第109回

109PM006|第109回 保健師国家試験 過去問

A地区に住む乳児の親のニーズを把握するために、今年A地区の担当になった保健師が最初に行うことで適切なのはどれか。

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正解3

正答

3.乳児健康診査における育児相談記録の確認

この問題のポイント

新しく地区を担当した保健師が、乳児の親のニーズを知るために最初に何をするかを問う問題です。地域診断(地域アセスメント)で情報を集める順序が問われています。手がかりは「今年担当になった」「最初に」「乳児の親」の3点です。まず保健活動の中にすでにある記録で地区の全体像をつかみ、そのうえで新しい調査の対象や方法を絞り込むのが基本です。

解説

問題文の手がかり

  • 「乳児の親」:対象は0歳児の親です。幼児や学童の親、または一部の家庭に偏った集団から得た情報では、この対象全体のニーズを代表できません。
  • 「今年A地区の担当になった」:担当者はまだ地区の実情を知らず、何が課題かの見当もついていない段階です。
  • 「最初に行う」:どの方法も役に立つ可能性がありますが、手順として一番先に来るものを選ぶ問題です。

地域診断で情報を集める順序

地域診断では、情報を既存資料と新たに集める資料に分けて考えます。

  • 既存資料:人口動態統計などの公的統計、市町村の事業統計、健康診査・家庭訪問・相談の記録、前任者からの引き継ぎ記録など
  • 新たに集める資料:地区踏査、住民や関係者へのインタビュー、アンケート調査など

新たな調査は住民や関係者に負担をかけ、準備や分析に時間と費用もかかります。そこでまず既存資料で「分かっていること」と「分かっていないこと」を整理します。足りない部分を補う目的で新たな調査を設計すれば、誰に何を聞くべきかがはっきりし、無駄のない調査になります。したがって、新任の担当者が最初に行うのは既存資料の確認です。

乳児健康診査の記録が適している理由

乳児健康診査は母子保健法に基づいて市町村が行う健康診査で、多くの市町村では3〜4か月児健診などとして実施されています。受診率が高く、地区のほとんどの乳児が受診するため、その記録は特定の層に偏りにくい資料です。

育児相談記録には、授乳や離乳食、睡眠、発達、育児不安、家族の協力体制など、親が実際に語った困りごとが残っています。あわせて、専門職の判断や対応の経過も記録されています。どんな相談が多いかという量的な傾向と、何にどう悩んでいるかという質的な内容の両方を読み取れるため、乳児の親のニーズを知る出発点として最も適しています。

ただし、記録から分かるのは主に健診の場で表に出たニーズです。健診を受けていない家庭のニーズや、相談として口に出されなかった潜在的なニーズは見えにくくなります。そのため記録を分析したあとで、地区踏査、関係者へのインタビュー、未受診家庭への家庭訪問などで補います。健診未受診の家庭は、育児の困難や虐待のリスクを抱えている場合があり、実践でも優先して把握すべき集団です。

実践とのつながり

新生児訪問、乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)、妊娠届出時の面接などの記録も、乳児の親の状況を知るための既存資料です。地区担当になったら、次の順で地域診断を進めます。

  • 手元の記録・統計・引き継ぎで地区の姿をつかむ
  • 地区を歩いて環境を見る
  • 住民や関係者の話を聞く

選択肢の確認

1.子ども会のイベントへの参加:子ども会は主に小学生を中心とした子どもの地域活動の団体です。参加者の多くは学童とその親で、乳児の親はほとんど含まれないため、対象のニーズを把握する場として適していません。地区の行事に参加して住民との関係をつくることは地区活動として意味があります。しかし、それは乳児の親のニーズ把握の最初の手順にはあたりません。

2.保育所利用者に対するアンケート:保育所を利用できるのは、就労などで保育の必要性が認められた家庭に限られます。0歳児では保育所を利用していない家庭のほうが多いのが実情です。また利用者には幼児の親も含まれるため、結果は地区の乳児の親全体の姿を代表しません。さらにアンケートは、質問の作成から配布・回収・分析まで手間がかかります。既存資料で課題の見当をつけてから設計するのが適切で、最初に行う方法ではありません。

3.乳児健康診査における育児相談記録の確認:正答。地区のほとんどの乳児とその親が受ける健診の記録なので、対象と一致しており、偏りも少ない資料です。親が実際に語った困りごとと対応の経過から、ニーズの傾向と具体的な内容の両方をつかめます。すでに手元にある資料で住民にも負担がかからず、新任担当者が最初に行う作業として最適です。

4.育児サークルの代表者に対するインタビュー:地域の事情に詳しい人(キーインフォーマント)から話を聞く方法で、地域診断では有効な手段の一つです。ただし代表者から得られるのは、外出して集まりに参加できる親の見方が中心です。孤立している親やサークルに参加していない親のニーズは反映されにくくなります。既存資料で地区の課題の見当をつけておけば、インタビューで確かめるべき点がはっきりします。そのため、記録の確認のあとに行うのが適切です。

覚えるポイント

  • 地域診断の情報収集は、既存資料(統計・事業記録・引き継ぎ)の確認から始めます。足りない部分を地区踏査・インタビュー・アンケートなどの新たな調査で補います。
  • 新任の地区担当者が「最初に」行うことを問われたら、住民に負担をかけず、すでに手元にある資料の確認を選びます。
  • 乳児健康診査は母子保健法に基づき市町村が実施します。受診率が高いので、その記録は地区の乳児とその親をほぼ網羅する、偏りの少ない資料です。
  • 情報源を選ぶときは「対象と一致しているか」「一部の層に偏っていないか」を確認します(子ども会=学童が中心、保育所=保育を必要とする家庭、育児サークル=参加している親の視点)。
  • 健診記録で見えるのは表に出たニーズです。未受診家庭や潜在的なニーズは、家庭訪問などで別に把握します。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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