第106回

106AM032|第106回 助産師国家試験 過去問

胎児発育不全〈FGR〉の妊婦が正期産で正常分娩になった場合の妊娠および分娩の管理で、保険診療の対象はどれか。

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正解5

正答

5.ノンストレステスト〈NST〉

この問題のポイント

医療保険(健康保険)がどこまでを給付の対象とするかを問う問題です。原則は、保険は疾病・負傷の診療に対する給付であり、正常な妊娠・分娩は対象外ということです。問題文には「胎児発育不全〈FGR〉」と「正常分娩になった」という2つの条件があります。FGRという異常に対して行う診療は保険の対象になり、正常に経過した分娩そのものは対象外になる、と切り分けられるかが問われています。

解説

医療保険の対象は「疾病・負傷」

健康保険法などの医療保険は、疾病または負傷に対して療養の給付(診察、検査、薬剤、処置、手術、入院など)を行う制度です。妊娠・分娩は生理的な現象なので、経過が正常であれば疾病ではなく、療養の給付の対象になりません。正常な妊娠・分娩の費用は原則として自己負担となり、次の仕組みで支えられています。

  • 分娩費用:医療保険から出産育児一時金が支給されます。出題当時(2023年2月)は、産科医療補償制度に加入する医療機関で出産した場合に原則42万円でした。2023年4月からは50万円に引き上げられています。
  • 妊婦健康診査:母子保健法に基づいて市町村が実施・勧奨する健診で、受診票による公費助成があります。国は14回程度の受診を望ましい基準として示しています。

一方、妊娠・分娩の経過中に異常が生じ、その治療や管理を行う場合は保険診療になります。妊娠悪阻、切迫早産、妊娠高血圧症候群の治療、帝王切開術、医学的適応による吸引分娩・鉗子分娩などがその例です。

胎児発育不全〈FGR〉と胎児の健康評価

FGRは、子宮内で胎児の発育が遅れている状態です。わが国では、超音波で求めた推定胎児体重が妊娠週数の基準値より−1.5SD以下であることを目安に診断します。原因には、胎盤機能不全、妊娠高血圧症候群、母体の喫煙、胎児の染色体異常や感染などがあります。胎盤機能不全による慢性的な低酸素状態から、胎児機能不全や子宮内胎児死亡に至るおそれがあります。

そのためFGRの妊婦では、推定体重の推移を超音波で追うとともに、胎児の元気さ(well-being)を繰り返し評価します。代表的な方法がNSTです。子宮収縮のない状態で胎児心拍数陣痛図を記録し、胎動に伴って一過性頻脈が出るかを確認します。妊娠32週以降では、20分間に「15bpm以上・15秒以上」の一過性頻脈が2回以上あれば反応型(reactive)と判定し、胎児の状態は良好と考えます。ほかに、臍帯動脈などの血流を見る超音波ドプラ法やBPP(biophysical profile)も用いられます。

NSTは診療報酬に定められた検査です。子宮内胎児発育不全を認める妊婦、多胎妊娠、重症の妊娠高血圧症候群、羊水異常症などのハイリスク妊婦に行った場合に、保険で算定できます。同じNSTでも、正常経過の妊婦にルーチンとして行えば保険の対象にならず、FGRの管理として行えば保険の対象になります。

問題文への当てはめ

この妊婦はFGRと診断されていますが、正期産で正常に分娩しています。FGRの診断があるからといって、妊娠・分娩のすべてが保険の対象になるわけではありません。保険の対象になるのは、FGRという異常に対応して行った診療に限られます。

  • FGRの管理として胎児の状態を評価する検査 → 保険の対象
  • 正常に経過した分娩の管理、正常な新生児の管理、通常の妊婦健診 → 保険の対象外
  • 患者の希望による個室などの差額 → 疾患の有無にかかわらず保険の対象外

助産師は、妊婦や家族から費用について質問されることがあります。どの部分が健診の公費助成や出産育児一時金で賄われ、どの部分が保険診療になるのかを説明できれば、経済的な不安を和らげ、必要な受診や検査の継続を支えることにつながります。

選択肢の確認

1.分娩料:分娩の介助や管理に対する費用であり、今回は正期産の正常分娩なので疾病の診療には当たらず、保険の対象外です。この費用には、医療保険から支給される出産育児一時金が充てられます。FGRの診断があっても、分娩そのものが正常に経過すれば扱いは変わりません。帝王切開術や、医学的適応による吸引分娩・鉗子分娩などの産科手術であれば保険の対象になる点と区別して覚えます。

2.室料差額:患者の希望で個室などの特別療養環境室を利用した場合に生じる差額であり、保険外併用療養費制度の「選定療養」に当たるため、差額部分は全額自己負担です。疾患のある入院患者でも保険給付の対象にはならず、FGRの有無とは関係ありません。なお、治療上の必要から医療機関の判断で個室に入れた場合には、差額を患者に請求してはならないとされています。

3.正常新生児管理料:正常に出生した新生児への観察、沐浴、授乳支援などの管理は疾病の診療ではないため保険の対象外で、分娩入院の費用の一部として扱われます。FGRの児が低出生体重、低血糖、呼吸障害などで治療を要した場合は、児の疾病に対する診療として保険の対象になります。しかし、この選択肢は「正常」な新生児の管理なので当てはまりません。

4.妊婦健康診査の費用:母子保健法に基づいて市町村が実施・勧奨する健康診査であり、疾病の診療ではないため保険の対象外で、公費助成により費用が補助されます。FGRの妊婦でも、健診そのものの費用が保険に切り替わるわけではありません。健診で異常が見つかった後、その精査や管理として行う検査・診療が保険の対象になる、という区別が大切です。

5.ノンストレステスト〈NST〉:正答。胎児心拍数陣痛図で胎児の健康状態を評価する検査です。FGRでは胎盤機能不全による低酸素のおそれがあるため、胎児の状態を確認する目的で行われます。子宮内胎児発育不全を認める妊婦は診療報酬上の算定対象に含まれており、疾患の管理として行うNSTは保険診療となります。

覚えるポイント

  • 医療保険は「疾病・負傷」に対する給付です。正常な妊娠・分娩・産褥と、正常新生児のケアは保険の対象外です。
  • 正常分娩の費用には出産育児一時金(出題当時42万円、2023年4月から50万円)が充てられます。妊婦健診は母子保健法に基づく市町村の公費助成で、14回程度が望ましい基準です。
  • 異常があれば保険の対象になります(妊娠悪阻、切迫早産、妊娠高血圧症候群、FGRの管理、帝王切開術など)。同じ検査でも「何のために行うか」で扱いが変わります。
  • 室料差額は選定療養で、疾患の有無にかかわらず自己負担です。
  • 出産育児一時金(分娩費用の補助)と出産手当金(被保険者本人が産休中に受ける所得保障。産前42日〈多胎98日〉・産後56日)を混同しないようにします。
  • FGRは推定胎児体重−1.5SD以下が目安です。胎児の評価にはNST(反応型は20分間に一過性頻脈2回以上)、超音波ドプラ法、BPPを用います。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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