第106回

106PM011|第106回 助産師国家試験 過去問

Aさん(28歳、初産婦)は妊娠38週0日、身長160 cm、体重66 kg(非妊時体重55 kg)である。児は頭位で回旋異常はない。児の推定体重は2,800 g。分娩の進行状況と呼吸法の誘導の組合せで適切なのはどれか。

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正解4

正答

4.児頭が発露し第3回旋する。 ― 短息呼吸を促す。

この問題のポイント

分娩第2期の進行段階ごとに、努責を「待つ」「促す」「止める」のどれにするかを問う問題です。努責は子宮口が全開大し、児頭が骨盤底に達して産婦に自然な努責感が出てから、陣痛発作時に行います。一方、発露以降は腹圧を抜き、児頭をゆっくり娩出させます。「肛門圧迫感はない」「排臨」「発露」「後頭結節の滑脱」という言葉が、進行段階を示す手がかりです。

解説

事例の背景

Aさんは妊娠38週0日の正期産で、非妊時BMIは55÷(1.6×1.6)≒21.5の普通体重です。体重増加は11 kgで、出題当時の目安(2021年改定、普通体重で10〜13 kg)の範囲内です。児は頭位で回旋異常がなく、推定体重2,800 gも正常範囲です。つまりこの問題は、正常な分娩機転で進む経腟分娩を想定しています。特別な医学的介入ではなく、進行に合わせた呼吸と努責の誘導が問われています。初産婦は会陰の伸展性が乏しく会陰裂傷を起こしやすいため、児頭娩出時の速度調節が特に大切です。

分娩第2期の用語と回旋

  • 分娩第2期:子宮口全開大から児娩出までの期間です。
  • 排臨:陣痛発作時に陰裂から児頭が見え、間欠時には後退して見えなくなる状態です。
  • 発露:陣痛間欠時にも児頭が後退せず、陰裂に見えたままになる状態です。
  • 第1回旋は屈位、第2回旋は内回旋(小泉門が恥骨側へ向く)です。第3回旋は反屈で、発露のころに後頭結節が恥骨弓下を滑り出ます。その下方の項部が恥骨結合下縁で支点となり、児頭は反屈しながら前頭・顔面・オトガイの順に会陰上を娩出します。第4回旋は外回旋です。

努責誘導の原則

努責を始める目安は、子宮口全開大に加えて、児頭が骨盤底に達した徴候がそろうことです。徴候は、肛門圧迫感や便意に似た努責感、肛門哆開、会陰膨隆です。児頭が十分に下降していない段階で努責させても効果は乏しく、産婦を疲れさせるだけです。息を止めて長くいきむことを繰り返すと、母児の酸素化にも不利になります。

努責は子宮収縮の力が加わる陣痛発作時に合わせて行い、間欠時は深呼吸で休息と回復を図ります。

発露から児頭娩出までは、児頭の最も大きな部分が陰裂を通過し、会陰が最大限に伸びている時期です。ここで強い努責を続けると児頭が急激に娩出され、会陰裂傷を招きやすく、児頭にも急な圧変化が加わります。そこで努責を止め、口を開けて「ハッハッ」と短く浅く呼吸する短息呼吸を促します。いきむには声門を閉じて腹圧をかける必要がありますが、短息呼吸では声門が閉じないため腹圧がかかりません。その間に助産師は会陰保護を行い、反屈の速度を調節しながら児頭をゆっくり娩出させます。

正答に至る判断

  • 選択肢1は全開大の直後で、まだ努責感がない段階です。努責は待つ時期にあたります。
  • 選択肢2は排臨で努責感が強い段階です。努責を促す時期にあたります。
  • 選択肢3と4はどちらも第3回旋の場面で、努責を止める時期です。
  • この対応と誘導が一致しているのは選択肢4だけです。

選択肢の確認

1.子宮口全開大、肛門圧迫感はない。 ― 陣痛発作時に努責を促す。:肛門圧迫感がないことは、児頭がまだ骨盤底まで十分に下降していないことを示します。子宮口が全開大していても、この段階で努責を促すのは適切ではありません。いきんでも児頭の下降に結びつきにくく、産婦の疲労や母児の酸素化の低下を招きます。ここでは自然な努責感が出るまでゆっくりした呼吸でリラックスを促し、体位の工夫などで下降を待ちます。陣痛発作時に努責を促すという誘導は、肛門圧迫感や努責感が出てからなら適切です。「全開大になったらすぐいきませる」と取り違えないようにしましょう。

2.児頭が排臨し抑えきれない努責感がある。 ― 努責しないよう促す。:排臨は、陣痛発作時の努責によって児頭を下降させていく時期です。抑えきれない努責感は、児頭が骨盤底を圧迫している徴候です。発作に合わせた努責を支持するのが適切で、止める理由はありません。努責を控えるよう促すのが正しいのは、子宮口全開大前に努責感が出た場合(いきみのがし)と、発露以降に娩出速度を調節する場合です。

3.児の後頭結節が恥骨弓下を滑脱する。 ― 陣痛間欠時に努責を促す。:後頭結節が恥骨弓下を滑脱するのは第3回旋が始まる場面で、発露とほぼ同じ時期です。ここでは努責を止め、児頭をゆっくり娩出させるのが原則です。また陣痛間欠時は子宮収縮の力が加わらないため、努責は発作時に行い、間欠時は休ませるのが基本です。進行段階の点でも、努責のタイミングの点でも不適切な誘導です。陣痛発作時に努責を促す誘導であれば、排臨までの時期に当てはまります。

4.児頭が発露し第3回旋する。 ― 短息呼吸を促す。:正答。発露して第3回旋が進む時期は、児頭の最大部分が陰裂を通過し、会陰が最も伸びている場面です。短息呼吸は声門が閉じず腹圧がかからないため、急激な娩出を防げます。その間に助産師は会陰保護をしながら、反屈の速度を調節できます。会陰の伸展性が乏しい初産婦のAさんでは、会陰裂傷を防ぐうえで特に重要な誘導です。

覚えるポイント

  • 排臨は「発作時に見え、間欠時に後退」、発露は「間欠時にも後退せず見えたまま」です。
  • 努責開始の目安は、子宮口全開大に加え、肛門圧迫感・努責感・肛門哆開・会陰膨隆といった児頭が骨盤底に達した徴候がそろうことです。
  • 努責は陣痛発作時に行い、陣痛間欠時は深呼吸で休息させます。
  • 呼吸法の流れは次のとおりです。第1期はゆっくりした呼吸、全開大前の努責感にはいきみのがしを行います。第2期は発作時に努責し、発露から児頭娩出までは短息呼吸にします。
  • 第3回旋は反屈です。後頭結節が恥骨弓下を滑脱した後、項部を支点に前頭・顔面・オトガイの順に娩出します。この時期は努責を止め、会陰保護で娩出速度を調節します。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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