第109回

109PM033|第109回 保健師国家試験 過去問

2つ選択

毒素型の食中毒の原因となる菌はどれか。2つ選べ。

解答・解説を見る

正解3・4

正答

3.ボツリヌス菌
4.黄色ブドウ球菌

この問題のポイント

細菌性食中毒を、発症の仕組みによって「毒素型」と「感染型」に分けられるかを問う問題です。毒素型とは、菌が食品の中で増えて毒素を作り、その毒素を食べることで発症するものです。代表は黄色ブドウ球菌(エンテロトキシン)とボツリヌス菌(神経毒素)です。サルモネラ属菌・カンピロバクター・赤痢菌は、食べた菌が腸管で増えてから発症する感染型です。

解説

毒素型と感染型の違い

細菌性食中毒は「毒素がどこで作られるか」「生きた菌の増殖が必要か」によって次のように分類されます。

  • 毒素型(食品内毒素型):食品中で菌が増えて毒素を作っておき、その毒素を食べることで発症します。食べた時点で菌が死んでいても発症することがあります。黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、セレウス菌(嘔吐型)が該当します。
  • 感染型:生きた菌を食べ、腸管で菌が増殖したり粘膜に侵入したりして発症します。サルモネラ属菌、カンピロバクター、赤痢菌、腸炎ビブリオなどが該当します。このうち、腸管の中で菌が毒素を作るもの(腸管出血性大腸菌、ウエルシュ菌、セレウス菌の下痢型など)を「生体内毒素型」として区別することもあります。これらも感染型の側に分類されます。

「毒素を作る菌なら毒素型」と覚えると、腸管出血性大腸菌(ベロ毒素)のような菌で誤答します。判断の基準は毒素が食品の中で作られるかどうかです。

毒素型の2つの菌

黄色ブドウ球菌は、ヒトの皮膚や鼻腔、手指の化膿創にいる菌です。手で握るおにぎり、弁当、サンドイッチなどに付着し、室温で置かれている間に増殖してエンテロトキシンを作ります。この毒素は耐熱性で、加熱によって菌が死滅しても毒素は残ります。そのため、食べる前に温め直しても予防できません。摂取後1〜5時間(平均約3時間)で、激しい悪心・嘔吐、腹痛、下痢が起こります。発熱はほとんどなく、多くは1〜2日で回復します。

ボツリヌス菌は、土壌などにいる偏性嫌気性の芽胞形成菌です。いずし、缶詰・瓶詰、真空包装食品、自家製の保存食など、酸素のない環境で芽胞から発芽・増殖し、神経毒素を作ります。この毒素は神経筋接合部でアセチルコリンの放出を妨げ、次の弛緩性麻痺を起こします。

  • 眼瞼下垂、複視
  • 嚥下障害、構音障害
  • 呼吸筋麻痺

呼吸筋麻痺が生命に関わるため、抗毒素による治療と呼吸管理が必要です。潜伏期間は8〜36時間程度です。したがって「毒素型=潜伏期間が短い」はボツリヌス菌には当てはまらず、分類は仕組みで判断します。毒素そのものは加熱で失活しやすいのに対し、芽胞は熱に強い性質があります。このため、缶詰などでは加圧加熱殺菌が行われ、「要冷蔵」の真空包装食品は常温で保存してはいけません。

なお、乳児ボツリヌス症は、はちみつなどに含まれる芽胞を1歳未満の乳児が摂取し、腸管内で菌が増えて毒素を作るものです。食品中の毒素を食べる通常の食中毒とは仕組みが異なります。ボツリヌス症は感染症法の四類感染症です。

保健師活動での活かし方

集団食中毒が起きたとき、保健所は喫食調査と発症時刻の分布(潜伏期間)、症状から原因菌と原因食品を絞り込みます。

  • 会食の数時間後に嘔吐が集中している:黄色ブドウ球菌が疑われます。
  • 数日後に発熱と下痢が出ている:カンピロバクターなど感染型が疑われます。
  • 眼症状や嚥下障害を伴う:ボツリヌス菌を疑い、緊急対応が必要です。

