第106回
106PM029|第106回 助産師国家試験 過去問
第1前方後頭位の仰臥位分娩介助で正しいのはどれか。2つ選べ。
解答・解説を見る
正解4・5
正答
4.前在肩甲娩出時は児の側頭部を会陰側に押し下げる。
5.後在肩甲娩出後に児の体幹を両手で把持し骨盤軸に沿って娩出させる。
この問題のポイント
第1前方後頭位の仰臥位分娩について、介助の要点を問う問題です。具体的には、肛門保護から会陰保護への切り替え時期、屈位保持の終点、外回旋の方向、肩甲と体幹の娩出方向が問われています。判断の鍵は、排臨と発露の区別、屈位保持の目印が小泉門ではなく後頭結節であること、第1胎向(児背が母体の左側)では外回旋後に児の顔が母体の右大腿側を向くことです。さらに、前在肩甲は後下方(会陰側)、後在肩甲は前上方(恥骨側)、体幹は骨盤誘導線に沿うという方向を、仰臥位の上下に置き換えて考えられるかが問われます。
解説
「第1前方後頭位」は、正常分娩の基本となる分娩機転です。児背が母体の左側にある第1胎向で、内回旋(第2回旋)によって後頭が母体の前方(恥骨側)へ回り、その向きのまま児頭が娩出されます。「仰臥位分娩」では産婦が上を向いているので、恥骨側が上、会陰・仙骨側が下になります。児の動きと介助の方向を、この上下左右に正しく置き換えられるかが問われています。
児頭娩出までの介助
- 排臨:陣痛発作時に陰裂から児頭が見え、間欠時には後退して見えなくなる状態です。
- 発露:陣痛間欠時にも児頭が後退せず、見えたままになる状態です。
排臨の頃は、児頭の圧迫で肛門が開き、脱肛や便の排出が起こりやすくなります。そのため、ガーゼで肛門を押さえる肛門保護を行います。発露の頃になると会陰が強く伸展して裂傷の危険が高まるので、会陰保護に切り替えます。会陰保護では、片手で会陰を支え、もう一方の手を児頭に当てて屈位を保ち、娩出速度を調節します。目的は、児頭をできるだけ小さい周囲で、ゆっくり通過させることです。児頭の娩出時には産婦にいきみを止めて短促呼吸をしてもらい、急激な娩出を防ぎます。
前方後頭位の児頭は、屈位のまま小斜径周囲(約32cm)で産道を通過します。小斜径は、項窩(後頭結節のすぐ下のくぼみ)から大泉門中央までの径です。児頭が下降して後頭結節が恥骨弓下を滑脱すると、その直下の項部(項窩)が恥骨弓下縁に当たって支点になり、児頭が反屈(第3回旋)します。その結果、大泉門、前額、顔面、オトガイの順に会陰から娩出されます。したがって、屈位を保つ目安は後頭結節が恥骨弓下を滑脱するまでで、そこからはゆっくり反屈させて娩出を助けます。滑脱を確かめる目印(後頭結節)と反屈の支点(項部)は、別の部位として区別して覚えます。
外回旋(第4回旋)
児頭が娩出されると、後頭は児背の側へ戻るように回旋します。同時に、肩甲の横径が骨盤出口の前後径に一致します。第1胎向では児背が母体の左側にあるため、後頭は母体の左へ戻り、顔は母体の右大腿側を向きます。介助者はこの自然な回旋を妨げず、回旋方向に沿って軽く助けます。あわせて臍帯巻絡の有無を確認します。
肩甲・体幹の娩出
外回旋が終わると、第1胎向では児の右肩が前在肩甲(恥骨側)、左肩が後在肩甲(会陰側)になります。
- 前在肩甲:両手で児の両側頭部を挟むように保持し、児頭を後下方(会陰側)へ静かに押し下げて、前在肩甲を恥骨弓下から娩出させます。
- 後在肩甲:次に児頭を前上方(恥骨側)へ持ち上げ、後在肩甲を会陰から娩出させます。後在肩甲の通過時も会陰裂傷が起こりやすいので、会陰を保護しながら行います。
