第106回

106PM013|第106回 助産師国家試験 過去問

Aさん(32歳、初産婦)は妊娠39週2日、5時に陣痛発来し11時に入院した。17時の内診所見は子宮口6 cm開大、Station -1。19時に訪室するとベッドに横になり、陣痛間欠3分、陣痛発作30秒であった。内診所見は子宮口7 cm開大、Station ±0、未破水、バイタルサインは、体温36.7 ℃、脈拍76/分、整、血圧122/64 mmHgであった。胎児心拍数陣痛図はreassuring fetal statusであった。このときの助産師の対応で適切なのはどれか。

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正解2

正答

2.病棟の廊下の歩行を勧める。

この問題のポイント

分娩第1期の活動期にある初産婦の事例です。母体のバイタルサインと胎児の状態には異常がありませんが、子宮口の開大が2時間で1 cmとゆるやかで、陣痛発作もやや短めです。そのうえ本人はベッドに横になっています。異常のない分娩で進行を促したいときは、医学的な介入より先に、上体を起こした姿勢や歩行など、産婦自身の力を引き出すケアを選べるかが問われています。

解説

事例の情報を整理する

  • 32歳の初産婦で、妊娠39週2日の正期産です。
  • 5時に陣痛が発来し、19時の時点で分娩開始から14時間が経過しています。
  • 17時は子宮口6 cm・Station −1、19時は7 cm・Station ±0です。開大は2時間で1 cm進み、児頭も下降しています。
  • 陣痛は間欠3分、発作30秒です。
  • 未破水です。
  • 体温36.7 ℃、脈拍76/分、血圧122/64 mmHgで、母体に発熱・頻脈・高血圧はありません。
  • 胎児心拍数陣痛図はreassuring fetal statusで、胎児の健康状態は良好と評価できます。
  • ベッドに横になって過ごしています。

分娩経過をどう評価するか

初産婦の分娩所要時間は12〜16時間程度、そのうち第1期は10〜12時間程度が目安です。日本産科婦人科学会は、分娩開始から初産婦で30時間、経産婦で15時間を過ぎても児が娩出されないものを遷延分娩と定義しています。14時間の経過は平均よりやや長いものの、遷延分娩の基準からは遠い段階です。

開大の速さをみると、フリードマン曲線では初産婦の活動期は1時間に1.2 cm程度以上の開大が正常の目安とされてきました。1時間あたり0.5 cmは、この基準に照らすとゆるやかです。ただし、開大と下降はどちらも確実に進んでいます。十分な陣痛があるのに一定時間以上まったく進まない分娩停止とは異なります。

陣痛については、日本産科婦人科学会の陣痛の強さの判定で、子宮口4〜8 cmの時期は発作持続時間40秒以内が微弱陣痛の目安とされています。30秒はこれにあてはまります。また、開大が進むにつれて間欠は短くなるのが通常なので、7 cmで間欠3分はやや長めです。つまり「陣痛がやや弱く、進行がゆるやかだが、母児に異常はない」状況であり、まずは助産ケアで陣痛と進行を後押しする段階だと判断できます。

上体を起こした姿勢と歩行が進行を助ける理由

  • 重力によって児頭が子宮頸部を押し、頸管の開大が進みます。頸管や腟が伸展されると反射的にオキシトシンの分泌が高まり(ファーガソン反射)、子宮収縮が強まります。
  • 歩行や体を揺らす動きで骨盤の関節が動き、児頭の回旋と下降が進みやすくなります。
  • 仰臥位で起こる大動脈・下大静脈の圧迫を避けられるため、子宮や胎盤の血流が保たれます。
  • 気分転換になり、痛みへの対処が楽になると感じる産婦も多く、分娩に主体的に取り組む助けになります。

歩行を勧めてよいかの確認

歩行を勧める前に、安全に歩ける条件がそろっているかを確認します。この事例は未破水で、Station ±0(児頭の先進部が坐骨棘間線の高さ)まで児頭が下降して骨盤内に入っています。胎児心拍は良好で、母体のバイタルサインも正常です。臍帯脱出や胎児機能不全の心配がないため、歩行を勧めることができます。

反対に、次のような場合は歩行を控えるか慎重に判断します。

  • 破水していて、児頭が固定していない(臍帯脱出の危険がある)。
  • 胎児心拍数に異常がある。
  • 分娩が急速に進んでいる。
  • 硬膜外麻酔の影響で下肢に力が入らない。
  • 母体の疲労が強い。

実際の場面では、歩行とあわせて次のケアも行い、その後の陣痛・胎児心拍・内診所見を評価していきます。

  • 排尿を促す(膀胱が充満すると児頭の下降が妨げられ、陣痛も弱まりやすい)。
  • 水分とエネルギーを補給する。
  • 休息と活動のバランスを整える。

これらのケアをしても進行しない場合や、異常な所見が現れた場合には、医師に報告して判断を仰ぎます。

選択肢の確認

1.水分摂取を控えるよう説明する。:分娩中は発汗や呼吸で水分が失われやすく、分娩が長引くと脱水やケトーシスを起こして母体が疲れ、陣痛が弱まる原因にもなります。そのため、飲みやすい水分をこまめに摂るよう勧めるのが基本で、控えるよう説明するのは適切ではありません。飲食の制限を検討するのは、緊急帝王切開の可能性が高いなど、医師の判断がある場合です。

2.病棟の廊下の歩行を勧める。:正答。重力によって児頭が頸管を押し、反射的に子宮収縮が強まるほか、骨盤が動くことで回旋と下降も進みやすくなります。未破水で児頭がStation ±0まで下降しており、母児ともに異常がないため、安全に行えるケアです。

3.医師に連絡する。:保健師助産師看護師法第38条は、助産師が妊産婦や胎児に異常を認めたときに医師の診療を求めさせることを定めています。この時点では体温・血圧・脈拍が正常で、胎児心拍も良好です。分娩は遷延分娩の基準に達しておらず、開大と下降も進んでいるため、連絡が必要な異常とはいえません。胎児心拍の悪化、発熱、血圧上昇、異常出血、ケア後も続く進行停止などが見られた場合には、この対応が必要になります。

4.人工破膜を行う。:人工破膜は分娩を促進するための医学的介入で、医師の判断のもとで行われます。臍帯脱出、上行性感染、胎児心拍の変化といったリスクがあります。卵膜に包まれた胎胞は頸管を押し広げる役割も担っています。母児に異常がない段階で、進行をやや速めるためだけに破膜を行う理由はありません。

覚えるポイント

  • 進行がゆるやかでも母児に異常がなければ、医学的介入の前に、上体を起こす・歩く・排尿する・水分とエネルギーを補給するといった、産婦の力を引き出すケアを行います。
  • 歩行を勧める前に、破水の有無と児頭の固定、胎児心拍、母体のバイタルサイン、疲労の程度を確認します。破水していて児頭が浮動している場合は、臍帯脱出に注意が必要です。
  • 遷延分娩は、分娩開始から初産婦で30時間、経産婦で15時間を過ぎても児が娩出されないものをいいます。
  • 陣痛の強さの判定では、子宮口4〜8 cmの時期に発作持続時間40秒以内が微弱陣痛の目安です。開大が進むほど間欠は短く、発作は長くなるのが通常の経過です。
  • 助産師は正常な分娩を自らの判断で扱い、異常を認めたときに医師の診療を求めます(保健師助産師看護師法第38条)。人工破膜や子宮収縮薬の使用は医師の判断で行う介入です。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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