第106回
106AM034|第106回 助産師国家試験 過去問
日本人の食事摂取基準(2020年版)で妊娠後期の妊婦に付加量が設定されている栄養素はどれか。2つ選べ。
解答・解説を見る
正解3・4
正答
3.ビタミンA
4.ビタミンC
この問題のポイント
日本人の食事摂取基準(2020年版)で妊婦に付加量が設定されている栄養素と、その付加が妊娠のどの時期にかかるかを問う問題です。判断の鍵は「妊娠後期」という時期の指定です。ビタミンAは後期のみ、ビタミンCは妊娠全期に付加があるため、どちらも後期に該当します。カルシウムとナイアシンは母体の生理的な適応で需要の増加をまかなえると判断され、ビタミンKは非妊娠時と同じ目安量が示されているだけなので、いずれも付加量はありません。
解説
問題文の手がかりは「付加量」と「妊娠後期」の2語です。まず、その栄養素に妊婦の付加量があるかを確かめます。次に、付加量がある場合は、その付加が後期にかかるかを確かめます。この2段階で判断します。
食事摂取基準の指標と「付加量」
日本人の食事摂取基準は、健康な個人と集団を対象に、エネルギーと各栄養素の摂取量の基準を示したものです。栄養素の指標は次の5つです。
- 推定平均必要量:集団の50%の人が必要量を満たすと推定される量(不足の回避が目的)
- 推奨量:集団のほとんど(97〜98%)の人が必要量を満たすと推定される量(不足の回避が目的)
- 目安量:推定平均必要量を算定する十分な根拠がない場合に、一定の栄養状態を維持するのに十分な量
- 耐容上限量:過剰摂取による健康障害の回避が目的
- 目標量:生活習慣病の発症予防が目的
妊婦と授乳婦の基準には2つの示し方があります。非妊娠時の年齢区分の値に上乗せする付加量として示す栄養素と、妊婦の目安量そのものを示す栄養素(ビタミンD・E・Kなど)です。付加量は、胎児の発育や胎盤・母体組織の増加に伴って増える必要量を補うためのものです。付加がかかる時期(初期・中期・後期)は栄養素によって異なります。
- 全期に同じ付加量がある例:ビタミンC、ビタミンB1・B2・B6・B12、マグネシウム、亜鉛、ヨウ素など
- 時期によって付加量が異なる例:エネルギー(初期+50、中期+250、後期+450 kcal/日)、鉄(初期から付加があり、中期・後期に大きく増える)、たんぱく質と葉酸(初期は付加なしで、中期・後期のみ)、ビタミンA(後期のみ)
鉄は、胎児と胎盤への貯蔵や、循環血液量の増加に伴う赤血球量の増加に使われます。付加量は次のとおりです。
- 推定平均必要量:初期+2.0 mg/日、中期・後期+8.0 mg/日
- 推奨量:初期+2.5 mg/日、中期・後期+9.5 mg/日
妊婦の付加量は、月経なしの値に上乗せします。中期以降に需要が大きく高まることは、妊娠中の鉄欠乏性貧血を予防する指導に直結する知識です。
妊娠後期に付加があるビタミンAとビタミンC
ビタミンAは、胎児への移行・蓄積が妊娠の最後の3か月ほどに集中します。そのため付加量は後期にだけ設定されています(推定平均必要量+60、推奨量+80 μgRAE/日)。
一方で、ビタミンAは過剰症のある脂溶性ビタミンで、耐容上限量が設定されています。特に妊娠初期にレチノール(動物性食品やサプリメントに含まれる既成のビタミンA)を過剰にとると、催奇形性が問題になります。保健指導では、レバー類の多量摂取や、ビタミンAを含むサプリメントの重複に注意を促します。緑黄色野菜に含まれるβ-カロテンなどのプロビタミンAは、体内で必要に応じて変換されるため過剰症の心配が少なく、耐容上限量の対象にも含まれません。「後期には付加が必要だが、初期の過剰は危険」という二面性を理解しておくことが大切です。
ビタミンCは胎盤を通って胎児へ移行します。付加量は、新生児の壊血病を防ぐことのできる量を参考に、妊娠全期を通じて+10 mg/日(推定平均必要量・推奨量とも)とされています。全期共通なので、後期にも当然付加があります。
付加量がない栄養素の考え方
