第109回
109PM007|第109回 保健師国家試験 過去問
保健計画の策定で適切なのはどれか。
解答・解説を見る
正解3
正答
3.計画策定の早い段階から住民の参画を促す。
この問題のポイント
地域の保健計画を策定するときの基本原則を問う問題です。判断の鍵は、住民参画の時期、評価指標の性質、計画の目的、パブリックコメントの実施主体の4点です。住民参画は、行政が案を作ってから意見を聞くのではなく、課題の把握や目標設定の段階から住民とともに進めるのが原則です。
解説
保健計画は、地域診断で明らかになった健康課題を解決し、住民の健康水準を高めるために、目標、施策、評価の方法を体系的に定めたものです。代表例は、健康増進法に基づく都道府県健康増進計画(策定義務)と市町村健康増進計画(策定の努力義務)で、国の健康日本21を踏まえて策定します。ほかにも自殺対策計画、保険者のデータヘルス計画など、保健師が策定に関わる計画は多くあります。
策定は、次のような流れで進め、実施(Do)、評価(Check)、見直し(Act)へとつなげます(PDCAサイクル)。
- 地域診断:既存統計、健診データ、住民への調査、地区視診などから地域の実態を把握します
- 課題の明確化と優先順位の決定
- 目標設定:めざす姿と、達成度を測る目標値を定め、現状値(ベースライン)と目標年次を明示します
- 施策・事業の体系化:既存事業の評価と見直しを含めて考えます
- 評価計画:いつ、何を指標に、どの方法で評価するかを策定段階で決めておきます
住民の参画をこの流れの早い段階から促す理由は、次のとおりです。第一に、統計だけでは見えない生活実感に基づく課題やニーズを計画に反映できます。第二に、住民が自分たちで決めた目標として受け止め、主体的な健康づくりにつながるため、計画の実効性が高まります。第三に、実施段階で住民が推進員、自主グループ、ボランティアなどの担い手となり、計画が地域に根づきます。行政の透明性や説明責任も高まります。
反対に、案がほぼ固まってから意見を求めるだけでは、修正は部分的なものにとどまり、住民は計画の受け手のままです。アーンスタインの「住民参加のはしご」では、情報提供や意見聴取は形式的な参加の段階とされ、住民が行政と協働して決定に関わるほど参加の度合いが高いと整理されています。
具体的な参画の方法には、次のようなものがあります。
- 策定委員会への住民代表や公募委員の参加
- 地区ごとの住民懇談会やワークショップ
- アンケートやグループインタビュー
- 案の段階でのパブリックコメント
保健師は、住民が参加しやすい場を設け、データをわかりやすく示し、子育て世代や働く世代など普段声が届きにくい層の意見も拾うよう工夫します。
評価指標は、達成度を客観的に判断し、経年比較や他地域との比較ができるよう、数値で表せる量的指標を中心に設定します。評価の視点には、ストラクチャー(体制・資源)、プロセス(実施過程)、アウトプット(事業の実施量)、アウトカム(成果)があり、策定時にそれぞれの指標を決めておくと評価がぶれません。
選択肢の確認
1.質的な評価指標を重視する。:計画の評価指標は、目標の達成度を誰が見ても同じように判断でき、経年比較や他地域との比較もできるよう、できる限り数値で表せる量的指標を中心に設定するのが基本です。健康日本21でも、目標は現状値と目標値という具体的な数値で示されています。住民の意識の変化や関係機関の連携の深まりなど、数値に表れにくい変化を捉える質的な評価にも意味はあります。ただし、それは量的指標を補う位置づけであり、質的指標を重視するという記述は適切ではありません。
2.新規事業を立ち上げることを目的とする。:計画の目的は地域の健康課題を解決して住民の健康水準を高めることであり、事業はそのための手段にすぎません。策定では既存事業の成果や効率を評価し、効果の乏しい事業の縮小・統合・廃止(スクラップ・アンド・ビルド)も含めて、限られた人員や予算を配分し直します。課題解決に必要なら結果として新規事業が生まれることはあります。しかし、立ち上げそのものを目的にすると、課題と事業の対応があいまいになり、評価もできなくなります。
3.計画策定の早い段階から住民の参画を促す。:正答。地域診断、課題の優先順位づけ、目標設定といった初期の段階から住民が加わることで、地域の実情に合った課題設定ができます。また、目標が住民自身のものとして共有され、実施段階では住民が担い手となります。案が固まった後の意見聴取だけでは、参画の効果は限られます。
4.パブリックコメントは自治会長が取りまとめる。:パブリックコメント(意見公募手続)は、計画案などを策定する行政機関が自ら案を公表し、広く意見を募り、提出された意見を考慮したうえで、意見とそれに対する考え方を公表する手続です。国の命令等については行政手続法に定めがあり、地方公共団体は同法の趣旨を踏まえ、保健計画などについても条例や要綱で実施しています。特定の地域団体の代表が取りまとめるものではなく、自治会を経由させると自治会未加入の住民などの意見が届きにくくなります。自治会長は、策定委員や地区懇談会の協力者として参画を得る立場になり得ます。
覚えるポイント
- 住民参画は「計画策定の初期段階から」行います。パブリックコメントは案の段階での意見聴取で、参画方法の一つにすぎません。
- 評価指標は数値で測れる量的指標が中心です。現状値・目標値・目標年次をそろえ、評価計画は策定時に決めておきます。
- 評価の視点は、ストラクチャー、プロセス、アウトプット、アウトカムの4つです。
- 計画の目的は健康課題の解決で、事業は手段です。既存事業の見直し(スクラップ・アンド・ビルド)を含めて資源を配分します。
- パブリックコメントの実施主体は行政です。案の公表、意見募集、意見の考慮、結果と考え方の公表という流れで行います。
- 健康増進法では、都道府県健康増進計画は策定義務、市町村健康増進計画は努力義務です。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する(medixmatch2025@gmail.com)までお知らせください。確認して修正します。
解いた記録を残して、苦手な問題をもう一度。
学習アプリなら、この問題の解答記録・メモ・暗記カード化を使えます。