116D46|第116回 医師国家試験 過去問
72歳の男性。突然の激しい頭痛と急激な両側視力低下を主訴に来院した。意識は清明。身長 169cm、体温36.8℃。脈拍80/分。血圧154/92mmHg。四肢麻痺はない。 頭部単純CTの冠状断像と矢状断像を示す。 適切な治療はどれか。

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正解: c
正解
c 経蝶形骨洞手術
まず何を読むか
この問題では、画像の中心にある構造が下垂体領域であると捉えることが出発点です。
下垂体の正常像を細かく暗記していなくても、鞍内から鞍上部の病変を疑えれば十分に解けます。
国試での下垂体病変の整理
下垂体に異常がある画像が出たとき、受験上まず考えるのは次の病変です。
- 下垂体腺腫
- 頭蓋咽頭腫
- ラトケ嚢胞
- リンパ球性下垂体炎
ただし、細かな画像鑑別まで求められることは多くありません。
実際には、まず下垂体腫瘍を想起できれば十分なことが多く、リンパ球性下垂体炎が主題になる問題は頻度が高くありません。過去問でも、リンパ球性下垂体炎が前面に出る出題は限られており、たとえば108A34のような設問が代表的です。
下垂体腫瘍で起こる症状
下垂体病変の症状は、周囲構造の圧迫で理解すると整理しやすいです。
視交叉の圧迫
視野障害、視力低下。典型は両耳側半盲です。下垂体前葉の圧迫
下垂体前葉機能低下症を起こします。下垂体後葉や下垂体茎の圧迫
中枢性尿崩症の原因になります。
さらに、機能性下垂体腺腫ならホルモン過剰症状も加わります。
- 成長ホルモン過剰:先端巨大症
- ACTH過剰:Cushing病
- プロラクチン過剰:プロラクチノーマ
この症例の決め手
本症例では、突然の激しい頭痛と急激な両側視力低下が非常に重要です。
これは、下垂体腺腫に出血や梗塞をきたす下垂体卒中を強く示唆します。
下垂体卒中では、急速な腫瘍腫大によって視神経系が圧迫され、急激な視力障害や視野障害を生じます。
激しい頭痛を伴うため、くも膜下出血と迷いやすい点がひっかけです。
適切な治療
下垂体卒中で視機能障害がある場合は、経蝶形骨洞手術による減圧が適切です。
鼻腔から蝶形骨洞を経由して下垂体に到達するため、下垂体病変に対する標準的なアプローチです。
各選択肢の検討
a 血管内治療
脳動脈瘤や血管病変に対する治療であり、本症例には合いません。b 減圧開頭術
広範脳梗塞や重度脳浮腫などで行う治療で、下垂体卒中の第一選択ではありません。c 経蝶形骨洞手術
正しいです。下垂体卒中に対する外科的減圧として適切です。d 開頭クリッピング術
脳動脈瘤に対する治療です。e 腰椎(髄液持続)ドレナージ
適応ではありません。むしろ頭蓋内圧亢進が疑われる状況で髄液圧を下げると、脳ヘルニアを誘発する危険があります。
受験上の判断軸
- 画像で下垂体領域の病変と気づく
- 突然の激しい頭痛で下垂体卒中を考える
- 急な視力低下から圧迫症状を結びつける
- 治療は経蝶形骨洞手術と判断する
覚えるポイント
下垂体病変で
激しい頭痛+急な視機能障害
ときたら、まず下垂体卒中を考えます。