カルシウム、ナイアシン、ビタミンKには妊婦の付加量がありません。これは、妊娠中にその栄養素が不要という意味ではありません。母体の生理的な変化(吸収率の上昇、体内での合成の増加など)で需要の増加をまかなえる、あるいは付加の根拠が乏しいと判断されたということです。非妊娠時の基準量を確実に満たすことが前提になります。以上から、選択肢のうち妊娠後期に付加量があるのはビタミンAとビタミンCの2つです。
なお、出題当時の基準は2020年版(2020〜2024年度に使用)でした。現在は2025年版(2025年度から使用)に改定されています。学習の際はどの版を問われているかを確認し、改定後の数値は最新版で確かめてください。
選択肢の確認
1.カルシウム:妊娠中は腸管からの吸収率が大きく上昇し、尿中への排泄量も増えるほどです。胎児への供給は母体の生理的適応でまかなえると判断され、妊婦の付加量はありません(授乳婦も付加なしです)。ただし、非妊娠時の推奨量(20〜40歳代女性で650 mg/日)に届いていない女性が多いのが実情です。そのため指導では、「上乗せは不要」と伝えるのではなく、「非妊娠時の推奨量を確実に満たす」ことを目標にします。「骨や歯をつくるのだから妊婦は増やすはず」という思い込みで選びやすい選択肢です。
2.ナイアシン:妊娠中はトリプトファンからニコチンアミドへの転換率が高まり、体内での合成で需要の増加をまかなえると考えられるため、妊婦には付加量がありません。一方、授乳婦には付加量があります。また、ビタミンB1・B2・B6・B12にはいずれも妊婦の付加量があるため、「B群はすべて付加がある」と覚えていると誤って選んでしまいます。
3.ビタミンA:正答。胎児への移行・蓄積が妊娠後期に集中するため、後期に限って推奨量で+80 μgRAE/日の付加量が設定されています。初期と中期には付加がありません。特に初期は、レチノールの過剰摂取による催奇形性に注意が必要です。
4.ビタミンC:正答。胎盤を通過して胎児へ移行することを考慮し、新生児の壊血病を防げる量を参考にして、妊娠初期・中期・後期を通じて+10 mg/日の付加量が設定されています。全期に共通する付加なので、妊娠後期も該当します。
5.ビタミンK:妊婦には非妊娠時と同じ目安量(150 μg/日)が示されているだけで、付加量はありません。新生児が欠乏に陥りやすいのは、胎盤を通過しにくく、母乳中の含有量も少なく、腸内細菌叢も未熟なためです。その対策は母体の摂取量を増やすことではなく、新生児・乳児へのメナテトレノン(K2)シロップの予防投与です。新生児メレナなど新生児・乳児の出血症の知識と結びつけて、妊婦にも付加があると誤解しやすい選択肢です。
覚えるポイント
- 妊娠後期に付加がある主な項目:ビタミンA(後期のみ)、ビタミンC(全期)、たんぱく質・葉酸(中期・後期のみ)、エネルギー(初期+50、中期+250、後期+450 kcal/日)。
- 鉄は全期に付加があり、推奨量で初期+2.5 mg/日、中期・後期+9.5 mg/日と、中期以降に大きく増えます(月経なしの値に上乗せ)。
- 妊婦に付加量がない栄養素:カルシウム(吸収率上昇)、ナイアシン(トリプトファンからの合成増加)、ビタミンK(非妊娠時と同じ目安量)。付加がないことは「不要」という意味ではなく、非妊娠時の基準量を満たすことが前提です。特にカルシウムは不足しがちです。
- ビタミンAは「後期に付加」と「初期の過剰で催奇形性」をセットで覚えます。耐容上限量の対象はレチノールで、β-カロテンなどのプロビタミンAは含みません。
- 新生児のビタミンK欠乏への対策は、母体への付加ではなく、児へのビタミンK2シロップ投与です。
- 葉酸には付加量とは別枠の推奨があります。妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性、妊娠初期の妊婦は、神経管閉鎖障害のリスク低減のため、通常の食品以外の食品に含まれる葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)を400 μg/日摂取することが望まれるとされています。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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