aさんは初産婦で産褥5日、児は母乳のみで体重が順調に増えています。この場合、現在の母乳育児を肯定し、継続を支援する説明が合います。
  • 妹の子どもが生後1か月でSIDSで亡くなっています。Aさんは「自分の子にも起こるのでは」「家系的なものでは」という不安を抱えていると考えられます。
  • 退院指導の場面なので、家庭でそのまま実践できる具体的な行動を伝えます。

助産師は、まず妹の子どもを亡くした経験とAさんの思いを受け止めます。そのうえで、遺伝性疾患ではないという正確な情報で誤解を解きます。さらに「あおむけ寝」「固めの寝具」「禁煙」「母乳育児の継続」という、自分たちにできる予防行動を具体的に示します。こうすることで、不安を行動につなげられます。喫煙や寝かせ方は家族全員の協力が必要なので、夫や祖父母にも伝えるよう勧めるとよいでしょう。

選択肢の確認

1.「予防のため睡眠時は固めのマットレスを使用しましょう」:正答。柔らかいマットレスや敷布団では、児の顔が沈み込みます。口や鼻がふさがれたり、自分が吐いた息を再び吸い込んだりする危険が生じ、SIDSのリスクを高める要因と考えられています。固めの敷き寝具を使い、顔の周りに物を置かないことは、SIDS予防と窒息事故予防の両面から勧められる睡眠環境です。

2.「日本での発症頻度は約15,000人に1人です」:厚生労働省は、日本での発症頻度を出生約6,000〜7,000人に1人と推定しています。15,000人に1人は実際より低く見積もった数値であり、正しい説明ではありません。頻度の数字だけでなく、「生後2か月〜6か月に多い」という好発時期とあわせて覚えておくと、関連問題にも対応できます。

3.「うつぶせ寝が発症のリスク因子です」:正答。うつぶせ寝はSIDSの代表的な危険因子です。あおむけ寝の普及とともに各国で発症が大きく減少しました。そのため、1歳になるまでは寝かせるときはあおむけにするよう指導します。なお、起きている間に大人が見守りながら行うのであれば、うつぶせ遊びは差し支えありません。問題となるのは睡眠時の体位です。

4.「この病気は遺伝性疾患です」:SIDSは、解剖や死亡状況調査を行っても原因が特定できない症候群です。特定の遺伝形式で受け継がれる遺伝性疾患とはされていません。解剖や検査で原因となる病気が特定された場合は、その病気による死亡とされ、SIDSとは診断されません。家族にSIDSの経験があっても遺伝するわけではないと正しく伝えることは、Aさんの不安の軽減につながります。

5.「夜間は人工乳にしましょう」:母乳で育てられている児は人工栄養の児よりSIDSの発症率が低く、厚生労働省も「できるだけ母乳で育てる」ことを予防のポイントに挙げています。したがって、この説明は予防の考え方と逆です。Aさんは母乳のみで順調に経過しているので、夜間を含めた母乳育児の継続を支援します。夜間の授乳は母乳分泌の維持にも大切です。なお、人工乳の使用がSIDSの直接の原因というわけではありません。事情で人工乳を使う家庭には、あおむけ寝と禁煙を特に徹底するよう伝えます。

覚えるポイント

  • SIDSは、予測できない乳児の突然死のうち、死亡状況調査と解剖でも原因が特定できない症候群です。原則1歳未満が対象で、診断には解剖が必要です。窒息事故とは区別されます。
  • 厚生労働省の予防の3ポイントは、1歳まではあおむけ寝、できるだけ母乳育児、たばこをやめるです。危険因子は、うつぶせ寝、喫煙(妊娠中・受動喫煙)、人工栄養です。
  • 日本の発症頻度は出生約6,000〜7,000人に1人(厚生労働省の推定)です。好発時期は生後2か月〜6か月です。
  • 睡眠環境は、固めの敷き寝具を使い、顔の周りに柔らかい物を置かず、温めすぎないことが基本です。SIDSと窒息の両方の予防になります。
  • SIDSは遺伝性疾患ではありません。家族歴がある人の不安には、正確な情報と具体的な予防行動をセットで伝えます。
  • 毎年11月は「SIDS対策強化月間」です。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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