- 体幹:両肩甲が出たら、体幹を両手で把持し、骨盤誘導線(骨盤軸)に沿って娩出させます。骨盤誘導線は、骨盤の各平面の前後径の中点を結んだ線で、前方に凹の弯曲を描きます。仰臥位では出口に近づくほど前上方(母体の腹部側)へ向かうので、弧を描くように導きます。
どの段階でも、介助は力で引き出すことではなく、方向の誘導です。強い牽引や頸部の過度な側屈は、腕神経叢損傷(エルプ麻痺など)の原因になります。前在肩甲が恥骨結合に引っかかって出てこない場合は肩甲難産を疑い、応援要請やマックロバーツ体位などの対応に移ります。
選択肢の確認
1.排臨になった時点で肛門保護を会陰保護に切り替える。:排臨の段階は、陣痛間欠時に児頭が後退し、会陰がまだ最大限には伸展していない時期です。この時期に行うのは肛門保護です。会陰保護に切り替えるのは、間欠時にも児頭が戻らなくなる発露の頃です。児頭が見え始めた排臨を会陰保護の開始時期と取り違えやすいので、「肛門保護は排臨、会陰保護は発露」と対にして覚えます。
2.小泉門が恥骨弓下を滑脱するまで児頭を屈位に保つ。:屈位保持の目安は、小泉門ではなく後頭結節が恥骨弓下を滑脱するまでです。後頭結節が滑脱すると、その直下の項部(項窩)が恥骨弓下縁に当たって支点となり、児頭が反屈します。小泉門は後頭結節より早い段階で恥骨弓下を越えます。その時点で反屈を許すと、児頭は小斜径より大きな径で会陰を通過することになり、会陰の過伸展や裂傷の原因になります。小泉門は、内診で児頭の屈曲や内回旋の進み具合を判断する目印であり、屈位保持の終点とは区別します。
3.児頭娩出後は児の顔が母体の左大腿側に向くように誘導する。:第1胎向では児背が母体の左側にあるため、外回旋で後頭は母体の左へ戻り、顔は母体の右大腿側を向きます。顔を左大腿側へ向けると、自然な回旋と逆方向に頸部をねじることになり、児に負担がかかります。顔が母体の左大腿側を向くのは、児背が母体の右側にある第2胎向の場合です。
4.前在肩甲娩出時は児の側頭部を会陰側に押し下げる。:正答。外回旋後、前在肩甲(第1胎向では児の右肩)は恥骨結合の直下にあります。両手で側頭部を保持し、児頭を後下方へ静かに押し下げると、前在肩甲が恥骨弓下から娩出されます。仰臥位では会陰側が下になるため、「押し下げる」という方向になります。強い牽引や頸部の過度な側屈は腕神経叢を損傷するため、方向の誘導にとどめます。
5.後在肩甲娩出後に児の体幹を両手で把持し骨盤軸に沿って娩出させる。:正答。両肩甲が娩出されれば、体幹は比較的容易に娩出されます。児は羊水や胎脂で滑りやすいので、体幹を両手で確実に把持します。そのうえで、骨盤誘導線(骨盤軸)に沿って前上方へ弧を描くように娩出させます。
覚えるポイント
- 排臨(間欠時に児頭が後退)では肛門保護を行い、発露(間欠時も後退しない)から会陰保護に切り替えます。
- 前方後頭位の児頭は小斜径周囲(約32cm)で通過します。屈位保持は後頭結節が恥骨弓下を滑脱するまでで、その後は項部(項窩)を支点に反屈します。小泉門は屈位保持の終点ではありません。
- 外回旋で後頭は児背の側へ戻ります。顔が向くのは、第1胎向なら母体の右大腿側、第2胎向なら左大腿側です。
- 娩出の方向は、前在肩甲が後下方(会陰側)、後在肩甲が前上方(恥骨側)、体幹が骨盤誘導線に沿った前上方です。後在肩甲の娩出時も会陰を保護します。
- 肩甲・体幹の娩出は牽引ではなく誘導です。過度な牽引や側屈は腕神経叢麻痺につながります。前在肩甲が出ないときは肩甲難産を疑います。
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