また、毒素型は発熱が乏しく、感染型は発熱を伴いやすいという違いも手がかりになります。

食中毒予防の三原則は「つけない・増やさない・やっつける(殺菌)」です。毒素型、とくに耐熱性毒素を作る黄色ブドウ球菌では、「つけない」「増やさない」が重要です。具体的には、手指に傷のある人は調理を避けるか手袋を使う、調理後は速やかに食べる、低温で保存する、といった対策になります。医師は食中毒やその疑いを診断した場合、食品衛生法に基づき直ちに保健所長へ届け出ます。

選択肢の確認

1.赤痢菌:ヒトの大腸粘膜に侵入して増殖し、発熱、腹痛、しぶり腹、膿粘血便を起こすため、感染型に分類されます。潜伏期間は1〜3日程度で、ごく少ない菌数でも感染が成立します。志賀毒素を作る型もありますが、腸管内で菌が増えて発症するので毒素型には当たりません。感染症法では「細菌性赤痢」として三類感染症です。飲食物を介して発生した場合は食中毒としても扱われます。

2.サルモネラ菌:鶏卵や食肉、ペットの爬虫類などを介して摂取された菌が腸管で増殖・侵入して発症するため、感染型の代表例です。潜伏期間はおおむね半日〜2日(6〜72時間)で、38℃以上の発熱、腹痛、下痢を伴うことが多く、発熱が乏しい毒素型との違いになります。同じ属のチフス菌・パラチフスA菌による腸チフス・パラチフスは三類感染症であり、一般的な食中毒の起因菌とは区別して覚えます。

3.ボツリヌス菌:正答。嫌気状態の食品中で芽胞が発芽・増殖して神経毒素を作り、その毒素を食べることで弛緩性麻痺を起こすため、毒素型です。潜伏期間は半日〜1日半程度と比較的長めです。呼吸筋麻痺に至る危険があるため、神経症状を見たら緊急対応が必要です。乳児ボツリヌス症は腸管内で毒素が作られる別の病態である点も、あわせて押さえます。

4.黄色ブドウ球菌:正答。手指の傷などから食品に付着した菌が食品中で耐熱性のエンテロトキシンを作り、その毒素を食べて発症するため、毒素型の代表です。潜伏期間は1〜5時間と短く、激しい嘔吐が特徴で、発熱はほとんどありません。毒素は加熱では壊れないので、予防は菌を付けないことと、食品中で増やさないことが中心になります。

5.カンピロバクター:加熱不十分な鶏肉(鶏刺しなど)や汚染された水を介して摂取された菌が腸管で増殖して発症するため、感染型に分類されます。潜伏期間は2〜7日(平均2〜3日)と長く、発熱、腹痛、下痢、ときに血便がみられます。回復後にギラン・バレー症候群を起こすことがあります。厚生労働省の食中毒統計では、近年、細菌性食中毒の事件数で上位が続いている菌です。

覚えるポイント

  • 毒素型(食品内毒素型)は、食品中で作られた毒素を食べて発症するものです。黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、セレウス菌(嘔吐型)が該当します。
  • 感染型は、食べた菌が腸管で増殖して発症するものです。サルモネラ属菌、カンピロバクター、赤痢菌、腸炎ビブリオなどが該当します。腸管内で毒素を作る腸管出血性大腸菌・ウエルシュ菌も感染型の側(生体内毒素型)です。
  • 潜伏期間の目安は、黄色ブドウ球菌1〜5時間、ボツリヌス菌8〜36時間、サルモネラ属菌6〜72時間、赤痢菌1〜3日、カンピロバクター2〜7日です。ボツリヌス菌は毒素型でも潜伏期間が長めです。
  • 黄色ブドウ球菌のエンテロトキシンは耐熱性で、再加熱では防げません。ボツリヌス毒素は加熱で失活しますが、芽胞は熱に強い性質があります。
  • 1歳未満にははちみつを与えません(乳児ボツリヌス症の予防)。ボツリヌス症は四類感染症、細菌性赤痢・腸管出血性大腸菌感染症は三類感染症です。
  • 集団発生では、潜伏期間・発熱の有無・神経症状の有無から原因菌を推定します。毒素型は発熱が乏しいのが特徴です。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する(medixmatch2025@gmail.com)までお知らせください。確認して修正します。

解いた記録を残して、苦手な問題をもう一度。

学習アプリなら、この問題の解答記録・メモ・暗記カード化を使えます。