第106回

106PM023|第106回 助産師国家試験 過去問

早期母子接触を中止すべき児の経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉の基準はどれか。

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正解2

正答

2.90%未満

この問題のポイント

出生直後に行う早期母子接触の安全管理として、実施を中止すべき児のSpO2の値を問う問題です。日本周産期・新生児医学会などの関連学会・団体が2012年に示した「『早期母子接触』実施の留意点」では、児のSpO2が90%未満となった場合を中止基準としています。数値だけでなく、中止基準が設けられた理由と、SpO2以外の中止基準もあわせて押さえておくと、関連する問題にも対応できます。

解説

早期母子接触とは

早期母子接触は、出生直後の児を裸のまま母親の胸の上に腹ばいに抱かせ、肌と肌を直接触れ合わせるケアです。児の体温・呼吸・循環の安定、母乳育児の開始と継続、母子の愛着形成の促進といった利点があります。以前は「カンガルーケア」と呼ばれることもありました。しかしカンガルーケアは本来、NICUで低出生体重児などに行う皮膚接触を指す言葉です。そこで、分娩室で正期産の健康な児に行うものは「早期母子接触」と呼んで区別するよう整理されました。

中止基準が設けられた理由

出生直後の児は、胎内から胎外の生活へ移る途中の移行期にあり、呼吸と循環がまだ不安定です。早期母子接触の実施中に、児が呼吸停止や心肺停止に陥る事例が報告されてきました。うつ伏せの姿勢で鼻や口が母親の皮膚や乳房で塞がれることや、分娩直後で疲れた母親が眠ってしまい児の異変に気づけないことが、要因として挙げられています。こうした背景から、上記の留意点で、実施してよい条件(適応基準)、中止すべき状態(中止基準)、実施方法が示されました。

留意点のおもな内容

  • 児の適応基準:胎児機能不全がなかったこと、新生児仮死がないこと(1分・5分のアプガースコアが8点以上)、正期産であること、低出生体重児でないこと。
  • 母親の適応基準:本人が希望していること、バイタルサインが安定していること、疲労困憊していないこと。
  • 児の中止基準:呼吸障害(無呼吸やあえぎ呼吸を含む)がある、SpO2が90%未満となる、ぐったりして活気に乏しい、睡眠状態となる、医師・助産師・看護師が不適切と判断する。
  • 母親の中止基準:傾眠傾向がある、医師・助産師・看護師が不適切と判断する。
  • 実施方法:事前に説明して同意を得ます。児の顔を横に向けて鼻腔が塞がらないようにし、体を拭いて乾かしてから覆って保温します。パルスオキシメータでモニタリングするか、担当者が付き添って継続して観察します。できれば30分以上、または児が乳房を吸啜するまで続け、長くても2時間以内とします。

なぜ90%なのか

出生直後の児のSpO2は、胎内の低酸素環境の値から始まり、生後数分から10分ほどかけて徐々に上がって90%台に達します。移行期を終えた健康な正期産児であれば、SpO2は通常90%を十分上回ります。そのため、早期母子接触の最中に90%を下回るのは、呼吸障害や気道閉塞などによる明らかな低酸素状態を疑うべき変化です。基準を高く設定しすぎると、生理的な変動だけで接触が頻繁に中断され、ケアの利点が失われます。反対に低く設定しすぎると、急変の発見が遅れます。90%はその両方を踏まえた、見逃してはならない値として位置づけられています。

臨床では、SpO2が90%未満になった時点ですぐに母子接触を中止します。児をインファントウォーマーなどに移して気道を確保し、呼吸・心拍・皮膚色を評価して、必要であれば新生児蘇生法(NCPR)のアルゴリズムに沿って対応します。数値の変化だけでなく、呼吸の様子、筋緊張、活気といった臨床所見をあわせて観察することが、助産師に求められる安全管理です。

選択肢の確認

1.88%未満:中止基準の90%より低い値です。ここまで下がるのを待つと、低酸素状態の発見と対応が遅れます。88%という数値は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)など高二酸化炭素血症のおそれがある成人に酸素療法を行う際の目標範囲(88〜92%)の下限として出てくることがあるため、混同しないようにします。

2.90%未満:正答。「『早期母子接触』実施の留意点」で、児の中止基準として示されている値です。移行期を過ぎた健康な正期産児では通常この値を十分上回るため、90%を下回ったら異常と判断して直ちに接触を中止し、児を評価します。

3.92%未満:留意点で示された中止基準の値ではありません。92%は、成人のCOPDなどで用いられる酸素療法の目標範囲(88〜92%)の上限として出てくる数値で、新生児の早期母子接触の基準とは関係がありません。

4.94%未満:成人に酸素を投与する際の一般的な目標範囲(94〜98%)の下限と取り違えやすい値です。出生直後の児では、この程度の値は生理的な変動の範囲で起こりうるため、中止基準にすると必要のない中断が増えてしまいます。

5.96%未満:成人の平常時のSpO2に近い値ですが、移行期の新生児ではこの値を下回ることは珍しくありません。これを基準にすると多くの児で早期母子接触が中断され、体温保持や母乳育児の促進といった利点が得られなくなります。

覚えるポイント

  • 早期母子接触の児の中止基準はSpO2 90%未満です。ほかに、呼吸障害(無呼吸・あえぎ呼吸)、ぐったりして活気に乏しい、睡眠状態となる、も中止基準です。
  • 母親の中止基準は傾眠傾向です。医療者が不適切と判断した場合も、母子どちらについても中止します。
  • 児の適応基準は、正期産、低出生体重児でない、胎児機能不全がなかった、1分・5分アプガースコア8点以上(新生児仮死がない)です。
  • 実施中は、児の顔を横に向けて鼻腔の閉塞を防ぎ、保温し、パルスオキシメータまたは担当者の付き添いで継続して観察します。できれば30分以上、または児の吸啜まで続け、上限は2時間以内です。
  • 「早期母子接触」は分娩室で正期産児に行うケア、「カンガルーケア」は本来NICUの低出生体重児などに行うケアとして区別します。
  • SpO2の数値は場面で使い分けます。成人のCOPDでは88〜92%、成人の一般的な酸素療法では94〜98%が目標範囲で、早期母子接触の中止基準の90%と混同しないようにします。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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